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   高校1年の初夏。
   守人は、鹿児島空港に母と伯母と、弁護士の伯父を見送りに来ていた。
   名うての弁護士の伯父は、月に1度は必ず、東京に行く。携わる事件によっては、何週間も帰らないことがある。
   そんな時、残された伯母とまだ小さな男の子はよく、守人の住む公団住宅に泊まりに来る。
   守人は伯父のことを尊敬しているし、伯父も、守人に弁護士になることを奨めていた。
   それは、名前からもわかる。
   弱者を守る、「守人」。伯父の兄、亡くなった正義感の強い警察官の父が、名付けてくれた。
   だからだろう。今の美凪のことを快くは思っていない。それでも、黙っているのは、好きだからだし、自分でなんとか更正させようと、思っているからだ。
   それにしても、なぜあれほど美凪は、警察を憎悪するのだろう?
   伯母の運転する軽自動車での、帰り道。
「国分のイオンのトンカツ屋で、お昼食べてかない?」
   そう言う伯母の提案に、日曜日の残された中途半端な時間を潰すにはそれもいいかと、話は決まった。
   鹿児島空港を出ると、片側二車線の道を、真っ直ぐ進む。高速道路をくぐり、ラブホテルの点在する地域をすり抜ける。坂道を下ると隼人町日当山(はやとちょうひなたやま)にでて、そこから国分市はすぐだ。
   坂道を下る前、左に雑木林のなかのラブホテルを見ていた守人は、突然叫んだ。
「伯母さん、と、止めてっ!」
   それほど速度の出ていなかった車は、10メートルも行かずに、停車。
   何台か後続の車をやり過ごしたあと、守人は車外に出る。
「なになに?」
   いぶかる家族を尻目に、守人が見つけたのは、美凪だった。

                                             「2018年2月4日」


   Novel Koichi Tanaka KAGOSHIMA.