東京都知事選(23日告 示、2月9日投開票)に、 細川護熙元首相(76)が 出馬することを表明した。 「脱原発」で一致する小泉 純一郎元首相(71)が支援する。舛添要一元厚 労相(65)を推す自民、公明両党と全面対決す る構図だが、細川氏は20年前、東京佐川急便か らの1億円借り入れ問題を、野党に追及され、 たった9カ月で政権を投げ出した人物である。今 後、自公両党が切り込む「細川氏の闇」につい て、ジャーナリストの田村建雄氏が緊急リポート する。

細川氏「原発の問題は国の存亡に関わるという 危機感を持った。原発問題は知事として非常にや りがいのある仕事だ」

小泉氏「『原発ゼロでも日本は発展できる』と いうグループと、『原発なくして日本は発展でき ない』というグループの争いだ」

細川、小泉両氏は14日午後、都内のホテルで 会談後、記者団にこう語った。選挙戦の争点を 「脱原発」に収斂させる思惑のようだが、202 0年東京五輪を控えた首都・東京には、ほかにも 数多の課題が山積している。

加えて、医療グループ「徳洲会」側からの50 00万円受領問題で辞任した猪瀬直樹前都知事の 後任を選ぶだけに、1億円借り入れ問題を引きず る細川氏には、1300万都民のトップに立つ資 格自体が問われそうだ。

菅義偉官房長官も同日の記者会見で「(細川氏 は)東京佐川急便からのお金の問題で首相を辞任 した。それを都民がどう受け止めるかだ」と言い 切った。

選挙戦でも、1億円借り入れ問題は徹底的に追 及されそうだが、これがいかに深刻か。当時の時 代背景を解説する必要がある。

細川内閣が誕生する1年前の1992年8月、 「政界のドン」と呼ばれた自民党の金丸信副総裁 に、東京佐川急便からの5億円ヤミ献金事件が発 覚した。金丸氏は略式起訴による罰金刑と衆院議 員辞職に追い込まれ、翌93年3月、巨額脱税容 疑で東京地検特捜部に逮捕された。

東京佐川急便事件に至る過程では、竹下登元首 相に対する右翼団体のほめ殺しや、暴力団会長の 仲介疑惑なども次々に報じられ、国民は自民党政 権にウンザリしていた。政界事情通が振り返る

「そんなとき、細川氏が『肥後細川家の第17 代当主の長男』『前熊本県知事』『元朝日新聞記 者』という肩書を引っさげ、政治改革や地方分権 を訴えて日本新党を立ち上げた。同党は92年7 月の参院選と、93年7月の衆院選で躍進し、自 民党は過半数を割り込んだ。自民党を離党した新 生党の小沢一郎代表幹事が水面下で動いて、同年 8月、8党派による細川連立内閣が誕生した」

内閣支持率が70%を超える期待を集めたが、 わずか4カ月後の同年12月、細川氏自身が知事 時代、東京佐川急便から1億円を借り入れていた ことが発覚し、国会は大紛糾した。当時、細川氏 はこう釈明した。

「熊本市にある細川家の土塀などの修理費や、 知事として上京する際の滞在用に東京・元麻布に マンションを購入するため借りた。神奈川・湯河 原の別荘(=細川氏が現在、陶芸などおこなって いる隠居所)を抵当に入れ、82年9月に覚書や 契約書を締結した。借金は83年12月から91 年1月までに、年1000万円から2000万円 を返却し、知事の退職金などを充てて完済した」

ところが、これに数々の疑惑が噴出した。

マンションを購入したのは82年7月であり、 東京滞在用といいながら、実際は某有名女優Aに 賃貸していた。借金を完済した91年1月はまだ 知事在任中で、2期目の退職金は未払いだった。

この点を国会で追及されると、細川氏は「マン ションは資産を取り崩して購入したが借金も当て にした」「ホテルも使用したのでマンションは賃 貸にした」「いろいろなカネで完済した」などと 言い繕った。野党が「それなら、領収書などの資 料を提出すべきだ」と求めると、細川氏は当初、 「紛失した」などと逃げようとしたのだ。

前出の政界事情通は「野党やマスコミの厳しい 追及に耐えられず、細川氏側が出してきたのが、 発行者や判も押していない1000万円の領収書 や、日付も発行者の名も印もない1億円の根抵当 権設定契約書など。国会や国民をバカにしたよう ないい加減な資料で、いわゆる『6点セット』と 呼ばれた。細川氏は『発行者の控えだから(発行 者名や印、住所がなくても)問題ない』と強弁し た」と証言する。

細川氏が国会に提出した資料は、猪瀬氏が公開 した5000万円の借用書をまさに彷彿させる。 金額も2倍と多い。

その後も疑惑追及は続き、細川氏は94年4 月、「私個人の問題が現実に国会審議の障害に なっている」として突然、首相を辞職した。まる で疑惑解明から逃げるような無責任な退陣だっ た。

当時、問題を追及した自民党議員OBは「な ぜ、金融機関ではなく東京佐川急便から借りたの か」「なぜ、金融機関を通してではなく、現金で 返済されたのか」などと疑問を持ち続けている。

細川氏が未来を見据えて「脱原発」を訴えるな らば、過去の「政治とカネ」の問題についても、 きちんと説明する必要がありそうだ。

■田村建雄(たむら・たてお) 1950年、 茨城県生まれ。地方紙記者を経て、週刊誌専属記 者に。その後、フリージャーナリストとして、月 刊誌や週刊誌、夕刊紙などに、政治、社会問題を 中心に執筆する。著書に『産廃汚職-利権に群が る議員・業者・暴力団』(リム出版新社)、『中 国人「毒婦」の告白』(文藝春秋)など。





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