中国の防空識別圏問題への一考察(1)[HRPニュースファイル840]

 ◆中国の非常識-防衛識別圏の悪用

防空識別圏の設定自体は珍しいことではありませんが、中国の動きは異常としか言いようがありません。

周辺国との事前調整もなく、唐突に日本と重複する空域を設定したばかりか、日本固有の領土である尖閣諸島をも含めたことに加えたことです。

そして、同空域に入る航空機への中国政府への通告義務を課し、さもなくば「防御的緊急措置を取る」と脅しています。

最大の問題は、中国が防空識別圏を「管轄権が及ぶ空域」つまり「縄張り」と考えていることで、これは中国軍機が「巡視飛行」と表現したことからも明らかです。

さらには、中国の空軍報道官の談話として伝えたことには、「防空識別圏内での巡視飛行を常態化させていく」とも強調しているようです。これは、中国の非常識とアジア侵略の野望を、世界に示す証拠と言えます。

そもそも中国には、防空識別圏を「縄張り」と考えることへの確信犯的な間違いがあります。我が国も防空識別圏を設定していますが、あくまでも我が国の領空を護るために、その前方で警戒ラインを想定しているに過ぎません。

また自衛隊機によるパトロール飛行も行っていますが、その目的は空域のパトロールではなく、海上の不審船などへの警戒監視が目的です。しかし中国の航空機は、空域を支配するかの振る舞いであり、国際的非常識かつ、力ずくで支配圏拡大をねらった、前近代的な思考であると感じるわけです。

 ◆なぜ、中国は防空識別圏の設定に動いたのか?

 《制空権の獲得》

【1】戦闘では、制空権が勝敗を決します。従って、第1列島線の完全内海化ためには、上空の制空権が必要であり、その布石が防空識別圏の設定です。

【2】従って、今後、台湾や南シナ海方面にも制空権確保を狙った、防空識別圏の設定は充分あり得るシナリオです。

【3】制空権の確保は、空および海上からの占領を容易にするねらいがあります。特に尖閣上空の制空権が中国に落ちれば、自動的に尖閣占領が完了したのも同然となります。

【4】次に太平洋へのルートづくり。沖縄本島~宮古島間を通って太平洋に出る中国海軍のエアカバー(航空支援)として空軍の航空機が必要であり、防空識別圏の設定によって、中国の通り道として世界的に認めさせる意図があります。

 《日米の情報監視を阻む目的》

日米は東シナ海においても中国軍への監視を続けています。例えば、海上自衛隊は高性能の対潜哨戒機P3Cを東シナ海でパトロールさせ、中国潜水艦の動向を日夜追っています。

また、尖閣上空のレーダー監視の穴が指摘されてからは、米軍と共同して、E2Cなどの空中警戒(管制)機を飛行させ、米軍はさらに中国の沿岸近くまで入り込み、電子偵察機や無人偵察機を使って、情報収集にあたっています。

特に高高度を飛行できる無人偵察機(グローバルホーク)を使うことで、中国内陸部の軍事施設などを探れると言われています。

防空圏の設定は、こうした日米の監視活動を阻止するねらいがあります。中国軍が日頃の行動を情報収集され、部隊能力や軍事作戦が筒抜けになる危機感を持ったとしても不思議ではありません。

特に、沖縄本島~宮古島間を通って、太平洋に進出する中国軍艦船や潜水艦のルートの解明などは、有事の中国艦隊の行動を推測できる重要な手がかりを日米に与えてしまうことになるからです。

 《対アメリカ戦略-足元を見られたアメリカ》

経済的没落の危機にあるアメリカは、中国との全面対決を望んでいません。さらにオバマ政権の外交姿勢は「世界の警察であることを止める」方向へ進んでおり、シリアへの軍事介入中止は世界の失望を招いてしまいました。

またイラン核開発阻止においても、北朝鮮の二の舞となるであろう不毛の多国間協議へと逃げ込む姿勢を見せています。そんなオバマ大統領にとって、中国の防空識別圏問題は頭の痛い問題であろうことは間違いありません。

中東での問題が未解決のまま、中国とも事を起こすのは避けたいはずであるし、かといって、日本がアメリカ離れを起こすような事態だけは避けなければいけないからです。

しかし、米国が「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用対象」だと明言して、中国に対抗する意思を示してはいますが、中国の強気の出方を見る限り、尖閣問題においては、アメリカの抑止が機能しているとは言いがたいところもあります。

