教員採用論作文作成支援ルームとエイジング

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教員採用試験での論作文作成のヒントをつづります。
昔の教え子が『教育論文をどのように書けばよい?』の
質問に応える気持ちで、ブログを運営していきます。
経験:小・中・高校教員、公立小学校長、論作文添削

2004年問題

   現在学校教育においては,子ども

たちの学力を向上させるとともに個

性と創造力を伸ばすことが求められ

ています。

このことについてあなたの考えを述

べなさい。

 

 2004年当時、教育界に学力低下

に対する心配の声が寄せられていま

した。

    次のような話題がありました。

①   1999年:「分数ができない大

    学生」等、話題になりました。

    子供の基礎学力の低下を「ゆとり

     教育」の弊害と結び付けて議論さ

     れました。

②学力低下論争の矢面に立たされた

     文部科学省は、2002年「確かな

      学力向上のための2002アピール

   『学びのすすめ』」を発表しまし

     た。

※内容と手立て (抜粋)

・「生きる力」には「確かな学力」

     が含まれている

・少人数授業・習熟度別授業の実施

・発展的な学習、補充的な学習の

                                                          実施

・総合的な学習の新設    

            等々

③  TIMSS(国際教育到達度評価学

   会が行う「国際数学・理科教育動

   向調査」)

2003年調査で、日本の子供は、算数

・数学、理科において国際的に上位

 にあるものの低下傾向にあることや

学習意欲や学習習慣に課題があるこ

とが指摘されました。

 

 前回、日本の教育課題は、古くて

新しいと述べました。2002年の

「学びのすすめ」で提唱された「発

展的な学習、補助的な学習」は、

2020年「令和の日本型学校教育」の

構築を目指して ~全ての子供たちの

可能性を引き出す,個別最適な学び

と,協働的な学びの実現(中間まと

め)」 (令和2年10月7日 中央教

育審議会初等中等教育分科会)で次

のように取り上げられています。

                                     (抜粋、要約)
 

※ 補充的・発展的な学習指導

○ 基礎的・基本的な知識及び技能を

     確実に身に付けることができるよ

     う,補充的な学習や発展的な学習

     を取り入れ、個に応じた指導の充

     実を図る。

〇補充的な学習の指導では,指導方

     法や指導体制の工夫改善を進め,

     学習内容の確実な定着を図ること

    が必要である。発展的な学習を取

     り入れた指導では、学習内容の理

    解を一層深め,広げるという観点

    から適切に取り入れる。

○特に必要がある場合は,異なる学

     年の内容を含めて学習指導要領に

     示していない内容を加えて指導す

    ることができる。

○ 補充的な学習では,例えば知識及

     び技能の習得に当たって,ICT を

     活用したドリル学習等を組み合わ

     せていくことも考えられる。

○ 発展的な学習としては,個別学習

     のみで学習を終えることにならな

    いように留意し,協働的な学びが

     取り入れられるよう教育活動を工

    夫する必要がある。

 

     補充的・発展的な学習指導は、個

に応じた指導の充実を図るためです。

一般的に、補充指導は、学習の遅れ

がちな子供を対象にし、発展的な学

習はより進んだ子供が対象になりま

す。

 

したがって、上記「中間まとめ」で

は、前者に対して学習内容の確実な

定着を目指しており、後者に対して

は、学習の深化発展を目的にしてい

ます。具体的な方策としては、補充

学習では、ICT を活用したドリル学

習等を組み合わせていくことや発展

的学習では、先の学年・学校の内容

を学習に挑戦させることも可能である

ことが述べられています。

 

 従来、当該学年の学習指導は、学習

指導要領の枠内が原則でした。これに

風穴があいた上記の内容は、子供の学

習意欲と自己学習能力の進展を図ろう

とする学習指導要領の改訂の趣旨から

当然のことと捉えることができます。

総合的な学習の時間で子供が自ら課題

を発見し、自ら解決することを推奨し

ており、他方、学年の枠に固執するで

はダブルバインドになってしまうから

です。

2004年度東京都教員採用選考問題

現在学校教育においては,子どもた

ちの学力を向上させるとともに個性

と創造力を伸ばすことが求められて

います。

 このことについてあなたの考えを

述べなさい。

 

いつの時代においても「学力を向上

させるとともに個性と創造力を伸ば

す」ことは、学校に課せられた至上

命題であると考えます。

 ここで、学力を「教科学習を中心

とする学校教育を通して獲得された

能力・資質であり、教育目標に対応

した概念である(「学習用語事典」辰

   野千寿編、教育出版、2010)

と捉えることにします。

 

