「あなたなら
いつか彼を連れてくると思っていました。
それが叶わないと知った時に
あなたに訴えの理由を伝えるか
妻と話しました。
カズの遺言通りにしたいと
話さないと決めたのは間違いでした。
あの時あなたを解放してあげていればと
悔やんでも悔やみきれません。
ここまで息子への償いをしてくれる
あなたを見て
こんなに思ってもらい息子は
幸せな人生だったのだと疑うことなく
信じることが出来ました。
今はあなたが幸せになれるよう
毎日祈っています。」

ご法事の席でカズさんのお父様から
云われた言葉。

息子さんのカズさんを裏切り傷つけて
孫の愛ちゃんを巻き込んだワタシを
"信用"するまで
カズさんのお父様が費やした時間の重さは
ワタシには分からない。

本当に申し訳ないことをしてしまったと
心からの謝罪が受け止めてもらえて
ワタシは解放されたのか。

ワタシは自分のことばかり
考えてる人間だから。
何故、カズさんの企みを
もっと早く教えてくれなかったのか。
何故、カズさんの伝言を
渡してくれなかったのか。
お父様の言葉を聞きながら
そんなことを考えていました。

理由は聞かなくても分かります。
カズさんとの約束の方を選んだというより
そうする必要がないと
思っていたからなのでしょう。

24時間365日15年
誰ひとりとして
ワタシにそれを伝えようとしたひとが
ひとりもいなかった事実を知って
解放されるワタシって?

ワタシは
自分が犯した罪や
傷つけてしまった沢山の人たちへの償いを。
当然の報いだと
受け入れるための毎日でした。

あなたたちは
そんなワタシを
どんなところから
ワタシを見てた?
見るのも止めて
ワタシなら
元気に過ごしてると?
ワタシなら
あの人を連れてくると?
ワタシなら
穏やかに暮らしていると?
そんな風に思っていた?
思うこともなかった?

あなたたちにとって
ワタシってどんな人間に見えてた?
見てもいなかったのだから
知るはずないよね?