[対談]乙武洋匡×木村草太「憲法を考える」 (4)
乙武: 先日、女性同士 のカップルが青森市役所 に婚姻届を提出し、憲法 を根拠に断られたことが ニュースになりました。 改憲というと9条ばかりが 注目されがちですが、たとえば「婚姻は、両性 の合意のみに基いて成立する」と明記されてい る24条についても、僕は改正を検討するべきだ と考えているんです。つまり、同性婚は認めら れるべきだ、と。この問題について木村さんは どうお考えですか?
木村: まず大前提としていいたいのは、じつ は憲法24条というのは同性婚を禁じているわけ ではないということです。「両性の合意のみ」 という文言が誤解を招く原因だと思いますが、 これは昔、家長の許可がなければ結婚できない 風習があったことに異を唱えたものなんです。
乙武: なんと、それは意外な事実!
木村: 近代国家として、そんな封建的な制度 ではいけないとして、男女の場合は“両性の合 意のみ”によって結婚が成立することを定めた んです。つまり、この条文の「両性」というの は「(結婚する)当人」という意味で使われて いて、同性婚を認めないとはまったく言ってな いんですよ。当時は女性の地位が低かったの で、「女性」にも「男性」と同等の権利がある と宣言するために、あえて「両性」としたのだ と思います。結構、世界的に見ても先進的な条 文だったんです。女性の権利が当然のことだと 思っている人は、意外に思うかもしれませんけ れど。
乙武: ということは、たとえ同性であって も、当人同士の意志さえあれば結婚できるとい うことですよね。これは多くの人が誤解してい るかもしれません。
木村: そうですね。同性の共同生活を法的に 保護しても、憲法24条に違反しないというのが 通説です。ですから、民法や社会保障法・租税 法を改正して、同性カップルについて異性の婚 姻カップルと同じ扱いをしてもいいはずです。 それに現行法の下でも、同性婚カップルが公序 良俗違反だといわれているわけではないので、 同性間の共同生活契約や、お互いに財産を残す 遺言が無効とされることはないでしょう。もち ろん、現状では法律婚とまったく同じ扱いには なりませんが、それは憲法ではなく法律レベル の問題なんです。
乙武: なるほど。僕はLGBTの人たちとも接 点があり、彼らを積極的に支援していきたいと 考えているのですが、それは知りませんでし た。こういう法の知識は、正確に押さえておく 必要がありますね。
木村: そもそも、考え方が違う人たちが共存 するための共通ルールが「法」です。いかなる 価値観を持っていたとしても、相手が法に則っ ているなら黙らなければならないし、法に反し ていれば従わなければならない。僕らは、そう いうゲームをやる必要がある。
乙武: 社会に一定の秩序をつくるための、重 要な指針にもなりますね。
木村: 日本人は感情的に納得することを重視 しがちですけど、道徳などの法外のルールは、 多様な価値観を共存させるためにはあまりうま くいかないんです。だから私は常々、小学校な ど早い時期からリーガルリテラシー(法知識) を身につけるための法教育を行うべきだと考え ています。
乙武: いま安倍内閣は道徳教育に力を入れて いこうとしていますが、なるほど、法教育に力 を入れていく方が、人々は生きやすくなるので はないかという提言ですね。これは考えたこと がなかった。
木村: 憲法にしても、おそらく皆さんがイ メージしているよりも日本の憲法は開かれてい て、いろんな権利が認められるようにできてい ます。たいていの権利は国民に与えられていま すから、必要なのは法を味方につけるための知 識なんだと思います。
乙武: 我々は法律というルールに基づいて生 きていながら、その法律をあまりに知らなさす ぎる。もちろん、法律家のように細かく把握す るのは難しいでしょうが、その理念のようなも のを知っておくだけでも、かなり人生における 指針となりそうですね。
(構成:友清 哲)
【今回の対談相手】 木村草太さん 1980年生まれ。東京大学法学部卒。同大学助 手を経て、首都大学東京准教授。著書に『平等 なき平等条項論』『憲法の急所』『キヨミズ准 教授の法学入門』『憲法の創造力』『テレビが 伝えない憲法の話』など。
乙武: 先日、女性同士 のカップルが青森市役所 に婚姻届を提出し、憲法 を根拠に断られたことが ニュースになりました。 改憲というと9条ばかりが 注目されがちですが、たとえば「婚姻は、両性 の合意のみに基いて成立する」と明記されてい る24条についても、僕は改正を検討するべきだ と考えているんです。つまり、同性婚は認めら れるべきだ、と。この問題について木村さんは どうお考えですか?
