拉致
「目が見えないんだね可哀想に」
そう言って手の戒めをほどかれた
たぶん二階建て
上からドンドン音がする
陽の当たる畳の部屋
話してるのはお婆さんのよう
開いている窓からタバコの臭い
外にも人がいるみたい
話し声
男性のようででも
みんなお爺さんみたい
砂利を踏む音
木の軋む音
ベンチがあるみたい
「あんたは心配しなくていいよ
あたしら悪い人間じゃないから」
またお婆さんの声
優しい声
でも拐っといて悪くないって?
「奥さんは家に着いたのかな?」
もうひとりそばにいた
お爺さんの声
わたしはポケットのお守りを
握りしめた
「2018年3月21日」
Koichi Tanaka KAGOSHIMA. Has written a poem