[東京 18日 ロ イター] -人口15 00人、警察官が2 人しかいない国境の 島が、100人規模 の自衛隊員を駐留させる新たな防衛拠点に 姿を変える。 防衛省は19日、尖閣諸島(中国名:釣魚 島)に近い沖縄県与那国島で基地建設に着 手、海洋進出を活発化する中国への監視を 強化する。同島経済の拡大と人口増加も促 し、南西諸島の実効支配をアピールしよう という狙いだ。 <拳銃2丁に守られた島> 与那国島は尖閣諸島の南150キロ、台湾 の東110キロにある日本最西端の島だ。 防衛省はここに陸上自衛隊の沿岸警戒部隊 を配備し、2015年度までに運用を始め る。レーダーとともに陸上自衛隊の隊員約 100人が駐留し、付近を航行する艦船や 航空機の動きを監視する。 与那国島に基地を作るのは、日本が進める 南西諸島の防衛力強化の一環。防衛省はほ かにも離島の奪還を想定した水陸機動団の 新設を決定、4月20日には那覇基地で早 期警戒機E2Cの飛行部隊を新たに編成す る。目的は、太平洋への進出をうかがい、 東シナ海で動きを活発化させている中国へ のけん制だ。 国境に近い最前線に位置しながら、与那国 島には3つの集落のうち、中心地の祖納地 区と西部の久良部地区に警察官が1人ずつ 常駐するだけだった。島から目視で確認で きるほど中国船の存在が日常化しているに もかかわらず、いまだに「拳銃2丁で守ら れている国境の島」と、町役場に勤める小 嶺長典さんは言う。 駐留する自衛隊は監視が主な任務で、高い 軍事能力を備えているわけではない。しか し、この島にレーダーを置けば、「中国本 土に近いところまで照射が届くだろう。ミ サイルの早期警戒ができるし、中国の部隊 の動きを補足できる」と、防衛研究所の元 研究員で、拓殖大学の佐藤丙午教授は話 す。 仮に中国が台湾に軍事行動を起こした場合 にも、北方から南下してくる艦船や航空機 の行動を日本はつぶさに把握できる可能性 があるという。 <TPPが経済に打撃> 自衛官の移住で経済を活性化し、過疎化の 進行を防ぐのも基地を設置する狙いの一つ だ。「国境の島の人口が減るのは、領土保 全の面からよくない。人が住んでいないと 実効支配が及ばなくなる恐れがある」と、 政府関係者は話す。 第2次大戦後の混乱期に台湾との密貿易で 栄えた与那国島の人口は、最盛期の1万2 000人から1500人まで減少した。現 在の主要産業はサトウキビ栽培と子牛の繁 殖で、住民の平均所得は220万─230 万円と全国平均を60万円ほど下回る。 しかも砂糖と牛肉は貿易自由化で関税が引 き下げられ、安い外国産が流入する可能性 がある。「畜産はオーストラリアとのEP A(経済連携協定)で関税が下がった。こ れでTPP(環太平洋連携協定)の交渉に 砂糖が入れば、もう島は終わる」と、JA おきなわ与那国の船道哲男さんは言う。 <島民の賛否は五分五分> 100人程度の自衛隊員が駐留すると、家 族を含め150─200人ほどの人口流入 が想定されている。住民税などの納税が増 えるほか、「若い隊員が来るので消費行動 にも期待している。新しい店もできるだろ う」と、町役場の小嶺さんは話す。 しかし、すべての島民がもろ手を挙げて基 地を歓迎しているわけではない。基地の誘 致を争点とした町長選は賛成派が勝利した ものの、票は大きく割れた。島民への説明 会でも反対意見が相次いだという。「賛 成、反対は今も五分五分ぐらい」と、JA おきなわ与那国の船道さんは言う。「経済 的には来たほうがいいが、基地があること で有事に攻撃を受けると懸念する声もあ る」と話す。 (久保信博 編集:北松克朗)