 教育目標は、その時代の社会の要

請と関連しています。したがって、

「教育目標に対応した概念」である

学力観は、時代の変化に伴って重点

とするところも変化しています。

また、教育目標には時代の中に生き

ている子供の実態が反映されていま

す。教育改革に伴って重点とする学

力観も変化することになります。

前掲書によると、学力観として次の

4点を挙げています。

① 基礎基本を重視する見方

・学習指導要領に示されている

  内容

② 個性重視の見方

・一人一人の良さを学力として

  認める立場

③ 学び方を重視する見方

④ 知識基盤社会に対応した能力

 を重視する見方

・知識技能を活用する能力、

  異質な集団での交流、自律

  的に活動できる能力を重視

  する立場

 

そこで、本ブログでは、上記選考問

題のキーワードである「学力」、

「個性」、「創造力」を話題にしなが

ら、語義や資質・能力の意味するこ

と等を時代的な要請、子供の実態や

教育課題を踏まえながら検討してい

くことにします。

 

   また、これらの資質能力が試験問

題に出題されているのは、社会的に

必然的な原因が背景にありました。

では、取り上げた問題は過去の問題

なのでしょうか。

 取り上げた問題は、22年前の問題

ですが、教育課題は今も続いている

ことがあります。

なかには、時代の要請と子供の実態

から、より重点化して取り組まなけ

ればならない問題になっています。

また、経年に伴いより複雑化し、

先鋭化している喫緊の課題になって

いることも珍しくありません。

古い教育話題が、子供たちが抱えて

いる今日的教育課題でもあるといえ

ます。

 

※学力を向上させる

 ここで、学力の3要素と言われる

学校教育法第30条2項を取り上げま

す。

「生涯にわたり学習する基盤が培

われる」を前提にしています。

① 基礎的な知識及び技能を習得させ

 る

② これらを活用して課題を解決する

 ために必要な思考力、判断力、表

 現力等をはぐくむ

③ 主体的に学習に取り組む態度を養

 う

① は、「読み、書き、計算」の3つ

の力を重視した学力、いわゆる

3R’Sの定着を目指しています。

狭い意味で捉えた学力で、客観的な

テストなどによって計測可能なとこ

ろから学力低下問題などで話題に取

り上げられています。

 学校教育法第30条2項では、学力

を知識・技能、思考力・判断力・表

現力、態度の3つの要素から捉えて

います。

 

また、平成8年【1996年】中教審答申

では、次の「生きる力」の考えを

提言しました。

自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら

考え、よりよく問題を解決する資質や

能力、自らを律しつつ、他人とともに

協調し、他人を思いやる心や感動する

心など、豊かな人間性、たくましく生

きるための健康や体力

 

 上記した平成18年(2006)改正さ

れた学校教育法30条2項も「生きる力」

と同一の視点に立っていることに着目

する必要があります。そして、「生きる

力」の考え方は、「知識基盤社会と言わ

れる社会の構造変化の中で課題解決や

思考力・判断力が求められている」こ

とから、現在も通用すると考えること

ができます。

 

 2003年東京都の過去問の背景には、

上記の内容があると考えられます。

どう対応すべきか、共に考えていき

ましょう

    前回のブログでは、チーム全員が

「一つの経験」を共有することによ

って、チームメンバーの共通の思考

や行動の土台になると述べました。

さらに、その経験を全員で省察し、

改善を図ることによって、各自の学

習の深化・発展に結びつき学習の連

続性を生み出すことにも触れまし

た。

これらの学習を進めるためにも学級

独自の体験的・問題解決的学習を作

り上げていって欲しいと思います。

 

本日は、コルブ(1983)による

「経験による学習」を参考にした学

習を紹介します。

 「コルブの経験による学習」は、

経験と学習プロセスを連動させて捉

えようと意図したものです。

    体験的・問題解決的学習を今まで

と異なる視点から捉えなおすことが

できるのではないかと考え、紹介す

ることにしました。

 

 コルブは、経験による学習プロセ

スを次のようなサイクルで表わし、

具体的な経験から形成される知識

・技能を変化させていく学習プロセ

スについて論じています。

 

①具体的な経験→②内容の振り返り

   と内省(体験の内省と観察)

→③得られた教訓を抽象的な仮説や

  概念に落とし込み(一般化)

→④新たな状況に適用

        (新たな試行)     

→⑤知識・技能を変化

   (高次の具体的な経験)

 

