雨上がりの夕時、午後8時半すぎ、中庭のテーブルで一人隠れて晩酌。
 湿気が立ち込める空気に混ざってほのかに漂うその魅惑ある香りの元は、実は厄介な植物の花である。

 

 その名をシェーブルフォイユ(Le chèvrefeuille)と言う。

 

 和名ではスイカズラと言うらしい。なぜ厄介かと言うと、この植物はやたら散らばりはびこり絡み、常に手入れを怠らぬよう心掛けなければならないからである。とても生命力の強い植物である。誰が植えたかと言うと、いやそれを暴露すれば今世間でやたら騒動になっている不倫問題以上に、我が家に騒動をもたらす懸念があるので、詳しくは申さぬが、身内の仕業ではある。

 「美しい薔薇には棘がある。」は当たり前で格言でも何でもないが、美しいものには気を付けろよという注意や、タダより高いものは無いと言う格言であったりするのに近い表現を思いついた。

 

 「香り高いものに溺れるな。」

 もう今晩は何もする気が起きない。
 様々な問題が起こって早急に解決しなければならないのに、酒の酔いとこの香りを嗅いで、もうどうでもよくなった。

 明日までに提出しなければならない宿題、課題、罰金、言い訳、謝罪、計画書、そういうものを無視してもいいよな、どんよりと流れる風とこの香りに包まれ溺れ、つい投げやりになってしまう。

 もうかなり酔っていて何を書いているのか自分でもよく分からない。送り仮名とか間違えているかもしれない。漢字の変換ミスがあるかもしれない。