ギューリック博士の日本観の続きです。

 

ニュースについて。

 

「善良なる宣教師や、世間知らずの大学教授などが知らず知らずのうちに支那から来る誇大ニュース、宣伝ニュースにとらわれてしまって、支那側の感情の渦巻きの中に溺れ込み、日本から来るニュースや日本の言い分に対しては一向に耳を傾けようとしないのである。これはニュースに対してばかりではなく、ニュース写真やニュース映画に対してもまた同様である。支那から送ってくる写真や映画の中には、特に支那への同情を引き、日本への憎悪を強化しようとの目的から故意に作成された、ずいぶんひどいものがある。我々米国人はそんな写真や映画に騙されてはならないのである」

 

支那事変拡大の責任について。

 

「支那事変において北支事変が上海にまで飛び火したとき、大部分の欧米人は日本が計画的に紛擾を上海へ拡大せしめたのであるという見方をしたらしい。そして、現在でも、この見方を続けている人が多い。しかし、事実は全然反対である。上海に関する限り、侵略者は支那であり、上海の市街を戦乱の巷と化せし占めた責任者は支那であると断定して良い。ニューヨークタイムズの上海通信員は次のごとく述べている。今度の上海事変を引き起こしたものは支那である。日本は支那から挑戦を受けてもよく忍耐していた。これは当時、事変の勃発を防ぎたいと考えて協議した各国官憲の等しく認めるところである。それにもかかわらず、支那側は日本に手出しをしたので、日本側はやむなく立ったのである。そして支那は紛争の渦中へ列強を引きずり込もうとの考えから特に外国権益と関係の深い上海を挑戦地に選んだのである」

 

支那の宣伝について。

 

「支那の宣伝機関もだんだんと組織化され、その規模も拡大され、去年から発行されたアメラシヤという雑誌の如きは、排日を目的とした日支問題専門雑誌である。この雑誌の八月号に載っていた記事の如きは、さらに別刷りにしてひろく全米に配布されたが、その数はおそらく何十万という多量に達したと思われる」

 

セオドア・ルーズベルトからタフト大統領への手紙。

 

「日米関係において米国側の利害がもっとも深い問題は日本人の移民問題である。そして、この問題について米国は日本の感情を害してはならない。満洲問題や朝鮮問題に関して米国が日本にお節介し、日本の感情を害するようなことは愚策である。米国が満洲問題や朝鮮問題に関し、支那側に味方することは、不必要な重荷を負うだけのことである。満洲における日本の行動を干渉するには日本との一戦を覚悟していなければならぬ。本当に撃つ気がないならば鉄砲を手にするな、という格言があるが、満洲問題について日本を抑えるには、本当に撃つ気で鉄砲を手にしなければならない。しかし、それは英国の如き海軍力とドイツの如き陸軍力を備えている必要がある。満洲の歴史をみれば門戸開放ということは実際問題として極めて難しい問題であることがわかる。満洲が日本にとっていかに大切であるかは、先年、英国へ行ったときキッチナー将軍から聞いた。日本は外部のいかなる圧迫にあっても満洲を手放すようなことはしないだろう。日本はロシアが復讐するだろうと考えて満洲を警戒している。日本はどんなことがあっても満洲と離れられないのである。しかし、米国にとっては満洲というものはそれほど重要なものではない。況んや日本の感情を害してまで満洲問題に嘴をさしはさむ必要は無い」

 

キリスト教の態度。

 

「支那事変勃発以来、米国政府ならびに一般の米国人は何とかして戦争をやめさせたいと思っていることは事実である。しかし、それらの人々の多くは最初から日本が悪いのだと決めてかかり、何らかの方法で日本に圧迫を加え、その圧迫によって戦争を中止させようと思っているようである。各種の団体や境界が日本譴責の決議や抗議文を発表しているのもこのためである。(中略)しかるにキリスト教国の中には極東に軍需品を供給し、あるいは軍費を提供して、この戦争の長引くことを間接に援助している国がある。それらの国は道徳的には戦争の共犯者であるといわねばならぬ。一方においてキリスト教の宣教師を送って人類愛を説きながら、他方においてかかるおそろしき罪悪を犯していることはまことに遺憾である」

 

アメリカはいかにあるべきか。

 

「私はそれらの民衆に対し、エドウィン・エム・ボーチャード氏、フレデリック・モーアス氏、ナサナエル・ムアース氏、ジェームス・ジー・マクドナルド氏の座談会を書物にした『アメリカの極東政策』と題する著書を精読されることをお薦めしたい。この四氏はともに極東の事情に精通しており、四氏の言うところは公平である。この四氏はともに声をそろえて「このたびの支那事変に対して米国は何もすることはないし、また何もしてはならない」と主張している」

 

現実を見よ。

 