⑴具体的経験

 「具体的経験」は、子どもの体験

的・実践的活動そのものである。

ここでは、学校での実習、観察等の

活動のほか、当該学習内容に関し

て、子どもが日常生活で出合う様々

な文化的、社会的な経験を含めるこ

とにする。

 ただし、ここで取り上げる経験

は、授業における経験であり、教師

の意図的・計画的な営みを前提にし

ている。また、ここでは、経験と体

験を類義語として使用している。

 初期の学習プロセスである「具体

的経験」の段階で、子どもは、経験

を通して「『やってみて、何が起こ

ったか』、『どんなことになったか』

等、自分の気持ちや感じた様子」

また、「予測できなかったことに出

合ったとき、『自分の知っていたこ

とや予想との違いはどこか』『何が

難しいか』等の感想」を自分の言

葉で表出する学習活動に取り組むこ

とになる。

 

⑵「体験の内省と観察」

「体験の内省と観察」は,子ども自

身が自らの体験・実践を省察する活

動である。

 ここでは、子どもの体験的・実践

的活動についての反省や振り返り、

実践中の気づきなどがこれに含まれ

る。また、体験的・実践的活動が自

分にとって、どのような意味がある

か等、疑問、質問等を書く学習活動

も必要になる。

 特に、問題解決にかかわる体験的

・実践的活動では、活動の前提とな

るキーワードと活動に関する省察が

重要になる。

 子どもの自分自身に関することや

自分と事象に関することについて

は、直接経験を通して自己の振り返

りを促し、自己の取り組みの変化、

考え方の変化へと気付かせる指導が

大切になる。

また、自分と他人に関することにつ

いて、自分と他者との考え方や方法

等の共有を促すとともに、他者との

行動や考え方との異同を知る学習が

中心になる。ここでの気づきには、

他者からの問いかけや助言が有効で

ある。

 指導に当たっては、次の諸点に留

意する。

①経験を多様な視点から捉える観察

 と振り返り

・図的思考、例的思考、・イメージ的

 思考、類推等の思考の活用、

② 取り組みの成果の確認と問題点を

 考えさせる。                        

・失敗の原因、成功の理由を探る。

・実習や観察の仕方の適否の検討

・体験と目標達成の関係についての

 振り返り  

③異なった視点から問いかける他者

 の存在の重視

・友達との比較(コミュニケーショ

 ン力の活用)

 

⑶「一般化(概念化)」

一般化とは、授業の中で生じた出来

事や行為を省察により収束させるこ

とをいう。ここで大切なことは、こ

の学びから得た教訓や次に自分はど

のようなことに挑戦したいかについ

て,自分なりの言葉で表わすことが

できるようにする。

指導に当たっては、次の諸点を重視

する。

① 「体験の内省と観察」で出した問

 題点等をどのように解決すればよ

 いか自分なりに整理させる。 

・子どもが「自身の言葉で」表現す

 るようにする。

・「言語活動」を連動させる。

②   自分ならこうするという「教訓」

 や「仮説」を見つけさせる

・子どもの思考設計、法則・原理の

 適用、仮説的思考、協同での練り

 上げの重視。

 

⑷ 「試行的な活動」

「試行的な活動」は「教訓や仮説」

に基づいての実践である。これは、

当初の「具体的な経験」について

の改善に当たる。指導に当たって

は、次の諸点が重要である。

①  新しい考えや方法に基づいて行動

 させる。

・計画実施の切り口を決めさせ、取

 り組ませる。                    

②計画に沿ってまず行動させる。試

 行錯誤を重視し、柔軟に対応させ

 る。

 

※参考・引用文献                               

・「経験による学習」D.KOlb(1984) 

 ExperientialLearning:Experience

  as The Source of Learning

  And Development Prentice-Hall

・「経験からの学習」松尾睦2007

     同文館出版   

 

  

 当初の課題は「集団のチームワー

クの中で、競い合ったり協力し合っ

たりしながら、多くのことを学ぶ機

会を設ける」ためにどのような取り

組みを組織するかでした。

    この背景には、集団の中でのコミ

ュニケーションの不足が、さまざま

な生活上の問題を引き起こしている

こと、そして、指導者の側にもコミ

ュニケーションの苦手な子供への対

応が難しいとの実態がありました。

 

 そこで、本ブログでは、次のこと

に着目しました。

①   課題に応えるために、集団やチ

   ームが協働体になっている必要が

   ある。

②   協働体を形成するには、「共通

   の目的、コミュニケーション、

   協働意思」が重要である。

③   この中で、コミュニケーション

     能力の育成が喫緊の課題である。

④   そこで、協働学習を重視した学

    習を進めることが大切である。

⑤   Ⅱ63の「子どもたちのコミュニ

    ケーション能力を育むために」(コミュ

    ニケーション教育推進会議審議経過報

    告、2011.8.29)の提言を生

   かした教育に取り組む。

 

