あれは確か、開業して3、4年くらいの頃でしたでしょうか。


ちょうど股関節の、大腿骨がはまる辺りの部分にアテローム(人間で言う粉瘤)もしくは皮脂の良性腫瘍ができたワンちゃんが来院しました。(中型犬ほど)


アテロームや皮膚の腫瘍は良性のものでも徐々に大きくなり、体の奥や周囲に浸潤していく傾向があります。


場所が場所だったため(関節部)、関節に入り込んで歩けなくなる、なんてことがあり得たため、早めに切除するか、ちょっと大きくなる様なら手術を、と勧めました。


飼い主さんはすぐに切除をするのは抵抗が有ったようで、しばらく様子見に。


ですが、つぎに来院した時にはもう寝たきりで、関節の瘤は10センチほどに拡大。

しかもどれだけ確認していなかったのか、瘤は蛆だらけになっていました。


こうなると、蛆を除去しても瘤は切除できる段階に無い(関節の筋肉も取る必要が出てしまう)ため、安楽死の提案もするほどのものでした。


飼い主さんもそこまではしたくなかった様ですが、足は動かせず、寝たきりのまま。


その後は来院しなかったため、どうなったかは不明です。


それ以来、関節の近くに出来た瘤はなるべく早く手術をした方が良いことを伝えています。


まあ、歩けなくなるサイズになるまで様子を見ず、もっと前に切除するのが普通なのですが。


皆さんも、手術の際には瘤の周りの組織も十分にマージンを取って切除することを理解した上で様子を見過ぎないようにしましょう。