北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の 遺体は父、金日成(イルソン)主席と同様に保全 処理され、生前の姿のまま平壌に安置されてい る。だが、施設改築には国民3年分の食糧がまか なえる巨費が注ぎ込まれた。現在も、両指導者の 遺体保全だけで年間約2億円が投じられ、国民生 活を圧迫し続けている。(龍谷大教授 李相哲)

金総書記の遺体が一般に公開されたのは、死去 から1年たった2012年12月。「永久保存」 にはそれだけ複雑な処理が必要だからだ。

遺体保全研究に関わり、その後、脱北した元研 究者や資料によると、臓器などの摘出から防腐処 理、ガラスのひつぎに納めるまでの措置だけで約 100万ドル(1億2千万円)を費やす。関連施 設の整備費を合わせると約1億ドルを要したとい う。

処理後も、2週間に1度はひつぎから取り出 し、防腐処理を施さなければならない。ロシアか らの技術者の手で行われ、保存作業だけに毎年約 80万ドル(約9400万円)以上かかるとい う。金主席の遺体と合わせると、維持費は倍にな る。

安置されているのは、平壌中心から北東約8キ ロの錦繍山(クムスサン=モランボン)の麓にあ る、ぜいを尽くした石造建物の3階部分だ。総敷 地面積約350万平方メートル、地上の建物面積 だけで約3万5千平方メートル。建物前の広場の 面積は約9万平方メートルで、東京ドーム2個分 に当たる。

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広場は、金主席の誕生日(4月15日)にちな み横415メートル、縦は金総書記の誕生日(2 月16日)に合わせ216メートルにし、建物を 囲む塀には鶴と雲を彫刻した約70万個の世界最 高級の御影石が使われ、入り口の手すりには金が 施されている。

もともと、建物は金総書記が父の65歳の誕生 日に贈るため、後継者に内定した直後の1973 年3月に着工、77年4月に完成した。当初は金 主席の官邸として使われ、「錦繍山議事堂」や 「主席宮」と呼ばれた。

金主席の死後、遺体を安置するために大掛かり な改築工事が行われ、約8億9千万ドルを費やし たとされる。工事が行われたのは北朝鮮で大量の 餓死者が出始めた94~95年。改築費はトウモ ロコシに換算すると、北朝鮮国民3年分の食糧を 買える額だ。脱北した党幹部によると、改築に伴 うトンネル工事で多数の死傷者も出たという

改築後、「錦繍山記念宮殿」と呼び名を変え、 金総書記の遺体も安置後は「錦繍山太陽宮殿」と 呼ばれるようになった。最近、住民の間に「金日 成の死体がだんだんと縮んでいる」といった噂が 広がっているというが、遺体の劣化か、「浪費の 恨み」が生んだ“怪談”かは定かでない。