 この教育を推進するため、協働で

取り組む体験的・問題解決的学習を

取り入れます。そこで、各自が発見

した課題をチームの課題に練り上げ

たり、各自の得意とする分野を出し

合い、力を合わせて問題を解決した

りするなかで、学び方やものの見方

を身に付けさせます。また、協働で

学び、問題を解決することの楽しさ

を味わわせます。

 

     では、上記の学習を推進するため

どのような学習を進めたらよいので

しょうか。

①   取り組む課題

   「課題」には、教師からの出され

た問題、または子供が疑問や驚きな

どなどの現象に直面し、疑問をも

ち、解決したいと意識化した「自ら

発見した問題」があります。

    子供が、課題意識をもつために、

「解く必然性のある問題」であるこ

とが前提になります。

そこで、教師は、「生活と結びつけ

る」「他教科と結びつける」「知的

好奇心と結びつける」「他者とのか

かわりをもたせる」等のアドバイ

スをしながら、「問題」設定に向か

わせます。

 

②   問題解決的な学習過程

  「問題解決的学習」では、個別学

習であれ、協働学習であれ、授業形

態にかかわらず課題把握が重要で

す。

    何を知りたいか、何を問題にして

いるか等、自分なりに又はチームと

して認識されていることが大切で

す。学校によっては、問題解決過程

を「つかむ・見通す・探る・練り上

げる・まとめる・振り返る」として

指導し、子供が、問題解決過程のど

こに取り組んでいるか、そこで何を

しなければならないか、チーム全員

が共通認識のもと学習に取り組める

ように工夫しています。

 

③   協働学習

 友達との協働学習では、上記、授

業の流れの各過程で「足場かけ」等

により、友達と共に学ぶことが考え

られます。特に、【練り上げる段階】

は、一人一人が観察したり試行した

りして表現したものを相互に交流

し、考えや解法の手続きを明確にし

たり、広げたり、深めたりする活動

が考えられます。さらに、相互交流

の結果が個に還元され、個の学習が

確かなものになり、問題解決への深

化・発展が図られます。

 

④   課題発見

 昨今、探究学習、総合的な学習の

時間等で、課題発見が重視されてい

ます。

 大人でも、何が問題か発見するこ

とは難しいことです。「何が問題か、

分からないことが問題」になること

も稀ではありません。

  前のブログでも触れましたが、

転移力」に着目する必要がありま

す。転移力とは、問題解決でつけた

知識・方法・考え方を次の新しい問

題に一つの経験として生きて働かせ

る力です。

    協働学習では、チーム全員が「

つの経験」を共有していることが大

切です。共有した経験がこのチーム

の次の課題に取り組むときの土台に

なり、前提になるからです。

子供たちは、この経験をもとに次の

課題に全員で立ち向かうことができ

ます。

 具体的に、次のように問題発見に

結びつける工夫をしています。

a    得られた知識、経験を他の教科、

  分野、領域に応用し、その知識

・経験を拡充,深化させた問題を

  作成させる。

b 問題解決で得た知識、経験を生

 活場面に適用し、生活実践の中で

 新しい問題を発見させる。

2003年度過去問

    学校においては、子どもたちが集

団のチームワークの中で、競い合っ

たり協力し合ったりしながら、多く

のことを学ぶ機会を設けることが大

切です。

    このことについてあなたの考えを

述べなさい。

 

子どもたちが集団のチームワーク

の中で、競い合ったり協力し合った

りしながら」が、実現するために

は、学級全体にコミュニケーション

が行き渡っている必要があります。

    学級や集団の一人一人は性格も、

考え方も得意・不得意も異なりま

す。思考傾向も感情も異なる人の集

まりです。その構成員が一致協力し

て集団を盛り立て、目的達成や問題

解決に向かうためには、Ⅱ61で述

べた協働組織に関するバーナードの

提唱する「①共通の目的、②コミュ

ニケーション、③協働意思」が必要

です。

 

   ここでいう「集団のチームワーク」

は、「多くのことを学ぶ機会」になる

のですから単なる仲良しグループで

はないはずです。チームには、果た

すべき目的があります。集団として

解決しなければならない課題があり

ます。それらをチームとして協働で

解決したり、組織的に解決したりで

きる集団をいかにしてつくり、チー

ムの活動の場や機会をいかに設定す

るかが設問のねらいであると考えま

す。

この時、人と人との関わり合いの中

核になる「②コミュニケーション」

が行き渡っている必要があります。

そして、コミュニケーション能力を

子供に育て、競い合ったり協力し合

ったりできる態勢づくりに努めてい

くことが重要になります。

 

