食事のマナーについてです。

ただ、これはいわゆるマナー学というものではなく、あくまでも晩餐会に

おいてのマナーという部分もあります。

やはり、一般のレストランとは、すこしく違うようです。


スープ

 手前から掬うのか、奥から掬うのかというのかはイギリス風か

フランス風かなので、どちらも問題無い。


問題は、音を立てて飲まない事と、スプーン一杯に入れない事です。

音を立てるなという事は当たり前の事ですが、晩餐会で使用される

スプーンは少し困難が生じる。

何故なら、このような席上で使用されるのは、一般の家庭の物より

ずっと深くて大きいからです。


この大きいというのは、昔、ごった煮にしたシチューのような料理が

多かった為に、その名残でスプーンが大きく深くなったという。


スープは、すすり込むのではなく、口にあてて注ぎ込むのが良い。

音は、ズーズーもフーフーもいけない。

熱いものを、何気なくフーフーとしてしまうが、マナー上よくない。

熱いようであれば、スプーンの底を使って表面をゆっくり何回か

かき回すと冷めてくる。

やはり、スプーンに一杯入れないことが肝心です。

全ての料理は、自分で大皿などから自分の皿などに入れます。

ですから、控えめに量を計った方が良い。


一番戸惑う事は、大皿からどれくらい取っていいのかという事らしい。

大皿には、人数分よりも多く盛っている。

それに対して、どうしても、大皿の中身を目分量・人数の分で勝手に

割って計算し、取るのだという。

自分の食べられる量というのではなく、何故か、多めにとる。

ですから、どうしても食べきれずに残ってしまうのが多い。

国際儀礼では、取ったものは食べる。

残すのは失礼とされる。


原則として、料理を取り分ける時や皿を片付ける時などは左からです。

これは、人は右側に居られると妙に不安になり、左の時は、

それほど不安にならないという。

しかし、飲み物だけは右側から来る。


これは晩餐会特有の事情による。

「答礼の儀」があるからです。

答礼とは、グラスを顔の前まで上げて、他の方と目礼をする事で

あるために、飲み物だけは右から来るという。


又、奇麗に盛り付けられた料理をどのようにして取り分けるかというと、

初めから肉の上に野菜が乗っている時は、中華と同じように一緒に

食べて下さいと云う事で、逆に肉の周りに野菜が有る時は

肉は肉で食べ、野菜は野菜で食べるというように思ってください。


フォークとスプーンを手にしたら、皿の左側からフォークでさし

一口大に切りながら手前側から食べる。

洋食の場合は、常に左側から切り食べるのが普通です。


ただ、一度に全部切っておいて食べるのも感心できません。

やはり、少しづつ切って食べる事です。


ただ、肉を切る場合ですが、宮中のナイフは一般のように

ギザギザは付いてません。

従って、力で切ろうとしても切れず、前後にゆっくり動かして切ると

切れます。

ただ、晩餐会で出て来る肉は堅い肉など出てきません。



パンは最初に出てきます。


パンは出されたら何時食べても構いません。

大膳で作るパンは大変美味しいです。

明治の頃にイギリスから伝えられた製法を其の儘使い、

更に味を向上させています。


ただ、これから料理が出てくるので、その前にパンで腹を満たす必要も

無いでしょう。

もし、パン皿が無い時はテーブルクロスに直接置いて下さい。

これは、欧州の貴族が、直接クロスの上に置く事を贅沢の象徴と

されていた事なので問題ありません。


若し、ソースを味わいたい時は。普通パンにソースを付けて食べてると

思いますが、それはお勧めできません。

パンをソースに付けておいてソースを吸わせてフォークでさして

食べると良いでしょう。



日本では、口の中に物を入れて喋ってはいけません。

と云われます。

ところが、イギリスの良家の子女は幼い頃より、食事中に

話しかけられたら、食べてるものを頬と歯茎の間に押し込んで

受け答えをする事を、マナーとして躾を受けます。


口の大きさや舌の長さも違いが有るので、其の儘真似は出来ないので

食べながらでもお話が出来る大きさにして口に入れるといいでしょう。


これは、以前、美智子妃が人前でも少しサンドイッチを口に入れて

話しをしたいので、サンドを小さく切って下さい、という要望が有り

より小さく切っています。

ただ、どうしてもパンを押して切るので、パンに指の跡を

付いてしまうので切るのに技術が必要だそうです。



ワイン

ワインセラーというのが本格的な貯蔵施設ですが。宮中では、それが

出来たのが新しく1997年のことでした。

それまでは、クーラーと加湿器で調節していたようで、愛好家が見たら

激怒したのではと思ったりします。


その状態で、ワインが木箱に保存されていた。

品目は、ロマネコンティ、シャトーマルゴー、ラトゥール、ムートン

オーブリオン、白ならシャトーイケム、モンラッシュなど愛好家が

みたら垂涎の的であったでしょう。



これ等は、未だ関税が高い頃でしたから、恐らく、その値段は

さぞ高価だったでしょう。


欧米の上流階級では、妻がお客様にお出しする料理を決めます。

そしてその料理に合うワインを決めるのも妻の役目です。


それは、高価だから或いは有名だからではワインの味を決めるものでは

有りません。

お客様の家柄とか、お国の事も配慮してとか、色々なものを

考えてワインをお出しします。



肉には赤、魚には白と云うのは一般的な定説であって。

それが決まりではありません。


気に入ったワインが有れば、それを飲んで下さい。



晩餐会で使われるグラスは、通常使われるワイングラスとは違う。

小さめで口の先が真っ直ぐか、やや広がっているものである。

