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「言葉の調律」

まず考えるべきことは、言葉の調律から始めることです。
人を傷つける言葉、相手を裁く言葉、相手をほんとうに
こっぱみじんに砕き、失意の底に落とすような言葉、そういう言葉を出さないことです。
 
喉元まで出かかっていても、ぐっと思いとどまって、口を閉めてしまうことです。激しい言葉が出そうになったら、深呼吸してください。心のなかで、一、二、三、四、五、六……
と数えてください。十も数えたら、その言葉は出さなくてすみます。出さなくてもいい言葉は出さないことです。
もちろん、心のなかで思わないのがいちばんいいのですが、
いったん思ってしまったならば、次はそれを言葉に
出さないことです。
 
言葉に出してしまったら、その言葉自身が生き物となって動きはじめます。仕事をします。耳を通じて、相手の頭のなか、心のなかに入って、相手のなかからも憎しみというものを喚び起こします。
そして、さらに激しい言葉が相手からも出てきます。
その結果、両方からの応酬になって、そこに血みどろの戦場が現われてきます。
ですから、まず、相手を傷つける否定的な暗い言葉を出すまいという、最初の関門を守ってください。
 
大事なことは、心に曇りをつくらないこと、
毒を食わないことです。
相手のほうに悪い点があるのかもしれませんが、その悪を自分自身のなかに植え込んで増幅させる必要はありません。
 
ここで大事な考え方は、「他人の心は、自分の自由にはならない」ということです。これをよく知っておいてください。
これはどのような王様でもそうなのです。
身体は拘束できます。奴隷にすることも、殺すこともできます。
しかしながら、その人の心は自由にはできません。
どんなことがあっても自由にはできないのです。
そのように、心は王国なのです。善き心であろうが悪き心であろうが、その人自身のものなのです。
 
ですから、他人に対して腹が立ってしかたがないときには、その他人の心自体を支配することはできないということを、もう一度思ってください。そして、そのときに、みなさんがすべきことは何でしょうか。
他人の心は支配できないけれども、自分の心は百パーセント支配できるという事実がここにあるのです。
他人の心は変えられなくても、自分の心を変えることはできます。


『理想国家日本の条件』(148~152ページ)より