そのためには、前掲の「子どもたち

のコミュニケーション能力を育むた

めに」(コミュニケーション教育推

進会議審議経過報告、2011.8.29

が参考になります。ここでは、次の

ように提言しています。
 

コミュニケーション能力を学校教育

において育むためには、 ① 自分と

は異なる他者を認識し、理解する

こと ② 他者認識を通して自己の存在

を見つめ、思考すること ③ 集団を形

成し、他者との協調、協働が図られ

る活動を行うこと ④ 対話やディスカ

ッション、身体表現等を活動に取り

入れつつ正解のない課題に取り組む

ことなどの要素で構成された機会や

活動の場を学校教育の中に意図的、

計画的に設定する必要があると考え

 

 追記

 協働学習で、「競い合う」という

文言に接することはあまりありませ

ん。

 大学院で学んでいた時、「ライバ

ルを持ちなさい」とアドバイスされ

たことを思い出します。

 自分の研究を深め、高めるために

は、自分の研究と異なる主張や見解

を乗り越える必要があるということ

でしょう。ライバルというと勝ち負

けの世界をイメージしがちですが、

ここでは、対比の意味合いが強く、

仮想ライバルの研究内容の矛盾や見

解の対立を自己の研究の発展の原動

力にしようとする意図が隠されてい

ます。

 

    この考えを取り入れると、協働学

習においても、「A君はこのように主

張しているが、自分の意見は異なる。

理由は~だ」等の話し合いで、「

い合う」場面を意識的に設定し、

相互に自分の学びを深化させていく

ことも考えられます。

 私たちの生活においてインターネ

ットは、瞬時に必要な情報が集ま

る、又は伝わる等、生活に欠くこと

のできないツールになっております。

 また、SNSは、単なる情報発信だ

けでなく、人と人とをつなぎ、ネッ

トワークを形成する働きをしていま

す。

 

 子供たちは、学校で端末の情報機

器を一人一台利用できる状態になっ

ており、インターネットは子供たち

の生活にも深く入り込んでいます。

 令和5年「青少年インターネット

利用環境実態調査」報告書(家庭

庁、令和6年3月)に、小・中・高

生の平日、1日あたりの実態調査

の結果が載っていました。

※インターネットの利用平均時間

                                (3279人)、(単位%)

小学生226.3分、中学生282.1分、

                                         高校生374.2分

※インターネットの利用内容

                             (3279人)、(単位%)

動画を見る93.6、ゲーム85.5、

検索83.6、音楽を聴く75.8、

勉強する72.9、投稿・メッセージ

交換(含メール、チャット)71.7

※スマートフォンの利用内容

                                (2436人)、(単位%)

動画を見る88.3、投稿・メッセー

ジ交換(含メール、チャット)82.9、

検索81.7、音楽を聴く80.0、

ゲーム72.1

 

 令和4年版「生徒指導提要」

(文部科学省)は、インターネット

に関する問題として、①ネット匿名

性、②ネット拡散性、③ネットいじ

め、④ネット長時間利用の4つを取

り上げています。

 

 上記実態調査では、例えば、利用

時間は、高校生5時間以上、中学生4

時間以上、小学生4時間近くになって

おり、④の長時間利用を裏付ける数

値になっています。

 また、利用内容をみると、投稿

・メッセージ交換(含メール、チャ

ット)に利用者の80%近くの子供

が関わっており、「提要」の指摘する

問題①~③を生み出すキッカケにも

なっています。

 

 改めて、コミュニケーションの視

点から子供の実態を捉え直してみる

と次の諸点が浮かび上がってきます。

⑴「Ⅱ61子どもたちのコミュニケ

 ーション能力」で指摘した「対話

 になっていない場合が多い」は、

 実態調査から改善の兆しがうかが

 えません。対話の良さは、情報の

 やり取りが直接的であるだけでな

 く、情報発信者の思いや感情が表

 情やしぐさから同時に読み取るこ

 とができるところにあります。

  相手とのやり取りに関して、 

 インターネットでは、投稿・メッ

 セージ交換(含メール、チャッ

 ト)は、70~80%と活発に

 行われています。

 しかし、インターネットによる

 メッセージ交換では、相手から

 言語や図、写真等、画面上の情

 報を得ることができますが、

 非言語的な情報を読み取りは、

 対面に比べ難しくなってきます。

 行間から相手の感情を読み取る

 など難易度が高くなっており、

 ある種のスキルや訓練が必要に

 なってくるからです。

 

 インターネットとコミュニケー

 ションの関係でいえば、例えば、

 Ⅱ61で述べたコミュニケーショ

 ンスキル「②相手の主張を傾聴す

 る」では、相手の表情やしぐさ

 等、非言語的事項への読み取りの

 経験が持てないことになります。

  コミュニケーション能力の育成

 に課題を投げかけています。

 

