レモンは一年中店頭に並んでいる。いつも店頭に並んでいて、価格もほぼ一定なのでいつが旬なのかはわからない。そして店頭に並ぶのはほとんどがスペイン産である。

 同じ柑橘類のみかんやオレンジと違って、レモンは果汁に糖を加え水で割って飲むのが通常だし、酢の代わりにドレッシングとして用いることもあるだろうし、魚料理に数滴たらすこともあるだろうし、用途は様々であると思うが、これはぼくだけに限ったことではないと思うが、直に食う人はいないと思う。だからその酸味の強過ぎる果実の良し悪しの基準がぼくにはまだ無い。

 シシリア産のレモンの知名度は高い。と言っても随分前のテレビのルポルタージュでレポーターの女性が生のレモンをかじって、「うーん、やっぱりシシリー島のレモンは一味違って美味しい。これが本当にレモンなの?」と言うのを聞き及んでいたから、自分の中ではこういう印象になっているだけである。

 シシリー島には2度旅行した。2度とも夏だったからか市の店頭にレモンを見かけた記憶がない。レモンを探しに行った訳ではなかったけど、あの一味違うレモンを生で食べてみたかった。

 今年の2月ころだったか、園芸店で黄色い実を付けた檸檬の木を見付けた。シシリー種と明記してあった。かつてのルポルタージュを思い出して買ってしまった。


 冬から春にかけて大事に室内で育てている頃、白い花を多く咲かせその花の香りは、ほのかに室内に漂い冬の陰鬱な気分を和ませてくれた。
 そのまま実を付けてくれるのかと思って、「ああ、春に実を付け次の冬までゆっくりと実が熟すんだな。」と想像をした。みかんと同じように収穫期が冬だと勝手に思っていたからである。

 

 霜が降りなくなって屋外に移動してしばらくすると、小さな実はいつの間にか散ってしまった。

 

 日常が農作業に追われるようになると、檸檬の木の事を忘れるようになった。

 

 そしてそろそろ寒くなってきた今、また室内に取り込んで気が付いた。

 何時咲いた花から実を付けたか覚えがないが青い実が一つ付いている。この実が冬頃に黄色になるのだろうか?

 

 農閑期で時間もあるので、ゆっくり観察してみたいと思う。