前回述べたように、歴史問題で中国や韓国にや られ続けた根本的責任は、政治権力にある。ただ し、政治権力をそのように仕向けた勢力が、わが 国には強固に存在することを見逃してはならな い。それはマスコミを中心とする、中国や韓国の 主張に積極的に同調して、常に歴史の反省を強要 する人々である。

それらの勢力のことを、保守派の人々は「左 翼」だと捉えているが、そのような理解は実は正 しくない。その中には自民党の政治家もおり、日 本のカトリックの最高首脳である司教団もいるか ら、左翼だけでなく広汎な人々に及んでいる。

また、1990年代から保守の人々が、新しい 歴史教科書運動を起こしたが、反省派の歴史の見 方を「自虐史観」と呼んで批判した。この自虐史 観なる名称は、便利なものではあるが、私として は大きな違和感を覚える。なぜなら、自虐史観派 の人々は、自分自身に少しも心の痛みを感じてい ないからである。

自虐の「虐」とは「いじめ」であるが、その対 象に自分は含まれない。対象は歴史を反省しな い、誤れる日本人なのである。従って、正しくは 「虐日史観」と表現すべきものである。

では、彼らはなぜ「虐日」に夢中になるのか。 それは自分を良心的な人間であると美化したいか ら、としか思えない。他人を貶めることによっ て、自己を美化するのであるから、それは完全に 偽善そのものである。虐日と偽善の合体であるか ら、彼らの考え方の正体は、「虐日偽善」である と私は断定する。

中国人・朝鮮人の歴史問題を利用した日本攻撃 も、もちろん虐日偽善であるが、それは外国の人 間がやっていることである。しかし、日本人が同 胞である日本人を、誹謗・中傷し、偏見・差別・ 迫害を行うのは、世界的に見ても極めて異常な現 象と言わなければならない。だが、同胞を迫害す る行為であるがゆえに、かえって外見的には、良 心的に反省しているように見えてしまうのであ る。

この虐日偽善に奔走する虐日日本人の典型こ そ、組織で言えば朝日新聞、個人で言えば大江健 三郎氏であるといえる。

この虐日日本人が同胞を喜々としていじめまく る現象を、どのように理解できるだろうか。私は それは、ドメスティック・バイオレンス(DV) だと考える。DVは普通、「家庭内暴力」と訳さ れるが、それは国家や民族の規模においても考え ることができる。

結局、虐日日本人の行為こそ、日本民族を標的 とした、言論によるすさまじい暴力であり、今流 行の言葉で言えば、ヘイトスピーチに他ならな い。彼らが非難して止まないヘイトスピーチを、 自分自身が熱狂的にやっているのである。 =お わり

■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学 教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3 月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同 年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史 料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、 アジアの民族問題などを中心に研究する。200 6年3月、定年退職。現在、明治学院大学非常勤 講師や、月刊誌でコラムを執筆する。著書に「虐 日偽善に狂う朝日新聞」(日新報道)など。





Android携帯からの投稿