あの伝言は

ワタシへの伝言だった?

あの人への伝言だったんじゃない?


誰に理解してもらえなくても

カズさんへの思いは生涯消えない。


カズさんが望んでいた思いとは

違うと思うけどね。


カズさんを傷付けることはしたくなかった。

でも傷付けるワタシになってしまった。


カズさんの抗がん剤治療が終わって

「そろそろ本気で考えてくれませんか?」って

いたずら小僧みたいなカズさんの顔を

ワタシは今でも覚えているのに。

返事が出来ないワタシに

「試すような事はしません。」

と云ってくれたカズさんの優しい顔を

ワタシは今でも覚えているのに。

どんなにワタシの身体を大事にしてくれたか

わかっていたのに

流産の始末をさせてしまった。


「何で俺の子供じゃないの?

一緒に悲しめないじゃないか。」


「それでも、めぐが子供を授かれたこと

よかったなと思っている。」


そんな風にワタシを思ってくれたカズさんを

あんな形で傷付けたことを

ワタシが忘れるわけがない。

忘れられるわけがない。


ワタシは器用な人間じゃないから。

その思いがあの人には

「ワタシがカズさんを選んだ」

と映ったのなら仕方がない。

それがワタシには笑えるくらい

虚しい終わりだったとしても仕方がない。

「こんなことなら

指輪贈っておけばよかったな。」

ってカズさんは笑ってくれる?

あれからずっと

カズさんの伝言の事が心にありました。

知ることはないのだろうと

何万回も言い聞かせてきました。

そうして長い時間を過ごして来ました。

カズさんの企てを知って混乱しました。

今もです。


この世界に未練はないのだけど。

カズさんの伝言は受けとりたいと思いました。

あの人に教えて欲しいとメールしました。

聞けずに過ごした時間は何だったのか

そう思うほど躊躇いなくメールをしました。


呆気ないほど直ぐに返信が来ました。

素っ気ないほど短く伝言が記されていました。

やっぱりワタシは笑ってしまいました。


別れしかないなら従うとしたメールに

この時を逃すものかと素早く電話をしてきた

終わりの時のあの人を思い出して

笑ってしまいました。


あの人から教えてもらった伝言は

嘘ではないのかな。

信じるも信じないもワタシ次第だけど

本当なんだろうと思っています。

紫陽花越しに聞こえたカズさんの言葉と

一緒だったから信じます。


あの伝言は

ワタシへの伝言だった?

あの人への伝言だったんじゃない?


カズさんがワタシへの伝言を

あの人に託すなら

「○○君と居て幸せなら

俺の事は忘れて暮らして欲しい」

って云うんじゃない?

なんて考えたりしてました。

答え合わせ出来ないのにね。


ワタシへの伝言だとしたら。

カズさんのお願いでも

無理なお願いです。

忘れて暮らすなんて出来ないよ。


あっ。あの人に伝言聞かせてくれた

お礼を云うの忘れてた。

あの人とのこともこんな風に

忘れられたらよかったな。