要するにアメリカの外交自体が、中国に対して協調主義的な政策を取っており、ライス米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も、最近のワシントンでの講演で「中国とは大国関係の新たなモデルを模索している」と、批判を避けているように、アメリカは完全に足元を見られています。

《明日につづく》(文責・岐阜県本部副代表 河田成治)

中国の防空識別圏問題への一考察(2)
http://hrp-newsfile.jp/2013/1135/
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【本日のニュースクリップ】
1.着実に前進する中国の宇宙開発 日本も遅れを取るな 
2.五輪までに環状線完成!? 「追い風」の7年間で未来都市を構想せよ
3.仲井真知事はまだ「県外」か 日本政府が責任を持って判断せよ
4.天皇、皇后両陛下がインドご訪問 インドと日本の強い絆



◆着実に前進する中国の宇宙開発 日本も遅れを取るな
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7030

中国が2日、月探査衛星「嫦娥(じょうが)3号」の打ち上げに成功した。14日頃には月探査機「玉兎号」が中国初の月面着陸を試みる予定だ。月面着陸に成功すれば、中国はアメリカ・ロシアに続き、月に進出した3カ国目の「宇宙大国」となる。

この度の月探査衛星の発射は、10月末に天安門前で起きたウイグル人による車突入・炎上事故など中国国内での混乱を最小限におさめ、衛星の打ち上げを国威発揚に利用し、政権の求心力を高める狙いがあると見られる。そのためか、衛星の打ち上げが未明だったにもかかわらず国営中央テレビが生中継し、紙面では「嫦娥(月面探査衛星)が玉兎(月面探査機)を抱き、月に向かった」と大々的に報じられた。

中国は江沢民政権以降、わずか20年ほどの間に驚異的な速さで宇宙開発を進めている。

江沢民政権下の1999年には、「神舟1号」で無人宇宙飛行に成功。その後、2003年には「神舟5号」でロシア・アメリカに次いで世界3番目となる有人宇宙飛行に成功した。ただ、「神舟5号」発射に立ち会ったのは胡錦濤だったため、有人宇宙飛行は胡錦濤の“手柄"との見方もある。

その胡錦濤政権は、2011年に宇宙ステーション実験機「天宮1号」の打ち上げに成功し、同年に無人宇宙船「神舟8号」、その翌年には有人宇宙船「神舟9号」とのドッキングに成功した。
このほか、弾道ミサイルによる人工衛星破壊実験や中国版GPS「北斗」のための測位衛星の打ち上げにも成功している。

そして今回、習近平政権下で、中国の宇宙開発は新たに「月」を目指し始めた。「玉兎号」の月面着陸が成功すれば、中国は世界3位の「宇宙大国」という地位をさらに印象づけることになる。

こうして見ると、中国ではそれぞれの国家主席が、その任期中に宇宙開発のコマを着実に前進させてきたと言える。2020年に中国独自の宇宙ステーションの開設が予定されていることから、習近平政権ではさらに宇宙開発が加速する可能性も指摘できる。

中国の宇宙開発担当者は、あくまでも宇宙の平和利用を強調しているが、実際には月の資源開発はもとより、軍事目的で宇宙開発をしていることを忘れてはならない。大陸間弾道ミサイルの開発など宇宙技術の進歩は軍事技術に応用できるものだ。実際に中国の宇宙開発を担当しているのは国防部門であり、人民解放軍の施設でもある酒泉衛星発射センターから衛星が発射されている。

一方の日本は、小惑星「イトカワ」の微粒子を持ち帰ることに成功した「はやぶさ」や、国際宇宙ステーションの有人実験施設「きぼう」に象徴されるように、高い宇宙技術を持っているにもかかわらず、中国のような戦略性に乏しい。ましてや、安全保障目的で宇宙に進出することなど考えられていないのが現状だ。
中国が宇宙での影響力をも拡大しようとしている今、日本は宇宙開発でこれ以上遅れを取ってはならない。(飯)

【関連記事】
2012年6月19日付本欄 中国の有人宇宙船ドッキング成功 日本も自衛のための宇宙開発を
http://the-liberty.com/article.php?item_id=4446

