行人坂のいただきは、西に開けて眺望がよく、特に富士山を望むには絶好の場所であった。
元々地形の関係で、この辺は眺望の利く坂道が多い。
3代家光の伝説のある爺が茶屋のあった茶屋坂、新富士の在った別所坂、元富士の在った
目切坂、千代が池など、景観の良さを誇った場所は沢山有った。
今、駕籠は客を下ろしたばかりで、駕籠かきの一人は盛んに汗をかいている。もう一人は、
西瓜にかぶりつき喉の渇きを潤している。この坂を上がってくるだけでも相当の暑さであったろう。
茶屋の門前では、2人連れが「枇杷葉湯」を求めている。枇杷の葉を、肉桂や甘茶などと一緒に
煎じた暑気払いの薬湯で、宣伝の為に無料試飲を路上で行う事が多かった。
「富士茶屋」の掛け行燈のある茶店では、夫婦や子供連れなどが休んでいる。
入口で腰を下ろしている男に向って若い男が何か文句を言っているようです。
そんなところに腰を下ろされては、商売の邪魔だ。くらい言っているのでしょうか。
この茶店の塀は、竹垣作りの立派なものです。
両方の門柱にはそれぞれ掛け行燈がかかっている。
「ふじみ茶や」と「御せんじ茶」「御休みところ」である。

