韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が歴史づい ている。とくに外遊のたびに各国の首脳やメディ アに「日本は正しい歴史認識を持て」と歴史問題 を“説教”して回っている。反日・左派で知られた 盧武鉉(ノ・ムヒョン)・元大統領も在任中、当 時の米国のブッシュ大統領やライス国務長官との 会談の際、領土問題などで日本批判の「長い講 義」を「情熱的」に展開して米側のひんしゅくを 買っている。

近年の韓国大統領の“告げ口外交”は目に余る が、それだけ韓国の外交姿勢が軽くなっているの かもしれない。

朴大統領の歴史好き(?)は、今週もベトナム 帰りのプーチン・ロシア大統領をソウルに迎えて も発揮され、日本に対し「歴史に逆行する言動」 などと間接的ながら非難を繰り返している(13 日)。

翌日には政府機関の「国立外交院創立50周年 記念国際セミナー」で演説し、北東アジアの協力 と対話、信頼関係構築のために日中韓3国共同の 歴史教科書を作ってはどうかと提案している。

しかし歴史、歴史と言っているわりには歴史に ついて随分、甘い感じがする。「日中韓で共通の 歴史認識を」という発想だが、その前に韓国自体 が今、国内では歴史教科書をめぐって左右両派、 与野党が激しく対立し大もめしているのだ。

この論争では日本統治時代の記述もさることな がら、北朝鮮に対する評価が大きな争点になって いる。しかも朴大統領の父が指導者だった「朴正 煕(チョンヒ)時代」の評価をめぐっても肯定・ 否定の論争が絶えない。

保守派は左翼・進歩派に対し「北に甘い」とい い、左翼・進歩派は保守派に対し「朴正煕に甘 い」といって非難し合っている。朴大統領自身、 野党陣営による父に対する執拗(しつよう)な“批 判的歴史認識”に大いに悩まされてきた。

韓国の歴史教科書問題はそれまで国定歴史教科 書(1種類)が、検定制度の導入で民間の出版社 による複数に変わったことが背景にある。近年の 歴史学界での左派支配を反映し、検定教科書のほ とんどが北朝鮮に甘く朴正煕に厳しい内容になっ てしまい、そこで保守派が「新しい歴史教科書作 り」に立ち上がったというわけだ。

歴史認識をめぐって国内でこんな調子だから、 まして超独裁国家で学問の自由など想像もできな い北朝鮮との間で、共通の歴史認識などありえな い。

国内で難しく、同じ民族同士でも不可能な共通 の歴史認識による共同の歴史教科書を、外国それ も共産党支配下の中国を含めて3国一緒に作ろう というのが朴槿恵提案である。

ロマンあるいは理想主義として「遠い将来いつ かは…」というのならともかく、真面目な話とし てはあまりにも甘すぎる。

実は数年前、日韓の民間の左派系学者や運動家 らが中国と一緒になって3国共同編集と銘打った 歴史教科書『未来を開く歴史-東アジア3国の近 現代史』を出版したことがある。しかし反日記述 では一致したものの、朝鮮戦争をめぐる歴史認識 がばらばらなどでまともには評価されなかった。

朴大統領の歴史認識で話題になったのが、抗日 独立運動記念日の「3・1節」演説で語った「加 害者と被害者の歴史的立場は千年たっても変わら ない」という発言だ。こんなに被害者意識にとら われていては、剛毅(ごうき)のリアリストで 「成せば成る」を国民的スローガンに日本に追い つき追い越せでがんばった父・朴正煕の歴史認識 に比べ軟弱すぎるのではないだろうか。(ソウ ル・黒田勝弘)



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