2012年6月15日付本欄 宇宙利用「平和目的」削除 中国の宇宙兵器に対抗せよ
http://the-liberty.com/article.php?item_id=4436



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軽減税率という甘い罠[HRPニュースファイル839]

 ◆政局と税制

公明党の強いプッシュに押される形で、安倍首相が消費税の軽減税率の検討を命じました。

目下、軽減税率の導入に積極的な公明党と、消極的な自民党・財務省の綱引きの様相を呈しています。(12/1産経「「師走闘争」に走る公明党 軽減税率論争の行方は」)

また公明党は、消費税の10%への増税も推していました。この背景については、青山繁晴氏が興味深い報告をされておられます。

公明党と財務省の密約が存在するというのです。公明党は、軽減税率を公約に掲げており、何としても実現したいところでしょう。

財務省は、軽減税率は税収が減るので、導入はしたくないのですが、税率が上がれば話は別で、軽減税率を導入する旨味が十分にあります。

どの分野に軽減税率を適用させるか、という巨大な裁量権を手にするからです。この裁量権をテコに、天下り先には困らないことでしょう。

安倍首相はと言うと、アベノミクスの成功が最優先で、10%増税には消極的だそうです。

そこで財務省が、軽減税率を認める代わりに、消費税増税10%を実現させるということで、公明党と密約を交わしたというのです。

以上が、青山氏の発言の概要です。(11/16「アンカー青山繁晴のニュースDEズバリ」)

ことの真相は分かりませんが、ともあれ国益とは関係ないところで税制論議が進んでいるとすれば、不届き千万です。

 ◆そもそも軽減税率は善か悪か

ところで、軽減税率という制度自体を、どのように考えるべきでしょうか。

軽減税率とは、低所得者への消費税の負担を軽減する目的で、食料品などの生活必需品に限定して、低く抑えられた税率のことです。一見、低所得者に優しい税制のように見えます。

しかしここで問題になるのが、「生活必需品」を決めることが出来るのか、ということです。例えば、一体どんな服だったら生活必需品で、どんな服が贅沢品だと言うのでしょうか。

100g何円のお肉だったら、生活必需品のお肉だと言うのでしょうか。そのルールを決めるのに、適切な基準はありません。

探しても見つかりませんし、そもそも誰かを説得できるような、そんな明確な基準は存在しないのです。だったら、どうやって決まるのでしょうか。

正しさの基準が無い中で決めなければなりません。ですから、幾つかの業界や政治家の強い意向を材料にして、官僚の裁量で決めるしかなくなる訳です。

 ◆複雑なルールは、静かに自由を奪う

国民の自由を保証するのは、私有財産の権利です。お金が自由に持てて、自由に使えるから、国民は自由に活動することができます。

そして、国民の自由を奪ってきたのは、権力者の裁量による課税です。そういった権力者の裁量を抑制するために、議会や憲法が発明されたのです。

だからこそ、現代においても、官僚に裁量を与えるような政策を選択してはなりません。
裁量の余地が無いように、ルールにはシンプルさが必要です。シンプルな制度は、官僚の裁量を拡大させないためにどうしても必要な条件なのです。

軽減税率も累進課税も、一見、低所得者に優しく見えます。

しかし、軽減税率や累進課税に、寄って立つべき正しさが見出されない以上、この制度の中で自由を守ることはできないでしょう。

 ◆複雑さの中に、自由を奪う罠がある

様々な状況がある中で、「結果の平等」を実現しようとすると、多くの規制や累進課税によって、制度は複雑になるばかりです。

複雑ゆえに、官僚は裁量を働かせやすく、また官僚の人数も増えて、大きな政府が出来上がってしまいます。複雑な議論の中で、国民の自由は危機にさらされることになるでしょう。

私たち国民は、機会の平等に向かう政策か、結果の平等に向かう政策か、見極めなければなりません。

複雑な議論には、その背景にあるやましさを疑いましょう。その複雑さの中に、自由を奪う罠が潜んでいます。

「機会の平等」に複雑さは不要です。税制論議は自由を守るための戦いです。幸福実現党は自由を守るために戦い続けます。(文責・HS政経塾 三期生 田部雄治)
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