⑵ 令和4年版「生徒指導提要」(文

 部科学省)でのインターネット

 に 関する問題として①ネット

 匿名性、②ネット拡散性、③ネ

 ットいじめが指摘されているよう

 に、「異質な人々によるグループ

 等で課題を解決することが苦手

 は、相手の感情の読み取りが少な

 くなっている分より深刻になって

 いることが予想されます。

 子供が組織になじみ、自分の学級

・学校等に親愛の感情を抱き、子供

の承認の欲求や所属の欲求が満たさ

れるためには、組織内にコミュニケ

ーションがいきわたっている必要が

あります。

 

 ところが、昨今の子供にコミュニ

ケーション能力が不足しているので

はないかという指摘があります。

 朝日新聞(2026.2.3)に、

小中高校の教員や教育委員会の職員

約610人を対象にアンケートを実施、

その回答の結果が載っていました。

 

内容は、「近年増えてきたと感じる

傾向の子」と「今の学校では対応が

難しいと思う子」についてのアンケ

ートでした。

「コミュニケーションが苦手」の設

問に対して、「増えてきた」の1位は

(67.%)で、「対応が難しい」は

3位(38.3%)になっていました。

 いずれも、コミュニケーションに

かかわる問題を学校が抱えているこ

とが分かりました。

 

 コミュニケーション能力に関する

問題は、今始まったものではありま

せん。

「子どもたちのコミュニケーション

 能力を育むために」(コミュニケーショ

ン教育推進会議審議経過報告、

011.8.29)では、次のように

取り上げられています。
※子どもたちの現状や課題 

子どもたちは気の合う限られた集団

の中でのみコミュニケーションをと

る傾向が見られる。興味や関心、世

代の違いを超えてコミュニケーショ

ンをとることを苦手と感じ、相互に

理解する能力が低下しているとの指

摘もある。

また、コミュニケーションをとって

いるつもりが、実際は相手の話を聞

かずに自分の思いを一方的に伝えて

いるに過ぎない場合、または同意や

反対の意思を伝えるだけで対話にな

っていない場合が多いなどの指摘も

ある。

加えて、子どもたちが自ら仲間やコ

ミュニティを形成する機会が不足し

ており、等質的なグループや人間関

係の中でしか行動できず、異質な人

々によるグループ等で課題を解決す

ることが苦手であったり、回避する

傾向にあったりするという指摘もあ

る。

 

 ここで、改めてコミュニケーショ

ン能力について考えてみます。

 まず、コミュニケーション能力を

「情報手段(書く、話す、身体表

現等)によって互いに意思、感情、

思考を伝達し合い、理解し合うこと

を可能にする能力」と捉えることに

します。

 この能力を支える要件として、

次の5つのコミュニケーションスキ

ルが重要になります。

①    自分の考えを持っている、

②相手の主張を傾聴する、③自分の

主張を分かりやすく、明確に表現で

きる、④自分の感情をコントロール

し、共感、相互理解に結びつけるこ

とができる、⑤開かれた個の観点に

立って、折り合いをつけ、自己表現

ができる。

※「開かれた個」

「コミュニケーション教育推進会議審議

過報告」では、次のように定義しています。

 自己を確立しつつ、他者を受容し、

様な価値観を持つ人々と共に思考し、協

力・協働しながら課題を解決し、新たな価

値を生み出しながら社会に貢献することが

できる個人

 

 上記「子どもたちの現状や課題」

で見られた傾向である、異質な集団

内においての対人関係のわずらわし

さを避けることや相手との話し合い

によって合意を得ること等を避けて

いる現象は、コミュニケーションス

キル育成の場の喪失を意味します。

 

 あれから15年後、朝日新聞による

「近年増えてきたと感じる傾向の子」

と「今の学校では対応が難しいと思

う子」についてのアンケートの結果、

「コミュニケーションが苦手な子」

が上位にランクされていました。

 

 平成時代に心配された、気の合う

限られた集団でのコミュニケーショ

ン、異質な人々によるグループでの

課題解決学習を苦手とする子供たち

の姿が、15年後の令和の時代に、指

導を困難にする子供の増加へと姿を

変えて教室に現れてきたと言えるの

ではないでしょうか。

 さらに、現在はSNS等による伝達

手段が子供に浸透し、人間関係にお

けるコミュニケーションをより複雑

に、しかも偏ったものにしているよ

うです。

 

 問題はより深刻化していると捉え

ることができるのではないでしょう

か。コミュニケーション能力をどう

育成するか、喫緊の課題です。

   私たちもよく経験することです

が、面識のない人が集まってチーム

をつくり活動することや成果を出す

ことは容易ではありません。

      同様に、子供にとっても仲良し

といえない個の集まりが目的を達成

する集団になる、チームになること

は一大イベントです。

 

