慰安婦募集の強制性を認 めた平成5(1993)年 の河野洋平官房長官談話を 引用し、慰安婦を強制連行 された「性奴隷」と認定し た96年2月の「クマラス ワミ報告書」について産経 新聞は31日、日本政府が いったん国連人権委員会(現人権理事会)に提出 しながらすぐに撤回した反論文書を入手した。文 書は報告書を「極めて不当」「無責任で予断に満 ち」「歴史の歪曲に等しい」と厳しく批判した が、非公開のため「幻の反論文書」となってい る。

文書はクマラスワミ報告書が国連人権委に提出 された直後の96年3月にまとめられたもので全 42ページ。撤回した理由について、複数の外交 筋は「反論することで、かえって慰安婦問題の議 論を起こしかねないと懸念したためだ」と述べ る。

報告書は、強制連行の証拠はみつかっておらず 「もっぱら被害者自身の口頭証言に基づく」と指 摘しながらも、河野談話を根拠として、強制連行 を認定した。

これに対し反論文書は、クマラスワミ報告書を 「偏見に基づく」「随所に主観的な誇張」などと 強調。報告書が明確な誤りの多いオーストラリア 人ジャーナリストのジョージ・ヒックス氏や、戦 時中に下関で労務調達に従事し「奴隷狩り」で慰 安婦を集めたと虚偽証言した吉田清治氏らの著作 を引用していることから、「本来依拠すべきでな い資料を無批判に採用」と批判した。

法的議論についても、報告書が日本の法的責任 を求めたことを「誤った国際法の解釈」とし、 「およそ法的には成り立たない恣意(しい)的な 解釈に基づく政治主張」と突っぱねていた。

日本政府は反論文書を撤回後、元慰安婦への支 援を行うアジア女性基金の取り組みなどを説明 し、報告書の否定を求める記述を削除した「日本 の施策」とする文書に差し替えた。

報告書の慰安婦問題に関する部分への国連人権 委の評価は「留意(テークノート)」にとどまっ た。当時の日本政府関係者は事実上、不採択の扱 いになったとの見解を示し「国際的にはぎりぎり 話を収めた」と語るが、報告書の事実誤認は正さ れなかった。

【クマラスワミ報告書】 国連人権委員会の 「女性に対する暴力」特別報告官に任命されたス リランカ出身の女性法律家、ラディカ・クマラス ワミ氏が日本や韓国を訪問し、戦争被害者らから 聞き取りし、まとめた報告書。北朝鮮には代理人 が訪れ調査した。慰安婦に関する記述は「付属文 書1」として添付された。日本政府に対し法的責 任の受け入れと被害者への補償など6項目を勧告 している。