中国・内モンゴル自治区出身の文化人類学者 で、現在は日本に帰化して静岡大の教壇に立つ大 野旭(ペンネーム・楊海英)教授から近著が送ら れてきた。書名は『モンゴル人ジェノサイドに関 する基礎資料(5)』(風響社)といい、モンゴ ル人女性たちが中国人から受けた性的被害を記し た記録である。
添えられた手紙にはこうしたためられていた。
「朝日新聞による(慰安婦報道の)でっちあげ とは異なり、私は長年にわたって調査研究してき ております」「戦時ではなく、平時における中国 政府と中国人による性犯罪をこれから、国際社会 は裁くべきだ」
大野氏が調べた中国政府の公式見解によると、 文化大革命時に内モンゴル自治区では34万人が 逮捕され、2万7000人が殺害されたほか、1 2万人が身体に障害が残る傷を負った。当時、自 治区で暮らしていたモンゴル人の実に50人に1 人が殺された計算となる。
そしてその過程で、「(妊娠中の女性に対し) 手を陰部から入れて子宮から4カ月になる胎児を 引き出した」「女性の下着を脱がせて、水に漬 かった麻縄で会陰部を前後に鋸(のこぎり)のよ うに引く」(ともに同書から引用)などの残虐行 為が繰り返されたのだという。
こうした原体験を持つモンゴルでは、韓国など が非難する慰安婦問題はどう映るのか。大野氏に 聞くと、こんな答えが返ってきた。
「先の大戦では、戦勝国側も日本と似たシステ ムで女性の性を利用していた。韓国もベトナム戦 争時に戦場の性の問題を起こしており、それを封 印して慰安婦問題で日本批判のキャンペーンをす るのは国際的に公正ではない」
「中国はモンゴルだけでなくチベット、ウイグ ルでも平時に性的犯罪を行っている。それに対し て謝罪も賠償もされていない。それを省みず、日 本だけを批判するのは問題だ」
物事は第三者の立場でみると理解しやすい。韓 国の朴槿恵大統領はバイデン米副大統領と6日に 会談した際、「安倍晋三首相の歴史認識が変わら ない限り、会っても成果がない」と述べたとされ る。もっと謙虚に歴史を直視すべきだろう。
慰安婦問題では、日本の軍・官憲が組織的に韓 国人女性を強制連行した資料・証拠は何も見つ かっていない。この点について大野氏は「かなり いいかげんな話だ。一方、私の本は被害者、加害 者双方の名前入りの中国政府に事実認定された1 次資料だ」と語った。
また、大野氏は「戦後、満州などから引き揚げ た日本人居留民が朝鮮半島や中国で受けた犯罪 を、日本はずっと不問にしてきた」と指摘し、日 本のメディアのあり方にも矛先を向けた。
「慰安婦問題が政治問題化したのは朝日の偏向 報道がきっかけであり、それに一部の左派研究者 もくみした。彼らは中国が私たちマイノリティー (少数民族)に対してやったことは正面から取り 上げない。それはフェアじゃない」
大野氏の労作は、現在進行形の犯罪には頬かむ りし、事実関係の怪しい過去の掘り起こしに血道 をあげることの愚かさを教えてくれる。(政治部 編集委員)
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添えられた手紙にはこうしたためられていた。
「朝日新聞による(慰安婦報道の)でっちあげ とは異なり、私は長年にわたって調査研究してき ております」「戦時ではなく、平時における中国 政府と中国人による性犯罪をこれから、国際社会 は裁くべきだ」
大野氏が調べた中国政府の公式見解によると、 文化大革命時に内モンゴル自治区では34万人が 逮捕され、2万7000人が殺害されたほか、1 2万人が身体に障害が残る傷を負った。当時、自 治区で暮らしていたモンゴル人の実に50人に1 人が殺された計算となる。
そしてその過程で、「(妊娠中の女性に対し) 手を陰部から入れて子宮から4カ月になる胎児を 引き出した」「女性の下着を脱がせて、水に漬 かった麻縄で会陰部を前後に鋸(のこぎり)のよ うに引く」(ともに同書から引用)などの残虐行 為が繰り返されたのだという。
こうした原体験を持つモンゴルでは、韓国など が非難する慰安婦問題はどう映るのか。大野氏に 聞くと、こんな答えが返ってきた。
「先の大戦では、戦勝国側も日本と似たシステ ムで女性の性を利用していた。韓国もベトナム戦 争時に戦場の性の問題を起こしており、それを封 印して慰安婦問題で日本批判のキャンペーンをす るのは国際的に公正ではない」
「中国はモンゴルだけでなくチベット、ウイグ ルでも平時に性的犯罪を行っている。それに対し て謝罪も賠償もされていない。それを省みず、日 本だけを批判するのは問題だ」
物事は第三者の立場でみると理解しやすい。韓 国の朴槿恵大統領はバイデン米副大統領と6日に 会談した際、「安倍晋三首相の歴史認識が変わら ない限り、会っても成果がない」と述べたとされ る。もっと謙虚に歴史を直視すべきだろう。
慰安婦問題では、日本の軍・官憲が組織的に韓 国人女性を強制連行した資料・証拠は何も見つ かっていない。この点について大野氏は「かなり いいかげんな話だ。一方、私の本は被害者、加害 者双方の名前入りの中国政府に事実認定された1 次資料だ」と語った。
また、大野氏は「戦後、満州などから引き揚げ た日本人居留民が朝鮮半島や中国で受けた犯罪 を、日本はずっと不問にしてきた」と指摘し、日 本のメディアのあり方にも矛先を向けた。
「慰安婦問題が政治問題化したのは朝日の偏向 報道がきっかけであり、それに一部の左派研究者 もくみした。彼らは中国が私たちマイノリティー (少数民族)に対してやったことは正面から取り 上げない。それはフェアじゃない」
大野氏の労作は、現在進行形の犯罪には頬かむ りし、事実関係の怪しい過去の掘り起こしに血道 をあげることの愚かさを教えてくれる。(政治部 編集委員)
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