店内に入る。

 

目指す先に、売り急ぐ消費期限の迫った肉とか魚とか出来合いの惣菜っぽいのが詰まった、フタのない電力を無駄に消費する冷蔵庫が邪魔していて、経営者の思惑通りそれに一応目を通しながら進むと、正面に野菜や果物のコーナーがある。

 

パイナップルを発見。1€。

冬はやっぱりパイナップルの季節である。安くてうまい。

この時代でもなおフランスは南半球に植民地をいくつか持っているからである。南半球の島々のどこかは一々知らないけど、例えばイルサンモーリス、グアテマラとかは確かフランス領だったと記憶している。間違えてたらすみません。

なので収穫が夏の南国での果実は冬が旬なことが多い。

 

ミカン1㎏発見。2.58€。

これは普通に冬が旬。ただし、スペイン産。

 

サラダ菜類(Batavia)発見。1.39€。

やっぱり冬なのでチョッと割高。流石に隣人の農家でも最近は品切れなので仕方がない。

これで、一応リストの生鮮食品は買ったからこれでまあいいかと思ったが、そう言えばマッシュルームなかったなと気が付いたので加えた。2.19€。

 

何処の建物に這入っても条件反射のように向かう場所がある。

スーパーでもデパートでもドライブインでも空港でも。家族とはぐれても大概ぼくはその場にいる。母や姉や、妻と娘はぼくを見つけるのに苦労はしない。

 

そこにいるから。

 

子供の頃は「おもちゃ売り場」で、現在は「酒コーナー」である。

そこに佇んでいると必ず掛けられる言葉は「今日は買わないわよ。」である。でも、今日は独りなので買う。

 

選ぶワインを吟味していると、近くの女性に助言を求められた。

この状況は非常にマズイ。とても恥ずかしく、困った。

 

白状するとぼくはワインの事を詳しく知らない。

ボトルをひっくり返したり覗き込んだりしているのは、ラベルで製造年代、アルコール度数、それとコルクの長さを調べているだけなのだ。

なので、飲んで悪酔いしなかったらそれが正解かなと判断している。

仕方がないので正直にそのことを伝える。

女は屈託なく微笑んで去っていった。

 

Côte du Rhône Villages 2019年度製造 アルコール度数14.5 % 6.78€を選択。

Côte du Rhôneは良く言えば飲みやすい癖のないワイン。ほとんどどんな食材にでも合う。程よい赤ワインの風味を有していても、魚料理にでも違和感なく合う。

悪く言えばコクがなく、どうと言う特徴もないワインである。当たり障りがなく高級品になれない性質のものなのだろう。

ちなみに、赤ワインと納豆の取り合わせはやめた方がいい。赤ワインとチーズの取り合わせがいいので納豆でもイケると思って試してみたら、相殺してしまって最悪であった。

 

レジに並ぶ。客を見渡すと年寄りが多い。

 

そう言えば、最近フランス政府の内閣変動があったことを思い出して、新首相は34歳らしい。娘や娘の彼氏と同年代である。

高校野球球児とお相撲さんと政治家は自分よりも年上という変な固定観念を長いこと抱いていて、それがいつの間にか皆年下、どころか子供の代になってしまっている。

平日の時間が時間なので、若者は皆働いているんだろうと当たり前のことを痛感した。

 

老犬ばかりが目立つ時間帯である。

 

会計を済まして、外に出る。

 

(なんかもう少し) つづく…かも。