ワインの香りを楽しむのなら通常の口のしぼってあるワイングラスが

ふさわしい。


しかし、晩餐会で求められるのは、例えば乾杯しながらでも、飲

みやすい事を目的にしています。

そうした場合に、少し上を向いて飲めるようにというのが目的です。

必ず、起立の時は左側に立ちます。

これはお約束です。



ワインの場合、日本酒などと違い、継ぎ足しをしません。

特に名だたるワインの場合は、置いておくとワインが変化する。

それを待って置いてある方も居ます。

ですから、半分くらい有る場合は、係は注ぐことを遠慮します。

ですから、そうでないのならお声を掛けて下さい。

係員が良い意味で誤解してるのです。

そして、注いでよいかどうかお声を掛けますので、そこで注文してください。

じっと置いておくと、余程のワイン通かと誤解?されるかもしれません。


辻調理師学校創始者の辻静雄氏がフランスの超一流と云われたレストラン

ピラミッドに宿泊して味の研鑽をし、食事中コートロテーを飲んでいる時

それまでワインを飲んでいても味が同じだったのが、

途中でスパイシーな胡椒のような味に変わり驚くのです。

ワインの味が変わるのです。

そのシーンを主人公はピラミッドの主人に褒められ、貴方は、

やっとヨーロッパの人の舌になったといわれ主人公もそう実感するのです。


「美味礼賛」という本ですが、面白い本でした。

主人公は、しかし、フランスの味ですと塩気が強くて、日本人の嗜好に

合わないと思い、其れから如何に塩気を抜くかという事を苦心するのです。



最近、ワイングラスをクルクルと回すのを見かける。

これは、元々は、ワインというのは何十年と地下のワインセラーに

貯蔵されているワインを飲む時に、飲むようにするために

大きな器に入れ替えて、スクロールし空気と触れさせることによって

香りと味が立ってくる。

時間が無いためにする行為であって、晩餐会のような処で出てくる

ワインは、飲み頃にして出てくるのであるから、回す必要が無い。


ワインを継いでもらう時の注意点として、グラスを持たない事である。

置いたままで注いでもらうのが正しい。

何故か、グラスを持って注いで貰う方が多い。

下に置いたままでしましょう。


しかし、習慣というの恐ろしいものですぐ手がグラスに行ってしまう。

(これは、酒に意地汚いからでしょうか)?

そうした場合の対処法としては、其の儘慌てずさり気なく、

グラスの下の脚の広がってる部分にあくまでもさりげなく

指を添えるのです。


如何にも、グラスが安定するようにしているのですよといわんばかりに

するのです。

これで取り敢えず助かるはずです。


そして、飲む時には必ずナプキンで口の油の汚れを拭いて、

それから飲む。

油が付くと香りも味も落ちてしまうからである。


若し、グラスに油が付いた場合、指でゴシゴしやらないでください。

グラスが非常に薄いものですから割れてしまう恐れがあります。


又、ワインの色を見たいと、空中にグラスを上げて見るが、

これはやってはいけない行為であり、もし見たいのであれば、

卓にナプキンを敷き、そこに載せて色を見ればよいでしょう。


グラスの並べ方としては、手前に白用、奥には赤用のが並んでる。

動かす事はあまりお勧めできないが、もし、使いづらければ

場所を変えても可能です。

しかし、フランスで本格的な料理の場合ですと、8種類くらいのグラスが

並ぶので、それは、位置を変えると給仕の人が判らなくなるので

変えてはいけません。


8種類とは、スープ用、鶉に合わせたもの、野菜と合わせたもの、

羊に合わせたものなどであり、それはそのままでないと困る。


若し魚を食べていて、骨が口の中に残ってたらどうしようかと

思うが、慌てることは有りません。

係員が目を配っていて直ぐ異変に気が付きます。

そういう時は、ナプキンで口を隠すようにして、骨を取りだし

ナプキンごと交換してください。

レストランですとやりにくい行為ですが、晩餐会などでは

許される行為です。


同じような事で、テーブルクロスには御紋が織り込まれていて、

大変綺麗で美しいです。

もし、飲み物などをこぼして汚しても、気にしないでください。

交換は出来ませんが、そのまま使用しても差し支えありません。


此の紋所を何と心得る!

そういう事にはならないのです。


ナプキンは、いかに奇麗で紋章が入っていても、汚すためにある。

従って手の汚れや口の汚れ、口紅なども付いても構いません。

ただ、最近は「落ちない口紅」が有るそうで、これはクリーニング

業者泣かせだそうで、少し気を使ってください。


宮中晩餐会にはお土産は付かないが。新年祝賀の儀や天皇誕生日

ご成婚などといった祝賀の席ではお土産がある時がある。


新年祝賀の時は折詰、中身は鯛の姿焼き、烏賊と鱧の紅白の蒲鉾

金団、松風灘が入っている。

若し、弁当でなく料理であっても係に言えば持ち帰りにしてくれる。

他には、菊焼残月、御紋入りの落雁、少し前ですと御紋入りの煙草

だったが、煙草に厳しい見方の現代では煙草の出番はない。


ともあれ、宴も終わり車で皇居を後にする。

時間的には12時位でしょう。

夢の宴は終り、魔法が解けてシンデレラも普通の女性(オバサン)に戻る。


招待客の思い出に残ったのは果たして何であったのでしょうか?

整然と美しく飾られた正餐のセット、或いは。大金御紋入りの食器や

グラスの輝きか、又は、国賓や天皇を始めとする皇族の気品ある姿で

あったのか、美味しかった宮中料理の数々か、たまたま知り合った

夫人の豪華な衣装やダイヤなどの装飾品であったのでしょうか?

それがぜべてお土産となり、忘れがたき記憶となって行くのです。