木村: まず大前提としていいたいのは、じつ は憲法24条というのは同性婚を禁じているわけ ではないということです。「両性の合意のみ」 という文言が誤解を招く原因だと思いますが、 これは昔、家長の許可がなければ結婚できない 風習があったことに異を唱えたものなんです。
乙武: なんと、それは意外な事実!
木村: 近代国家として、そんな封建的な制度 ではいけないとして、男女の場合は“両性の合 意のみ”によって結婚が成立することを定めた んです。つまり、この条文の「両性」というの は「(結婚する)当人」という意味で使われて いて、同性婚を認めないとはまったく言ってな いんですよ。当時は女性の地位が低かったの で、「女性」にも「男性」と同等の権利がある と宣言するために、あえて「両性」としたのだ と思います。結構、世界的に見ても先進的な条 文だったんです。女性の権利が当然のことだと 思っている人は、意外に思うかもしれませんけ れど。
乙武: ということは、たとえ同性であって も、当人同士の意志さえあれば結婚できるとい うことですよね。これは多くの人が誤解してい るかもしれません。
木村: そうですね。同性の共同生活を法的に 保護しても、憲法24条に違反しないというのが 通説です。ですから、民法や社会保障法・租税 法を改正して、同性カップルについて異性の婚 姻カップルと同じ扱いをしてもいいはずです。 それに現行法の下でも、同性婚カップルが公序 良俗違反だといわれているわけではないので、 同性間の共同生活契約や、お互いに財産を残す 遺言が無効とされることはないでしょう。もち ろん、現状では法律婚とまったく同じ扱いには なりませんが、それは憲法ではなく法律レベル の問題なんです。
乙武: なるほど。僕はLGBTの人たちとも接 点があり、彼らを積極的に支援していきたいと 考えているのですが、それは知りませんでし た。こういう法の知識は、正確に押さえておく 必要がありますね。
木村: そもそも、考え方が違う人たちが共存 するための共通ルールが「法」です。いかなる 価値観を持っていたとしても、相手が法に則っ ているなら黙らなければならないし、法に反し ていれば従わなければならない。僕らは、そう いうゲームをやる必要がある。
乙武: 社会に一定の秩序をつくるための、重 要な指針にもなりますね。
木村: 日本人は感情的に納得することを重視 しがちですけど、道徳などの法外のルールは、 多様な価値観を共存させるためにはあまりうま くいかないんです。だから私は常々、小学校な ど早い時期からリーガルリテラシー(法知識) を身につけるための法教育を行うべきだと考え ています。
乙武: いま安倍内閣は道徳教育に力を入れて いこうとしていますが、なるほど、法教育に力 を入れていく方が、人々は生きやすくなるので はないかという提言ですね。これは考えたこと がなかった。
木村: 憲法にしても、おそらく皆さんがイ メージしているよりも日本の憲法は開かれてい て、いろんな権利が認められるようにできてい ます。たいていの権利は国民に与えられていま すから、必要なのは法を味方につけるための知 識なんだと思います。
乙武: 我々は法律というルールに基づいて生 きていながら、その法律をあまりに知らなさす ぎる。もちろん、法律家のように細かく把握す るのは難しいでしょうが、その理念のようなも のを知っておくだけでも、かなり人生における 指針となりそうですね。
(構成:友清 哲)
【今回の対談相手】 木村草太さん 1980年生まれ。東京大学法学部卒。同大学助 手を経て、首都大学東京准教授。著書に『平等 なき平等条項論』『憲法の急所』『キヨミズ准 教授の法学入門』『憲法の創造力』『テレビが 伝えない憲法の話』など。