「今夜は満月」

Tさんからのメールで見上げたら

満月が居た。

月明かりが足元にも届いていた。


「 今夜は満月だよ 」と伝える側だったのに

ワタシは気がついたら

伝えられる側になっていたことに

少しがっかりした。


またいつか

綺麗な月や空や山を眺めて

愛おしく思えるような穏やかな気持ちや

心が柔らかくなる時間が

ワタシの中に戻ってきてほしいと

思って過ごしていたのも

遥か昔のこと。


ワタシは

きっとこの先もよくならないけど

世界はよくなってほしい

と満月を眺めました。


月の方が大きくて頼りがいがありそうなのに

何故、人は小さな星に願うを託すのか

Tさんに聞いたことがあった。


「たくさんの想いがお月さまに募って

重さに耐えきれなくて

落ちてしまわないか心配だから

流れる星に託すんじゃない?

星は沢山あるから、沢山叶いそうじゃん?」

ふざけた風にTさんは答えたけど

「月はそんなに律儀じゃないと思うし

消える間際に託される星が不憫に思える」

反論してみたワタシに

「一理ある」とTさんは笑ってた。


「 俺が前を見てるから 

お前は好きなだけ月を探しながら

上を向いていればいいよ」

と云ってくれた

あの散歩した夜のことは

この先もずっと忘れないと思う。


満月の夜だから思い出したわけじゃなく。