40


   護衛とはいえ、守るは年頃の娘である。
   夜中にひとり。
   そこに、血気盛んな男の子二人を、
「今夜は美凪のために泊まってあげてね」とは、母親らしからぬと、思うことなかれ。
   言われた男の子二人は、お母さんにそう言われて、よこしまな考えなど微塵もなくて、ただひたすらに命令を実直に遂行する兵士のような心構えでいた。
   美凪は心底、ホッとしていた。
   ひとりでは眠れないと思っていたからだ。でも、よくよく考えれば、この状況も、徹夜になりそうな気もしている。
「お母さんにいつ言われたの?」
   美凪が訊ねると、勇二と守人は声を合わせて、
「お母さんとはメル友なんだ」と答えた。
   手回しの早さは、看護師という職業のなせる技か、はたまた、生まれ持った性格か。
   二人は交互に睡眠を取ると言い、それぞれ金属バットを持っていた。
「どうしたの?買ったの?」と訊けば、「学校の野球部から借りてきた」と言う。
   迷惑は拡がるばかりだと、美凪は目を閉じた。
   その時、またチャイムが鳴った。
   

                                            「2018年2月12日」

Novel Koichi Tanaka KAGOSHIMA.