江戸城の富士見櫓 写真素材 [ 3941749 ] - フォトライブラリー ...

御書物所での御風干しは60数日行われる。

御風干しで一番気を使う所で、書物を直接天日に当てるのではなく

布地越しに当てなければならない。

三方を幔幕で囲み、頭上にも晒のような白い布地を張る。

密接に張るのではなく風通しを考えて隙間も作る。

他の書物とは違い文鎮を重しにできない。

恐れ多いからである。

 

幔幕の内側は8畳の大きさである。

実際に地面に8枚の畳を敷き、中央に4つの乱れ箱を置き、

この箱に重要な書物を何点か並べて干す。

幕で囲むのは人目を遮るというよりも、仕事に当たる書物同心

の気を引き締める意味もあったようである。

乱れ箱

当然、葵の御紋は入ってたでしょう

おもむくままに・・・: 尾形光琳の作品 2

1人が幕屋の入口に立ち、もう一人が周囲を回って見張る。

この役目は盗難というよりも雲の変化を見逃さない事である。

夏の天気は急に変わることが多い。

特に朝から雲一つの無い日などは殊に危ない。

書物に雨は大敵である。

もし御手沢本を濡らしたりしたら切腹も当然ある。

 

御風干しは2か月くらい行われて風を通したり、

修繕したりするが、最後の3日間は御風干しで使用した箒、

毛氈、奉書紙他の用いた具を数を改めて返納するが、

3日間は休みなしで作業を行うのが常であった。

 

最終日には若年寄が検分に来て、書物を収納した櫃は

御納戸方により一つ一つ封印されて書物蔵に納められ

鍵を掛けられる。

 

建物の作りが校倉造ですから、風通しが良い。

これは書物の保存には良いが仕事をする人にとっては地獄!

番方は御殿で勤務でしたが、やはり寒くて堪らず赤唐辛子を

着物に造り込んで寒さ除けにしたが、書物方はそれ以上に

風通しが良いので冬などたまらなかった。

書物の保管をしてる所だから火は厳禁!

手炙りの火鉢は奉行の部屋だけである

そこで工夫をした。

 

着物・襦袢を何枚も着た。白・紺・赤を着るのだが

順番を間違えないようにした。

最初に白を着、紺を着て最後に赤を着る。

馬鹿に重い、見ると背中の所が異様に厚い。

何かが縫い込まれてる。

和紙が四角く包まれたものが、3列4段、合計12個。

格子目に縫われてる。

包みの中身は木の根のようなものだ。

和紙にくるんだ唐辛子であった。

武家奉公人 - Wikipedia

武士ではなく中間もやった。

赤唐辛子を一束手拭いにくるんで腹に当てる。

中間は脛丸出しだしで、しかも素足で草履をはいてる。

時々爪先に赤唐辛子をくるんだ手拭いを当てて

温めていた。

 

御書物所には大名からの献上書物もある

献上目録と書物をまず確認する

照合が終わると点検を行う。

新書の場合は大体面倒ではないが古書は違う。

落丁乱丁が多いのではなく皆無である

献上側できちんと前もって調べてるからである。

 

古書は書き込みがある。それを全て書きこんで行く。

昔は古書は汚れたり、破損のある本は貴重なもので

あっても、まず献上しなかった。

 

ところが有徳院(8代吉宗将軍)が不満を漏らした。

古書の筈なのに古書らしくない。

古書なら蔵書印があり、書き込みが有るはずなのに

一切ないからである。

本文よりも書き込みに価値があるのに何故無いのか?

それから以降、古書に限り化粧直しは不要。

現状のまま献上すべしとなった。

禁止に就き残本限り絶版|daily-sumus note

従って献上するほうがは楽になったが、受け取るほうは

検品が大変になってしまった。

鼠の糞や紙魚は除かれてるが、書き込みは学術的なものでは無く、

悪戯書きも多い。

これを上様に見せる訳にはいかないので除去するが、

その前に全て記録をしておかなければならないのである。

 

1丁づつ丁寧に繰り込みながら書き込みを探す。

見つけると付箋を付ける。

書き込みを記録するのは他の者がする。

古書には色々なものが挟まってる。

毛髪、楊枝、竹串、紙片、紙縒り、銀杏の葉、押し花、

糸くず、千代紙、爪等、猫の髭。

これら異物を取るが、それをいちいち記録に取っておく。

書物の何処に在ったかも詳細に記すのは当然である。

 

そして検品が終わると、御文庫と重複するものは、

一定期間保存後、市中の古本屋に払い下げる。

これら本に限っては「紅葉山文庫」の蔵書印が押される。

入札の際には、「廃棄印」も押される。