    組替えのあった学級の子供や転入

生は、想像以上の疲れを覚えるのは

どうしてでしょうか。

    子供が新しい集団の一員になると

いうことは、自分と隣のA君との関

係を構築しなければなりません。

また、自分は、クラスの一員として

他の人から認めてもらわなければな

りません。どのようにしたら認知し

てもらえるのでしょうか、試行錯誤

が続くはずです。

 

 幸いなことに、学級にはクラスを

統率する教師がいます。教師は、自

分がどのような学級をつくりたいか、

学級のめあてを出してくれます。

 それに基づいて、子供たちは、自

分たちの学級の目標を決めるなど、

皆で守り、育てる目標づくりに取

り組むことができます。

しかし、この段階では、自分と集

団の関係、周りの個々人との関係

は安定していません。

時には、 集団の一員になれるよう、

教師の個別指導や相談が必要になり

ます。

    ここで、教師が学級を経営する時、

心がけたいことは、次の3点です。

①   共通の目的、②コミュニケーシ

               ョン、③協働意思

    これは、C.L.Barnardが提唱した

もので、協働組織の形成に欠かす

ことができません。子供の組織作り

にも活用できます。具体的に、次の

諸点が考えられます。

①どんな学級をつくりたいか、それ

    が、学級の一人一人にとってどん

    なに大事なことか、共通の認識を

     持ち、協力したいと思える目標が

    あること。

② 組織の目的や自分の役割について、

     相互の考えや気持ち(感情)を伝

   え合い、理解し合い、連携できる

   状態にあること。

③ 協同体の一員としての自覚をもっ

    て、積極的に自分の役割を果たし

    たり、組織のために貢献したりし

    ようとする意欲があること。

 

   これらのことを、子供の発達段階

に応じて、納得させ・理解させ、

行動できるようにすることが大切で

す。例え、低学年でも先生の願いに

共感した時、子供は自分のもてる力

を発揮し、友達に働きかけ、学級の

一員として活動してくれます。

    

  私も担任の時代、子供に、保護者

に助けられました。今でも、「現在

の私が在るのはあなたのお陰です」

と声を大にして感謝したいと思って

います。

 

   学級の中に、バーナードのいう協

働組織が形成されたとき、設問にあ

る「集団のチームワークの中で、

競い合ったり協力し合ったり」で

きるための第1歩を踏み出したと

言えるのではないでしょうか。

2003年度東京都教員採用選考問題

学校においては、子どもたちが集団

のチームワークの中で、競い合った

り協力し合ったりしながら、多くの

ことを学ぶ機会を設けることが大切

です。

    このことについてあなたの考えを

述べなさい。

 

 本日から、上記の東京都教員採用

選考の過去問を話題に取り上げ、検

討していきたいと考えます。

   まず、2003年度に東京都がこ

の問題を出題した背景を探るため、

教育界の動向を振り返ってみます。

〇「『学びのすすめ』確かな学力

    向上のための2002年アピール」

            (2002年、文部科学省)

    この「学びのすすめ」が出された

背景の一つに、授業時数や教育内容

の削減による学力低下を懸念する世

論がありました。

そこで「ゆとり教育」から「確かな

学力」の向上へと転換を図るため5

つの方策を示しました。

問題文のキーワードに関連する方策

は次の通りです。

①   方策「きめ細かな指導」

    観察・実験、調査・研究、発表

・討論など体験的・問題解決的な学

習を取り入れ、自ら課題を見つけ、

自ら学び、自ら考え、判断し、より

よく問題を解決する力を身に付けさ

せる。

②  方策「学ぶことの楽しさを体験

      させ、学習意欲を高める」

    総合的な学習の時間と教科等との

関連付けを工夫しながら、学び方や

ものの考え方を身に付けさせ、問題

解決や探究活動に主体的・創造的に

取り組む態度を育成する。

○答申「初等中等教育における当面

    の 教育課程及び指導の充実・改善

    方策について」(2003年、中教審)

   子どもたちに,基礎的・基本的な

内容を確実に身に付けさせ,自ら学

び,自ら考え,主体的に判断し,行

動し,よりよく問題を解決する資質

や能力,自らを律しつつ, 他人とと

もに協調し,他人を思いやる心や感

動する心などの豊かな人間性などの

[生きる力]をはぐくむ。

 

