秋は茸の季節である。

 

 数年前、庭に茸が大発生して、食べられそうだとは思ったものの、やはりちょっと不安をも感じたので誰かに調べてもらいたかった。それで、それを袋に詰めて薬局に持っていった。

 なぜ薬局かと言うと、そのキノコにちょっとでも疑いがあったら「薬局で訊け」と言うのが通説であるからだけど、結局、なんにもわからなかった。

 

 あの時の茸と同じかどうかは分からないけど、今年もまた茸の群集を発見した。

 

 「フランスには約3000種のキノコがあり、そのうち約100種が食用とされている。約100種類が潜在的な毒性を持ち、約20種類が致死性を持つ。」 そう書かれた記述をネットで見付けた。

 詰まり、危険度は約4 %、92%は食っても大丈夫だけど美味くもなんともないものだということになる。

 

 その4 %のリスクを冒してまでこの茸を口にすることをぼくはしなかった。

 

 <GUIDE DES CHAMPIGNONS>と言うサイトに200種類くらいの茸が写真付きで掲載されていたのでその中から似たようなものを探してみたが全く同じものはどうも見つからなく、似てそうなものが <collybie radicante> かも知れないので、更に <collybie radicante> を検索してみると、英語で Hymenopellis radicataに翻訳されていて、でもちょっと違うイメージが表示された。英語は分からんのでフランス語に戻り再び <collybie radicante> を検索し直し、ウィキペディアで説明を求めると、

Le règneわからないので règne を調べる。 すなわち界。界が分からないので調べる、は菌類(菌界)。門は担子菌門(たんしきんもん)?、 網は真正担子菌綱?…と、ちょっと訳の分からない学術的な分類が右の方に表示されていて、と言うよりなんか受験勉強的な方向に進まされそうになったので、いやちょっと待てよ、そうじゃなくて、いま知りたいのはこの茸が、

 

 「食えるのかどうか、食って美味いのかどうか。」 であって、

 

 勿論美味いマズいは個人の主観であってそう簡単には言えないかもしれないけど、少なくとも食っても死なないかどうかだけは知らせて欲しい。そう思うのであった。便利なようでまだまだインターネットはぼくの率直な要求に答えてはくれない。

 

 致死性の危険度は、ほんの0.6%、食って腹を下す危険度は3.4%。老い先短し、ちょっとした冒険もいいかなと、この茸をかじってみた。かじって、口の中で飲み込まないように、咀嚼した。で、個人的な結論を言うと、名前の判明しないこの茸は、

 

 「92%の、食っても大丈夫だけど美味くもなんともないものの内にクラス分け出来ると言えよう。」

 

 と結論付けて、ふと思った。干されたものを水で戻したものしか食ったことはないが「キクラゲ」なんかこの分類だ。ゴムみたいな食感はあるけど特に味は無い。食っても大丈夫だけど美味くもなんともない。

 

 詰まり茸の美味いマズいは、味付けと、盛り付けと、季節を感じさせる雰囲気によるのかも知れない。