今月、東京駅でのエスカレーターの歩行禁止をJR東日本が呼び掛けてから、エスカレーターの「片側空け問題」が話題となっています。
 
大都市圏では、急いでいる人への気遣いとして、エスカレーターの片側を空けることが習慣化。
首都圏だと右側を空け、近畿圏だと左側を空けるのが主流。

しかしながら、半身マヒやケガなどにより、空けるべき側に立たないとベルト(手すり)が掴めない利用者もいる上、ベルトを掴んで立っている人と歩く人が接触する事故も頻発しており、エスカレーターでの歩行禁止の是非が議論されています。
 
 
 
 
JR東日本・東京駅で、エスカレーターの歩行をやめるように呼びかけていることに対し、マツコ・デラックスさんが賛同したという記事。
 
<以下、出演番組でのコメントを引用>
「私はもう、一歩たりとも歩きたくない人間なんで、悠然と左側に乗っているタイプ」
「肩バーンってぶつかったり、邪魔だよって文句言う人がいる。荷物とか、ガラガラ(キャリーバッグ)とか後ろに置いている時にガーンと引っかかって下に落としそうになって、後ろの人が支えてくれたんだけど」
「どうやら欧米などでも(片側を)開けるらしくて、世界基準で見て日本がおかしいってわけでもないみたいだから、難しいところなんだけど」
「いわゆる“エスカレーター待ち渋滞”がホームにできるのが危ないんだって。ラッシュの時は、それでどんどんエスカレーター待ちの列ができて、ホームに人があふれるみたいになっちゃう。同じ100人が上がるって考えた時、全員2列で行った方が3分の2ぐらいの時間で済むって計算があるんだって。だから効率ってこと考えても、みんな2列で乗った方がいいよね」
 
 
 
エスカレーターの片側空けはロンドン地下鉄で、1944(昭和19)年頃に始まったとされています。
日本では1967(昭和42)年頃、阪急神戸線・梅田駅が始まりで(阪急電鉄の呼びかけによる)、首都圏では1980年代の終わり頃(昭和末期)に自然発生的に広がったようです。
 
<以下、記事の後半を引用>
 しかし、2列立ちで利用した方が、全体の移動時間は速くなるという分析結果がある。
 構造計画研究所(東京)は、全長30メートルのエスカレーターで350人が通り抜けるまでの時間を比較した。2列立ちは前後の間隔を1段空け、片側空けの場合は右側の歩行者は2段空けて歩き、全体の3割が右側を歩くと想定した条件にした。
 結果は、350人全員が通り抜けた時間が2列立ちは6分49秒、片側空けは7分35秒で2列立ちのほうが46秒速かった。全体の6~7割が歩くと設定すれば片側空けの方が速くなるが、最短でもその差は15秒だった。
 エスカレーターの長さや歩行速度など状況にもよるが、同研究所は、片側空けは立って乗る側の列が長くなって混雑を引き起こす可能性もあり、安全面などを考えれば2列立ちの方がメリットが大きいとしている。
 
 
 
 
電車やバスで積極的に席譲りしている僕自身も、実は身体障碍者
今春、股関節の難病を理由に、俳優の坂口憲二さんが芸能活動を休止しましたが、彼と同じ難病を僕も20年前に患い、手術前後には松葉杖やステッキを使い、エスカレーターや階段を利用していました。
例えば、左足をリハビリしている状態で、左手で松葉杖を持っているとしたら、エスカレーターのベルト(手すり)を掴むのは右手。
左側を空ける習慣の大阪だと問題ないものの、右側を空ける習慣の東京だとベルトを掴めません。
もちろん、右足をリハビリしている状態だと逆。
すぐ近くにエレベーターがあれば良いのですが、そうとも限りません。
 

「片側空け問題」は僕自身にとっても自分事、重大な問題として考えていました。
黙っていられなくなった僕は先週末、自宅に程近い北海道新幹線の新函館北斗駅へ行き、現地調査を敢行。
他の乗客がいない時間帯を狙い、2F改札口と1F在来線ホームを結ぶエスカレーターと階段で、持参したメジャーとスマホアプリのストップウォッチを活用し、何度も行き来しました。
  
 
 
 
 
計測結果は、下記の通り。
●1Fから2Fまで
  高さ:7.7m
●蹴上(1段の高さ)
 階段:16cm エスカレーター:20cm
●踏面(1段の奥行)
 階段:30cm エスカレーター:40cm
●階段を「急いで」歩いた場合
 所要時間:19秒(分速50m相当)
●階段を「ゆっくり」歩いた場合
 所要時間:28秒(分速35m相当)
●エスカレーターを「歩かない」場合
 所要時間:33秒(分速30m相当)
●エスカレーターを「歩いた」場合
 所要時間:14秒(分速70m相当)
※全て概数、数値には「約」が付きます
 
 

階段を「急いで」歩いた場合と比べ、エスカレーターを「歩いた」場合の方が、5秒だけ短いという結果。
しかし、だからといってエスカレーターの歩行を肯定する気には、僕はなれません
ステップ1段あたりの高さが、エスカレーター(20cm)は階段(16cm)よりも4cmも大きく、それだけ歩きづらいんです。
ちなみに公共施設の階段については、蹴上を21cm以下にするよう法律で定められており、加えて利用者に優しい建築物にとして、国土交通省では16cm以下を推奨しています。
 
 
 
 
これは僕の実体験ですが、上りエスカレーターに乗っていた時、すぐ前の年配女性が急に僕の方へ倒れてきたことがあります。
函館から青森へ向かうフェリーに乗船するため、客室へ向かう上りエスカレーターに乗っていた時で、幸いにも僕が持っていた大きなスーツケースが支えとなり、倒れてきた女性を支えることができました。
異変に気付いた係員が緊急停止ボタンを押し、エスカレーターが停止して事なきを得たのですが、幅が1m程度と狭く、立ち上がりたくても何処にも掴む場所がなく、僕が女性に手を貸したものの、運転中は起き上がることさえ無理でした。
 
 
改めて僕が痛感したのは、エスカレーターは「のりもの」だということ
社会の高齢化が更に進み、ただでさえエスカレーターで転倒する人が多くなると想定されます。
ましてや、エスカレーターという「のりもの」の上を早歩きするなど、無謀で危険な行為だと感じます。
エスカレーターを歩くことにより、たとえ階段を急ぐより5秒短縮できるとしても、この5秒を得るために、掛け替えのないものを失う恐れが大きいと、僕は思います。
 
 
 
エスカレーターの
乗り方は、
正解のない
問題

誰かが「正解らしい答え」を与えることに依存せず、自分の頭で考え、人と意見を話し合うことこそ、地道ながらも王道、最適解を導き出す定石だと言えます。