2014年12月08日(月)

東日本大震災後、体に感じる地震の回数も減り、 落ち着いたかに思えた日本列島。だが、長野での 地震、 御嶽山・阿蘇山の噴火など、大地の動きはつづい ていた。そしていま、さらなる地殻変動が?

■70年近くいて初めて見た

「なんだ、あれは……」

11月下旬、神奈川県と静岡県の県境にまたがる金 時山でのことだ。
ここは、富士山麓に連なる箱根 山の すぐ近くに位置する。
「金太郎」こと、「坂田の 金時」伝説ゆかりの地でもある。
登山が趣味の本誌記者は、この山に100回以上登っ ている。
麓の町から山道を歩くこと1時間半ほど。 山 頂付近にある山小屋の人々もすっかり顔なじみ だ。

しかしこの日、見慣れたはずの風景を何気なく眺 めていると、奇妙なものが目に飛び込んできたの だった。
「箱根山から、煙が……出てる?」

あいにくの天気で雲も低く垂れこめているが、丸 で囲んだ部分、中腹の山並みの間から白い煙があ がって いる。

箱根の山は、言わずと知れた温泉観光地だ。地中 に溜まったマグマの熱で地下水が温められ、温泉 とし て噴き出している。

常に活発に噴気をあげている大涌谷は温泉たまご なども有名で、ピーク時には一日約2000人の観光 客が 詰めかけ、火山の生み出す特徴的な風景を楽しん でいるという。

ちなみに大涌谷に向かうロープ ウェイの 年間乗客数は世界一であり、昨年度は220万人。
ギ ネスブックにも載っている。

世界で一番、身近な火山とも言える箱根山。
そこ で噴気があがったと聞いても、 「箱根ではいつでも噴気が出ているんじゃない の?」 と思われるかもしれない。

しかし今回発見したのは、大涌谷から尾根ひとつ 越えた、北西側の斜面だ。
しかも、その噴気は大 量で、 離れた場所からもはっきり目視できるものだっ た。

この金時山頂上の山小屋で1947年、14歳のときか ら働いている「金時娘」こと、小見山妙子さん(81 歳)に 訊ねてみた。
「あの噴気のこと?あれは私も驚いてんのよ。
噴気 なんか出るようなところじゃないと思ってたか ら。
最初は 誰かゴミでも焼いてるのかと思ったの。
はじめは 細い煙みたいに見えたけど、日が経つにつれてだ んだん 大きくなってきた」

67年間、日々向かいの箱根山を見つめて生きてき た「金時娘」も、今回の噴気には驚いたというの だ。

「ここには長くいるけど、あんなところから噴気 が出たのは初めて。
だから心配で(箱根)町役場に知 らせたんですよ。
そしたら、『噴煙が200mくらい になったら、また知らせてください』って言う。
箱根は温泉観光で食べてるから、ちょっとのこと で大げさになるのはイヤなんだろうね。
それで も、だんだん煙の幅は広がっているし、もう200m くらいになったんじゃないかな。
あんまり噴気があがってくるもんだから、近くに あった老舗の旅館が営業できなくて、閉めたりし ているらしいですよ」(小見山さん)

いったい、何事が起きているのか。
この新たな噴 気の上昇が細々とはじまったのは、'11年3月の東 日本大震災のあとだというが、いまではまさに、 もくもくと立ち上っている。

本紙記者は早速、現場近くに向かった。

いったん麓の町に降り、車で別荘地がつづく山道 を箱根山に向かう。
「金時娘」に教えてもらった 噴気孔の場所は、別荘や美術館などの施設にも近 かった。

地図上では、道路が噴気孔にもっとも近くなる場 所にたどりつく。
うっそうとした薮と木立に遮ら れて、噴気そのものが立ち上る現場を見ることは できない。
またそこから直接、噴気孔のあるあた りに近づくルートも見当たらない。
車を停めて窓を開けると、温泉独特の卵の腐った ような臭い、つまり硫化水素の臭いが感じられ る。
温泉場なら当たり前だろう、と感じる方もい るだろう。
だが、麓の町や、この付近以外の山道 では感じなかったものだ。