昔、父と古いフランス映画をテレビで見ていて驚いたことがあった。
小学生(かそのくらいの年頃の少年たちだと思うけど)が給食でワインを配られて、平気で飲んでいた。
「天国みたいな国があるもんなんだなあ」と互いに目を丸くして顔を見合わせた。
実際来てみると、そんなことはなかった。
友人のジョゼットにそのことを話すと、いつの時代の話をしているのか、失礼にも程がある、と怒り気味だった。
いや、別に批難したわけじゃないんだけど。
更に「あんた、酒癖悪いよ。」と話題が転じて怒りの矛先をぼくに向けられたのには参った。
確かに最近はフランスでも18歳未満の未成年者に酒は売れない。スーパーのレジにそういう紙が張られていた。でも、飲むのは違法じゃないらしい。保護者の許可があれば良いのだろう。
タバコも、皆スパスパ吸っている。それどころか、お小遣いを沢山もらっているのか、高校生くらいの子供がぼくよりも高価なタバコをスパスパ吸っている。なんか悔しい。
時代によって環境は少し変わっても、この国の本質はそう変わってないかもしれない。
車を借りて久しぶりに運転した。昼食も抜いて活動した。
夕時にはへとへとになって、腹もだいぶ減っていた。
妻が気を使ってくれて「夕飯は何が食べたい?」と訊くので「カッコイイ食事がしたい。」と答えた。
詰まりこういうことだ。
昔見た映画で(また昔でごめんなさい)、...(タイトルを忘れたのでJean Gabinで今検索してみる。Des Gens Sans Importance *) 「重要でない人々(直訳)」 と言う物悲しい映画の一場面なんだけど、ジャン・ギャバン演ずる冴えないの男の食事スタイルがカッコよかった。
その映画のストーリを(覚えている限りで)簡単に言ってしまうと、文字通り社会で重要じゃないと評価される人々の哀愁を描いていて、主人公がドライブインに勤める女と恋に陥ると言う、限りない男の夢物語。
「その映画、見たことないから分からない。」と、妻。
「じゃあ、ぼくが用意する。」と言うことで、疲れているのに買い物に出かけた。車があると便利である。
用意するもの
- チーズできれば(Camembert)
- パン(pain)
- 瓶にラベルの付いていない赤ワイン(vin rouge)
- 学食で使われているような安っぽいグラス。(gobelet)
- ラギョールのナイフ(Laguiole couteau)
- パテ・ド・カンパーニュ(pâté de campagne)
- ピクルス(cornition)
買い物から帰ってきて、まずは流しに立ってワインの瓶からラベルを剥がし始める。
最近の糊は水に浸けても簡単に落ちない。
「何してんの? めんどくさい料理なの?」と妻。
「まあ、いいからいいから」とぼく。
ラギョールのナイフは持っていないので、父の遺品の中から見付けた古いナイフ。
長いこと放ッタラカシニしてたので錆びていた。研がなきゃイケないので砥石を出して研ぐ。
「なんか、ホントめんどくさいことしてない?」と妻。
「まあ、いいからいいから」とぼく。
さて、準備が整ったのでパンを脇に抱え妻にどのくらい食べるのかとナイフを構えると、
「なにパンを脇に抱えてるの! 汚いから止めて。ちゃんとまな板の上に置いて切って。」と苦情を言われた。
仕方がないのでまな板の上に置く。
「お皿が出てないけど?」
「いや、お皿はいらないかも...」
「何言ってんの! それぞれに取らなけりゃならないから、お皿は必要でしょ。フォークとナイフも出てない。野菜は?サラダはないの?...」とテーブルの上に整えられてしまった。
なんか全然カッコよくない。
質素な夕食を只つつましやかに座って食べるだけになってしまった。
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*Des Gens Sans Importance :
和名タイトル「ヘッドライト」
『ヘッドライト』は、1956年のモノクロによるフランス映画。原作はセルジュ・グルッサールの小説。 (Wikipedia)
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La guerre des boutons
わんぱく戦争 : 記憶が確かじゃないけど、この映画で子供たちがワインを飲んでいたんじゃないかと思っている。