執行草舟著「生くる」を読みました。

わたしは、迂闊にも、この著者を知らずにいましたが、読んでみたら名著でした。

「保守とは、こういうことだな」

というのがわたしの読後感想です。著書の中では「保守」という言葉はまったく使われていませんが、それでいて「保守」を説明していると思いました。優れた文明批判であり、政治批判であり、哲学書だと思います。

たとえば、歴史について書かれた一節から引用してみます。

「わたしの憂いは、近代にいたって物質至上主義の西洋科学思想が、各人の歴史観の中に巣食ってしまったことにある。歴史は科学ではない。歴史は親である。血と言ってもよい。そこからは詩が生まれ、歌が紡ぎ出される。ゆえに歴史とは、我々すべての生の根源をかたち創っている。科学は、歴史から滴り落ちた尊い一粒の涙とわたしには見える」

「間違った科学思想で歴史の欠点を探すことがはやっているが、これほど馬鹿げたことはない。欠点や間違いを知ることが、秀れているなどとうぬぼれているが、欠点を知ることなど何の価値もない。そのような人は単なる批判家であり、いやしい人間なのだと自ら認識すべきだ」

「歴史のなかに親を見なければならない。わたしには歴史の間違いや欠点は、わたしを育てるために親が流した涙として見える。だから、いかなる欠点も、わたしには懐かしく、また慕う心の材料にしかならない。そもそも親の欠点とは、人間らしさの証ではないか」

また、こうも書かれています。

「価値のある人生観は、必ず歴史的な過去の英知と自己とが結びつかない限り生まれない。それとは対照的に、御都合主義人生観はいつでも、どこでも、自分の正しさが次々と自分の中から屁理屈として湧き出てくる。その結果、現代のように無知を無知とも思わず、私利私欲を私利私欲とも思わないような大衆文化を形成することとなるのだ」

歴史を持たないアメリカ人にはおそらく理解できないでしょう。

 

本書は、歴史ある日本のすぐれた人生論です。

日本罪悪史観に凝り固まった反日極左の連中や、「保守」を口先ばかりで連発するエセ保守言論人などに読ませてやりたいと思いました。

欧米白人のインチキなイデオロギーに脳内を支配されているアホウな政治家どもに読ませたい一冊です。

わたしも驚きつつ読みました。すばらしい著作です。