今年、畑の主役だったトマトの全滅を確認したのは7月の中旬だった。春から断続的に降り続ける長雨の所為だろうと思う。そのことをいくら主張しても、妻はぼくの管理不足と攻め立てた。
納得がいかないのでいくつかの証言を得た。
アンリーさんの長男(隣人)の証言。
「雨の所為で病気にかかった。病名は・・・・・だろう。(聞いたけど忘れた)」
娘が勤める研究所の同僚の証言。
「長雨が災いして地中に繁殖した菌の所為で病気にかかった。病名は・・・・・だろう。(聞いたけど忘れた)」
友人ロラ(スペイン人、女性:野菜にはうるさい)の証言。
「今年のこの地域の気候ではトマトの育成は難しいだろう。当然の結果である。」
アンリーさんの次男(隣人)の証言。
「うちのトマトも全滅だよ。」
以上の証言をもってようやく妻のぼくに向けられた怒りの矛先が収まった。
それでも、もうそれ以来何をするのも嫌になって畑に出ず仕舞いだった。
何をしていたかというと、テレビが無いので東京オリンピックを見たくても見られないし、でもネット配信でほんの数分見られたり、スライドショーの配信を眺めたり結果を調べたりして、寒くても「スポーツ観戦にはビールだろう。」と、飲みながらダラダラしていた。
そりゃあ、毎日降り続けるわけでは無いし一日中降っているわけでも無いけど印象としては、今年は夏がこなかった。
去年買ったポンプは水を組み上げるのに一度も使っていない。畑に水やりは必要ないから楽だと一月近くも放っておいた。
数日前から晴れた。それで畑に出てみた。すると雑草が多く生い茂って何がどうなっているのかもう分からなくなってしまっていた。
気象予報によると、この好天はそう長く続かないらしく、庭と畑の手入れをするには今しかないと判断したため勇気を振り絞り、枯れたトマトの苗を引き抜きぬくなど、畑の雑草を四っ日かけて手でむしった。
すると現れたのは巨大化したクルジェットであった。