心の豊かさに関して、ちょっと考えさせられる 調査結果が明らかになりました。生活水準は変わ らず、努力しても報われないと多くの人が考えて いるにもかかわらず、心が豊かだと考える人の割 合が急増しているのです。

この調査結果を発表したのは、文部科学省所管 の統計数理研究所です。同研究所では、日本人の 国民性に関する調査を5年に1回行っています。今 回、発表になったのは2013年の調査結果です。 それによると、心の豊かさに関する質問では、 「非常によい」あるいは「ややよい」と回答した 人の割合が48%と、2008年の前回調査と比べて 大幅に増加しました(前回は28%)。「もう一度 生まれ変わるとしたら日本に生まれてきたい」と 回答した人も、前回の77%から83%に上昇してい ます。特に20代の男性の増加が著しく、自身に対 する精神的な満足度が高くなっていることをうか がわせます。 一方、自身の将来について「努力 しても報われない」と否定的に考えている人の割 合は26%となっており、こちらも前回調査と比較 して大きく増加しました(前回(1988年)は 17%)。また、自身の生活水準についても、「変 わらない」という人が44%から53%に増加してい ます。この調査とは直接関係しませんが、不景気 が長く続いたことで、国民の購買力は大幅に低下 しており、内閣府の調査でも、生活水準が低下し たという人の割合が増えています。こうしたこと を総合的に考えると、生活水準に対する感覚はや はり悪化していると考えるべきでしょう。 そう なると、物理的な生活水準は悪化しており、将来 に対する展望もあまりないものの、精神的な満足 度は向上しているということになります。この結 果はどう考えればよいのでしょうか。 人間の満 足度は、お金で換算できる経済面や、職場の環境 といった社会面ばかりではなく、自身の気持ちの 持ち方で変わってくると考えれば、心の豊かさが 向上したという今回の結果は素直にプラス評価し てよいということになるでしょう。

一方、現実の生活水準や職場環境がどうしても 良くならないので、現状を渋々受け入れ、精神的 に豊かになったのだと言い聞かせている可能性も あります。そうだとするならば、この状況はでき るだけ早く改善しなければなりません。 政府や 自治体が行う支援策のほとんどは、経済的、社会 的によい環境が与えられれば、人間の満足度は上 がるということが大前提になっています。こうし た考えには批判もありますが、一方で、精神的な 豊かさの強調というのは、国民に貧しさを強いる ための口実になる可能性もあります。 経済面、 社会面での向上策が、わたしたちの生活にどの程 度、満足感を与えてくれるものなのか、もう一 度、真剣に考えてみた方がよさそうです。 (The Capital Tribune Japan)