プーチン大統領が中国の習近平主席の訪露を促しているという。早くモスクワに来て欲しいといっている。たぶん、ロシア国民に団結しろと大演説をぶったものの、どこかに寂しさを感じているのであろう。世論調査では国民の8割がプーチン大統領を指示しているとされているが、本当に支持者が8割もおれば、何度もロシア国民よ!団結しようと訴える必要がないように思うのだが、演説をしていても、何か虚しさを感じているのかもしれない。

 習近平主席がモスクワを訪問し、ロシアと中国の団結が表明できたら、ロシア国民に安心感を与えるだけでなく、国際的にも二国の団結を世界に示せるわけだから、ウクライナ戦争の硬直状態を糊塗してプーチン大統領自身が安堵できると考えているのだろう。

 ウクライナ戦争をイデオロギー戦争だと、ヨーロッパの思想家も指摘する人が出てきている。戦車や装甲車の進軍を命じたのはロシア軍を統率するプーチン大統領なのだが、最近になってプーチン大統領自身が戦争を始めたのはアメリカやNATO側であってロシアではないと強弁していることである。ウクライナ戦争をイデオロギー戦争だと位置づければ、アメリカやヨーロッパ諸国はロシアを思想的に包囲してきた。これをプーチン大統領は先制攻撃を受けてきたと言っているわけである。

 しかし、資本主義的思想の浸透と軍隊を動かして領土を占領することとは根本的に次元の違う問題である。これをプーチン大統領は混同しているわけである。スマホという電子端末を国民が持てるようになって従来とは質量的に違った思想、文化の浸透が起こったわけである。この進展にロシアは遅れてしまった。電子情報戦にロシア国民が巻き込まれていけば、やがてロシアの政治体制が崩れて行くかもしれないという恐怖心が湧いた。

 プーチン大統領が掲げたロシア人の生活を守るためにウクライナへ軍事侵攻する背景には現状を放置すれば、イデオロギー戦争に負けてしまうという危機感である。電子思想戦に敗北する前に軍事力で国民意識を巻き戻す、この作戦が「特別軍事行動」となった。一気にウクライナ全土をロシア領に編入してしまう策略であった。だが、プーチン大統領の野心が行き詰まった。下手すると軍事的大敗北になりかねない。ワグネルや徴兵による国民の大動員まで広げてきたわけだが、若者がプーチン大統領の思惑通りに動かない。ここにも情報戦の落とし穴が出てきている。そこでロシアと中国の団結を示して挽回しようとしているが、果たして思惑通りにプーチン画を描くことができるのだろうか?