世界中へ飛ばした中国のアドバルーン騒動、一体これは何だったのか。単なる気象観測を目的にしたものなのか?中国外務省は世界中に分かり易く解説してほしい。例えば、気象観測を装った新型兵器を開発しようとしているのか、こうした不安を払拭するためにも、この小さな出来事を軽く見ないで欲しい。アドバルーン爆弾はかつて日本が戦前において使用している。だから、外見は何でもないと思ていても、どのような仕組みになっているのか疑心暗鬼になってくるものなのだ。

 アドバルーンだけでなく中国船の海底探査も気になる。潜水艦の航路を探査しているという見方が出ているが、台湾を巡る軍事情勢が細かなデータの取得をめざして、緻密に探索されているのだろう。今や中国の海軍力は、アメリカ第七艦隊の軍事力を上回る規模に編成しようとしている。この戦略に基づいて海流や海底の資源だけでなく、島と島の間の潜水艦の航行に必要な海域探査を細かに分析していると考えて間違いないだろう。

 そもそもプーチン大統領のマネというか、模倣政策をやろうとしている。中国の習政権が台湾の武力統合なるものを政治課題に掲げること自体、時代錯誤である。武力で、領土を塗り替えるという発想そのものが間違っている。問題意識の立て方が初手からボタンの掛け違いをおこしている。武力で解決する時代は何度も言っていることだが、時代錯誤だ。資本や貿易の自由化で国境線を失くしていく。これが第二次世界から得た人類の教訓ではないのか。キッシンジャー外交で米中の国交が開かれた最初の時点に立って、考え方をもう一度、思考の到達点を巻き戻して欲しい。鄧小平が政治的に妥協した。一歩前進二歩後退の視点だったはずである。

 中国は毛沢東が掲げた人民公社方式で経済的に破綻していた。起死回生の策として米中の妥協ができ、中国は一気に生産力を躍進させた。この躍進は資本主義に対する政治経済的妥協であり、やがて妥協が成果を上げた段階で反転攻勢する策略であった。中国は生産面で先進国の生産方式を学び、国力を飛躍させた。つまり、成果が出たわけだ。だが、この成果に台湾が果たした力を過小に思ってはならない。台湾の貢献が大いに役立った。それなのに台湾に煮え湯を飲ませようとしている。恩を仇で返すつもりか。中国の指導者は台湾の経済的貢献に感謝すべきなのに敵視するという政治的判断が時代錯誤だと言いたい。