政府は3月の月例経済報告で景気判断を上方修 正したが、消費の持ち直しは遅れている。消費税 など恒久増税を行った場合、消費の下押し効果は 一定の期間を経て減少するのか、それとも増税を 実施している限り続くのか、今回のコラムではこ うした素朴な疑問に答えてみよう。

消費については、ミクロからみるのとマクロか らみるのでは大きく世界が違ってみえる。ミクロ の視点で代表的なものが「消費を増やすポイント は新しいニーズを切り開くことだ」という意見 で、経済学が専門外の人を中心にしばしば聞かれ る。

ただし、これはあくまで供給側の論理だ。個別 の企業にとっては、新しい需要にみえても、実は 多くの場合、他の企業のお客を奪うという意味 で、需要増ではなく、単なる需要の振り替えであ る。

これは、消費者の財布を考えれば分かる。財布 の中身が一定であれば、新しいニーズは既存の ニーズをあきらめることで得られるからだ。

これに対し、マクロ経済の消費理論では、財布 が消費を決める。新商品の開発など新たなニーズ という観点ではなく、所得が増えれば消費が増す というものだ。こうした観点からいえば、消費が 低迷しているのは「買いたいものがないからだ」 という説明もはなはだ怪しい。実際には、「所得 が低迷しているから消費が伸びない」というのが マクロ的な見方である。

このマクロ経済の見方を前提にすれば、消費増 税の影響はずっと続く。ただし、この場合、要注 意なのは、それぞれの時点において、もし消費増 税が行われなかった場合の消費と比べてマイナス の影響がある、という比較になる。

実際にはこの比較を厳格に行うのが難しいの で、過去のある時点との比較になる。そこで、1 年前との比較であれば、消費増税後1年程度はマ イナスの数字となって、1年を経過したあたりか らプラスの数字になるはずだ。

今年4月以降の消費統計が発表されるのは5月 以降であるが、その段階でプラスでないと、消費 増税によって2次的な悪影響が出ているというこ とになる。

いろいろな統計があるので、実際の消費動向を 把握するのはかなり難題だ。しばしば用いられる 全国百貨店売上高は、中国人の「爆買い」によっ て数字が左右されてしまうし、消費全体を表すも のでもない。

本コラムでは、総務省家計調査の消費水準指数 (前年同月比)でみてみよう。昨年4月以降、マ イナス幅は徐々に縮小傾向になっているが、果た して今年4月の数字がプラスになるだろうか。1 月の消費水準指数(前年同月比)はマイナス5・ 1%だった。これが3カ月でプラスになる可能性 は小さいだろう。今のペースでは、プラスになる まであと1年以上を要する。

ということは、消費増税は単純に家計の可処分 所得を減少させただけではなく、2次的なマイナ ス効果があったといわざるを得ない。その意味 で、消費増税の悪影響は続いているといえよう。 そして、何も策を講じないと、あと1年以上、悪 影響が続くのではないか。 (元内閣参事官・嘉 悦大教授、高橋洋一)