毒舌和尚の今東光は、昭和三十年代から四十年代にかけて文壇やマスコミで大活躍した人物です。中尊寺の大僧正で、国会議員で、直木賞作家という素晴らしい肩書きを持っていましたが、若い頃は不良のテンプラ学生で、母親と喧嘩ばかりして、中学では何度も退学処分を食ったという面白い経歴の持ち主です。
学生時代のわたしがこの人物を知ったのは「極道辻説法」という本を通じてでした。「バカヤロー」、「やっちまえ」、「ド突くぞこの野郎」など、そんな言葉が紙面に踊る人生相談の本でしたが、解答が過激で毒舌で面白く、それでいて何か真を突いている、そんな印象的な本でした。
政治についても過激な意見を吐いていました。「自衛隊員は安心して人を殺せ」とか、「国鉄の違法ストを許すな。機関銃でぶっ殺せ」など。若い頃のわたしは、毒舌ぶりばかりに関心が向いてしまい、その真意に気づかなかったようです。
最近になって「おお反逆の青春」という本を図書館から借りてきて読み返したのですが、今東光の真意は、憲法の改正や教育の改革などにあったようです。現役の政治家で言えば、安倍晋三や石原慎太郎などと同じ考えだったようです。
毒舌の煙幕に真意が隠されていたようです。真面目な話を面白おかしく聞かせるというのが毒舌和尚の特技でしたから、その特技がうますぎたのでしょう。
今東光は、谷崎潤一郎の弟子で、川端康成の親友でした。谷崎や川端が普及の名作を残し、今でもその作品は書店の書棚に並んでいます。しかし、残念ながら今東光の作品はほとんで見られなくなりました。
わたしとしては復刻して欲しい作家のひとりです。