12日に閉幕した中国共産党中央委員会(第1 8期3中総会)は、まったく期待外れの結果と なった。政治・経済と社会全般が危機的な状況に ある中、今回の会議は当初、国有企業の独占打破 や土地売買の容認など、「大胆な改革」の提起に よって危機打開の突破口となるのではないか、と 期待されていた。

だが、採択したコミュニケは結局「改革」とい う言葉の空疎な連呼に終始する以外に、具体案や 日程表を何一つ打ち出すことなく、改革断行の気 概をまったく感じさせなかった。「改革」は単な る見せかけのパフォーマンスに終わったのであ る。

これではまるで改革の“やるやる詐欺”であろ う。会議閉幕翌日、上海と香港の株式市場で失望 売りが広がり、株価が下落したことは市場の正直 な反応ではないか。

なぜ改革ができないのだろうか。今の体制下で 作り上げてきた利権構造が改革によって失われる ことを恐れる党内勢力の抵抗が大きかったことは 事実だ。

9日の全体会議(全会)開幕から数日間、中国 の官製メディアが会議進行状況を一切報じなかっ たことから、会議中に激しい対立と論争が起きた ことが分かる。おそらく、既存の利権構造に深く 関わっている江沢民派の幹部たちが改革に猛反発 したのではないか。

それ以外に、改革を骨抜きにしたもうひとつの 大きな要因はやはり、共産党総書記(国家主席) 習近平氏その人の態度であると思う。

13日、中央テレビ局のニュースサイトは、習 氏が全会で決定した改革方針をめぐり「改革は一 度に成し遂げることはできない」と述べていたと 伝えた。全会閉幕の翌日に、最高指導者の発言と してそれが報じられたことの意味は実に大きい。

「上に政策あれば下に対策あり」の中国では、 たとえ最高指導部が「改革を急げ」と大号令をか けたとしても、やる気のない官僚たちがその通り に動くことはまずない。なのに、最高指導者の習 氏自身が改革に関して「一度に達成できない」と いう消極的な発言をすれば、全国の幹部たちは当 然、「改革は別に急がなくても良い」と受け止め るに違いない。

つまり、「改革」を連呼したコミュニケを横目 にして、習氏が間をおかず改革の推進に事実上の ブレーキをかけた。改革なんかやりたくもないと いうのは彼の本心ではないか。

なぜなら、習氏の政治的支持基盤のひとつは改 革反対の江沢民派と既存利益保持者の太子党の 面々である。それに加えて、国有大企業の独占構 造や土地に対する国家の支配は習氏が死守しよう とする独裁体制の経済的基盤そのものであるか ら、それらにメスを入れるような改革を進める気 は当然ない。

改革をやらない代わりに、習氏が大急ぎでやろ うとしているのは、独裁体制強化のための国家安 全委員会の創設だ。それが出来上がれば、習氏自 身は絶大な権力を手に入れるだけでなく、国内の あらゆる不満と反発を簡単に抑圧できる。

つまり、習氏は改革の推進によって社会的矛盾 を解消する道を自ら断ってから、力の論理で民衆 の反抗を抑え付け、政権の安泰を図る道を選んだ のである。

だが、改革の放棄は結局大きな失望とよりいっ そうの反発を招き、力任せの抑圧は反抗運動のさ らなる激化を呼ぶに違いない。

習近平政権は、国内問題を平和的に解決する最 後のチャンスを逸した。後に残されるのは、改革 を志す党内勢力による政変の断行か、もしくは民 衆による革命的反乱の暴発だろう。

いずれにしても、習政権下の中国が今後、激動 の「乱世」に突入していくのは間違いないよう だ。



【プロフィル】石平

せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北 京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院 文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経 て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など 著書多数。平成19年、日本国籍を取得。



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