「米国人としてはむやみに排日決議をしたり、日本を非難したりすることをやめて事変の真相を把握し、公平なる態度をもって事変の推移を認識することが大切である。わけも分からずにむやみに日本を非難することは日本および日本人を憤慨させるだけのことである」

 

パネー号事件の責任。

 

「戦闘の行われている最中にあんなところで米国市民の権利を行使しなければならない事情があったのかどうかについてまず疑問がある。日本の司令官が南京攻撃の二、三週間も前に、各国人に対し危険の切迫していることを警告し、退去を勧告したと私は聴いている。そして、米国人の場合においても南京退去の余裕は十分あったはずである。もしその余裕があったにもかかわらず、依然、南京にとどまっていた米国人があったとすれば、それはその人の勝手である。そして、米国政府及び海軍は、そのような勝手な人々までも保護しなければならないかどうか疑問である。(中略)わざわざ危険な戦闘地域に軍艦を留めておいた米国政府にも責任があると思う」

 

満洲国承認問題。

 

「米国はいかなる事情の元に成立した国家であっても、現実に政府を有し、政治を行い、秩序を維持し、国際城の責任を果たし得るものであるならば、それを独立国家と承認するのが、国祖ワシントン以来の方針である。爾来、この政策は確固不動の政策として引き継がれ、ただ一度、一九一三年、メキシコ革命に際し時のウイルソン大統領が反逆者という理由をもってフェルタ将軍の政府を承認しなかったことがあるが、これはむしろ例外である。そして、スチムソン国務大臣が満洲国誕生を予想して、満洲国不承認の方針を樹立したのは二度目の例外である。(中略)かつて支那公使を勤めたヤコブ・ゴールド・シャーマン氏の如きも『日本の満洲における治績は驚くべきものがあり、満洲は立派な一国家たるにふさわしい発展を遂げている。世界各国は一日も早く満洲国を承認すべきである』と述べている。またロイ・ハワード氏は『満洲国がいかなる事情の元に発生したかというようなことは今では問題ではない。現実に一国家として存在し、一国家としての機能を働かせている以上、これを独立国と承認するのは当然のことである』」

 

ロンドン・タイムズ紙の記事。

 

「支那の主権などというものはそもそも一九二二年当時にも存在しなかったし、今もまた存在していない。九ヶ国条約成立以来、支那の中央政府が真の意味において支那全土を統治したという事実が一度でもあったろうか」

 

日本に対する苦言。

 

「まず第一に言うべきは、満洲や支那へ行っている日本の下級官吏や軍人の態度を改めて欲しい。これはあるいは日本人自身は気がついていないかも知れないし、また、別段悪気があってするわけではないだろうが、満洲や支那に行っている日本の下級官吏や軍人は馬鹿馬鹿しいほど威張っている。そして、何事に対しても高圧的であり、命令的である。このため欧米人や支那人の感情を非常に悪化させている。(中略)日本の識者は、今度の事変に対し欧米の識者たちが日本の立場をどういうふうにみているかということを十分に知らないのではないか。日本が全体主義国家になりつつあると見られることは、外交上、非常に不利である。アングロサクソン人種はデモクラシーとか共和政治とかいえば無条件に共鳴する。支那人はこのアングロサクソン人種の心理状態をよく知っているため、そこへつけ込んで二言目には支那はデモクラシーの国であるとか、共和政体の国であるとか言って共鳴を求め、共通の理想を持っている国柄であるから、ぜひ支援して欲しいと訴える。そうすると、支那の実情を知らない米国人は無条件に賛成してしまって支那援助、日本排撃というような決議文でも喝采のうちに通過させてしまう。しかし、その実、支那はデモクラシーの国でもなければ共和政体の国でもなく、ある意味においては近代国家の体裁さえ備えていない国である。大部分の米国人はこの事情を知らないのである。(中略)日本の軍部はあまりに行き過ぎてはいないか。日本の経済力を考えた場合、軍部が戦争に勝ったとしても戦後の経営が十分に行い得るか否かは疑問である。そして、日本の政治は、軍部が支配しているという印象は容易に去らない。(中略)戦争に勝っても国際的信用を失墜するようなことがあれば日本にとっては最大の損失である」

 

武士道について。

 

「日本には古来、武士道というものがある。この武士道は今もなお日本人の間に生きている。この武士道が生きている限り、日本の外交も内政も、経済も文化も、必ず一貫した行き方をしていくと信ずる。そして、東亜の安定も平和も、このにほんの武士道によって必ずや良い結果を生むと信じている」
 

以上に紹介したとおり、ギューリック博士のように冷静な日本観がアメリカには存在していました。にもかかわらず、アメリカ世論は反日に傾斜しました。コミンテルンの『トロイの木馬』作戦が見事に成功したからです。