日生劇場にて。
「それは私の羽根飾り」
エドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』で、今際の際に発せられるシラノの台詞。
辰野隆氏によって”こころいき”とルビの振られたこの翻訳の台詞をもって戯曲を読み終えたとき、私の思春期は終わりを告げた。
恋も愛もその違いをわからず、早鐘を打っていた稚い春の季節は過ぎ去ったのだ。
シラノの秘めた愛を知ることによって、恋したい、愛されたい、という能動的な感情だけではなく、忍ぶ想いにも感傷の深みがあることを解したのだ。
爾来、シラノは胸のうちに朽ちることのない座を占めている。
ミュージカル『シラノ』は美しい音律のなかに、丁々発止と飛ぶガスコン青年隊の勇ましい掛け合い、芝居の醍醐味ともいえる登場人物たちの見得、シラノ(演:鹿賀丈史さん)の想いに気づくロクサーヌ(演:彩吹真央さん)の手紙のシークエンス、見事に取り入れられています。
クリスチャン(演:平方元基さん)のお気楽な美男子ぶり、実は機転の利く鼻尽くしの挑発、ロクサーヌの恋心が自分にではなく手紙の書き手にあると気付いたときの、それはすなわちクリスチャンが繊細な精神を持つことの顕われであり、希望を失ったものの悲劇ですが折々の感情が伝わってきます。
ロクサーヌは、クリスチャンへの恋が盲目的で、露台の場で口下手なクリスチャンを振り回すあたり軽めの女性に描かれてるな~と思ったのですが、戦場にまで乗り込んでいく快活な姫という役なら、ただたおやかでは駄目なんでしょうね。先にも記述していますが彩吹さんの演技、シラノ週報ではめまぐるしく表情を変え、シラノが終生想い続けた従妹姫を演じられています。
シラノの鹿賀さん、いかめしく毒舌を放つ姿から一転破顔一笑するかわいらしさが素敵だな~。
どこまでも己を貫くシラノの羽根飾り”こころいき”
いつの世にも、颯爽と現れ権門に反骨を示し、仲間と想い人に友誼を尽くし、愛と毒舌を隠し持ち、天空の旅人たり。
我が待ち焦がれる詩と剣の遣い手。
シラノを私は追い続ける。
それは私の羽根飾り!