上層部の人が説明に来た。

説明という名の面談。



全員に移転のスケジュールを

説明したあと

個別に面談が始まった。



まずは正社員のKちゃんから。

私は4番目。

言いたいことは言おうと思う。

頭の中でシュミレーションしながら

順番を待った。



順番が来て

上層部の人の前に座る。



もともと、人に媚びるのが嫌い。

特に権力がある人には……汗

その性格を知っている○○さん、△△さんからは

「冷静に穏やかにじっくり話すように。

敵じゃないんだからね」

と前もって連絡をもらっているニヤリ汗

マジックで手に書いておけと。

【冷静に】



わかってるってば……えーむかっ





退職届はロッカーに入れたままにした。






移転についての説明を一通り繰り返した後

「個別に不安や不満を伺っています。どうですか?」



「…………えー。店長は決まったのでしょうか?」



「△△店長に昨日決定しました」





(๑و•̀ω•́)وヨッシャー

勝ったお祝い








(´ρ`*)コホン



「私はこの店がオープンした時に

正社員で入ったんです。当時は社員は1人だけでしたので、厳しく教育されました。

その後、子育ての為にパートになったんです。

なので正社員の責任感のまま、 

パートとして働いてきました。

パートだからといって手を抜いた事はありません。ただ、パートは何十年働いても 

役職が付く事もボーナスが上がることも

ありません。

パートの評価は時給だけです。

私のボーナス知ってますか?」



「知っています」



「その通りのボーナスです。

(ボーナスという名の寸志ね)

何年働いても上がりません。

何度か辞めようと思いました。

でも、一緒に頑張ってきた仲間がいたので

辞めずに来ました。

その人達もコロナ禍の人員整理で退職したんです。


私はこの店が好きです。

接客が好きで人が好きです。

仕事が好きです。

それがモチベーションでここまで来ました。

でも新店には思い入れもないので

モチベーションもありません。

なので辞めることに迷いはないです。

ただ、続けることには迷いがあります。」



黙って聞いている上層部の人を

じっと見つめた。



「今も契約時間は決まっていますが

ほぼフルタイムで働いています。

店長不在で人員不足なので...。

移転すれば担当エリア拡大、閉店時間の延長、新人教育は確実ですよね?

それも十分に人が補充されるか

まだわかりませんよね?

新人が何人も入れば

どれくらい大変か、想像つきます。

どんな労働時間の契約をした所で

自分だけさっさと帰るような事は

性格上出来ません。

そこでその環境に身を置く事には迷います。

新店で働く事と転職する事は

あまり変わりはないですし。

私はどこでもやっていける自信がありますし。



今、この店に新人が10人入っても

店は営業出来ません。

でもパートの私達3人がいれば

店長不在でも営業出来るんです。

私は新人3人分の仕事が出来ますが

新人が3人集まっても私の代わりは出来ません。

新人が5人いても私1人分も出来ないんです。

そういう事ですよね?」




穏やかに穏やかに...。

と心の中で繰り返す。




「例えば...ですが

それであれば社員になるのはどうでしょう?

役職にもつけますし、収入も上がります。

ただ、多くのパートの方は

時間を自由に使いたいと言う希望があって

パートという職制になっていますので

例えば...ですが」



「そうですね。社員で肩書きがあれば

今出来ない事も出来るようになるので

それはいいと思いますが...。

うーんニヤリ悩みますね。」

社員の人に問題がある場合、

パートの立場では何も出来ないんですよね。

年上でも経験が長くても

そこはわきまえたいと思ってますし...

遠回りですが店長から注意してもらう方法しか

ないんですよね〜。

だからこそ、私が信頼出来る店長でないと

ムリだなって思ってるんです。

それが役職がつくことで

自分の判断で問題を正せるのはいいですね。

ただし、社員として働くメリットは

それくらいでしょうか...

子育ても終わって自由な時間もほしいですね。」



「私としては社員で働いて欲しい所ですが、

時給の問題だけであれば

希望の金額を出したいと思います。

ともかく、あなたの気持ちはわかりました。

正直、パートの人でこういう気持ちで働いてくれる人は少ないので話せて良かったです。

提示された時給は出します。 

△△店長から時給の金額は聞いています」




ん?△△店長といろいろ話したから

どの金額で提示したのか知らないんだけど。



「来週、具体的な金額を持ってまた交渉に来ます」



ここでそれはいくらですか?とは

聞けない雰囲気キョロキョロ汗



事務所を出て

けいさんにバトンタッチした。



なんだか上層部の人は話しているうちに

どんどん機嫌が良くなり

最後はニコニコしていた。




私もひとまず言いたい事は言えてスッキリした。