脳に情報を統合する能力があれば意識があるという「統合情報理論」について語られた本です。この科学解説書を読み通すことが出来たのは、哲学や文学を引用しつつ、臨床的なアプローチから始めて、分りやすく推論が組み立てられていたからです。

 

意識とは、200億個のニューロンを持つ脳の視床ー皮質系が、多様な選択肢から膨大な情報を取入れ、統合できるシステムがあることによって生まれるものであるという、意識発生のメカニズムを示した最先端の「統合情報理論」を知りました。

 

「意識というかけがえのないものが、(取入れる情報に)多様性があり同時に統合もあるという、(脳内の)至難のバランスのうえに成り立っている」と、訳者の花木知子さんが総括しています。

 

人間の脳はそのような驚異的な機能を備えた器官だということです。この理論を辿って行けば、脳の発達、意識の成長、言語の獲得のメカニズム等も明らかにされるでしょう。

 

さらには、「われわれが知っていると思っている世界は、われわれの特異な脳が見せてくれるものにすぎない」、「すべては情報から生まれる(it from bit)」、「物理的性質を持つ物質が宇宙に存在する以前に、すでに情報が存在する」といった議論も深められるのかも知れません。

 

寒波のお蔭で読書が捗りました。政治等の人間社会の事象も興味深いですが、こんな謎に挑戦している科学の最先端の動きはもっと刺激的です。数学、物理、科学の素養が無いのが残念です。人文的に解説されている本を読むだけでは隔靴掻痒の感が否めません。

 

今からでも科学を中学/高校レベルから勉強し直してみようかとの見果てぬ夢があります。今日コロナワクチンの7回目の接種をしました。mRNAワクチンのことは勉強していますが、科学的な知識がもっとあれば理解もさらに深まるのにと思っています。