 上記のことをまとめると、「確か

な学力」を身に付けさせるために、

体験的・問題解決的学習を取り入れ

る。そこで、自ら課題を見つけ、自

ら学び、自ら考え、判断し、よりよ

く問題を解決する力や学び方やもの

の見方を身に付けさせる。また、自

らを律しつつ, 他人とともに協調し

て取り組ませるなど、他人と協調す

ることや思いやり等の心情を育て、

「生きる力」を育てようとするもの

です。

また、体験的・問題解決的な学習や

探究活動での学習では、自分一人で

課題解決に取り組む個別学習形態と、

友達と協同して課題解決に取り組む

協働学習形態があります。

     2003年度の採用選考問題は、

後者の学習形態に視点を当てていま

す。

    集団のチームとして、問題解決的

な学習や探究活動に取り組み、当初

の目的を達成するためには、個々人

がどのように集団のチームに参加す

るか、また、集団はどのようにして

個々人を受け入れ、力を発揮させる

かの課題がでてきます。

    チームの構成員は、自らが創り上

げた集団の目的、参加の仕方等の約

束事を守りながら、集団の課題解決

力等、目的遂行のため取り組むこと

が求められています。

 校長職に在った時、毎月のように

学校だよりを書いていました。

    学校から保護者の皆さんにお伝え

したいこと、協力していただきたい

こと、教育の情報など、内容は多岐

にわたっております。

 平易で、分かりやすく、素直に在

りのままを心がけました。

 20数年経った現在、元の原稿を読

み返してみると、当時の子供や保護

者との交わりがリアルに蘇ってきま

す。 子供の成長の一端に触れるこ

ともできました。保護者の子育ての

悩みや喜びにも出合いました。

 豊かな人と人との触れ合いや関わ

り合いがあること、成長の喜びを共

有できること、教職の魅力であり、

人生の財産であると考えています。

 教職を目指す皆さんに、私の財産

の一端をお知らせしたいと思い、投

稿することにしました。

 

  カブトムシの幼虫

 毎日、20分休みになると、校長

室のドアがきまってノックされ、可

愛らしい1年生の「失礼します」と

いう声が聞こえてきます。そして、

ドアの隙間から小さな頭が3つ4つ

と現われてきます。 

 今日も、校長室にいるカブト虫の

幼虫の世話に1年生が、校長室を訪

れてきたのです。

 

カブト虫の幼虫が校長室にいる・・。

これには、次のような多くの人の思

いが込められているのです。

 

 11月のある日、校長、用務員の

Aさんが、プ-ルの横の畑を耕して

いました。そこに、教頭先生と一緒

に1年生がやってきました。

 見ると、上履きも履いていません。

きっと、教室でいやなことがあって、

飛び出してきたに違いありません。

 なだめながら、ポツリ、ポツリと

話す子供の声に耳を傾けました。

カブト虫が好きとのこと。

 さっそく、畑の土の中からカブト

虫の幼虫そっくりなのを、20数匹

を掘り出しました。そして、水槽の

なかに腐葉土をいれ、飼うことにし

ました。

 本当に、カブトの幼虫なのか。

1年生の子供たちは、昆虫図鑑で調

べたようです。形は小さいが、姿、

色は図鑑と同じ、カブトの幼虫との

ことで落ち着きました。

 それから、数日たちました。

 例によって、20分休み、校長室

のドアがノックされ、1年生の来室

です。ちょうどその時、教育委員会

の係長が来校していました。

 カブト虫の幼虫の世話をする1年

生の姿に感動した係長、教育委員会

に戻り、本物のカブト虫の幼虫探し

に奔走してくれました。

 係長の話を聞いた教育委員会指導

室の係の皆さん、ある人は、秩父に

いるお姉さんの所に問い合わせをし

て取り寄せてくれました。また、あ

る人は、去年、自分の家で生まれた

カブトの幼虫を寄付してくれました。

 カブトの幼虫が、係の人のカバン

の中で、都庁で開かれた会議に出席

し、新宿経由で学校に届くというこ

ともありました。

 トントントン、今日も校長室のド

アがノックされます。

 1年生の男の子は、今ではカブト

虫の幼虫のお父さんとして自覚を

し、使命感をもって、休まず毎朝登

校しています。

靴下のまま教室の外に飛びだすこと

もなくなり、可愛い顔で、にっこり

ほほ笑みながら、幼虫に声かけをし

ています。

 それに応えて、カブト虫の幼虫は

水槽のなかですくすくと育っている

ことでしょう。

 

 ブラック企業等、不名誉なネーミ

ングを付けられた学校ですが、現在

も上記の「カブトムシの幼虫」と同

じようなエピソードが教室で繰り広

げられていると思います。

子供との出逢い、子供の変容に接す

ることができ、他人の喜びを自分の

喜びとして味わえるのも教師です。

 多くの方が教職を目指して欲しい

と願っています。