薬屋です。

連休に娘を連れて出掛けたカズさんの実家で

三人が過していた部屋を見せてもらった。 


フェルトで作った万年カレンダー。

段ボールの城。紙コップで作ったロボット。

ペットボトルのメリーゴーランド。

ストローで作ったミニチュア公園。粘土水族館。

ビーズのキーホルダー。

刺繍がしてある沢山のシャツ。

どれもワタシさんが愛ちゃんの為に作ったものだ。


手紙や葉書が何百と残っていた。

スクラップブックには愛ちゃんと二人で食べたお菓子や飴の包み紙が貼ってあって。

また食べようねとかひとつひとつに

感想が書き残されていた。


感激したし悲しいと娘は泣いていた。

俺は止めたが、娘がどうしても欲しいと聞かず。

頂いてきた。 

将来子供を生んだら、スクラップを作ると

眺めながら話している。


写真も見せてもらった。

運動会での愛ちゃんとワタシさんが笑っている写真を見ていたら 

「二人とも満足そうな顔しているでしょ?

玉入れでワタシさん無双状態だったんだよ」と教えてもらった。

可笑しくて嬉しくて悲しくなった。

娘と同じ。


近所の小学校から運動会の練習の音が聞こえてきたからか思い出してしまった。


三人の匂いはなかったけれど、

ひとつひとつに気配は感じた部屋で

ワタシさんがどんな思いでカズさんと別れたのか。

どんな思いで愛ちゃんと離れたのかを考えていた。

カズさんと愛ちゃんとの思い出のものを

何もかも処分してワタシさんが進んだ先で聞いた捨て台詞が「どんな思いで彼女と別れたと思ってんだ」はねぇよな。 「カズさん選んだ」はねぇよ。

あの野郎の気持ちなんて知らねえけど

そりゃねえだろ。


家の庭にはワタシさんが植えてくれたミヤコワスレが今年も咲いている。

昨夜は細い三日月。

やってらんねえ。