海外で注目されているニュースなのに、なぜ か日本では取り上げられないニュースがある。 軽視されているのか、なんらかの理由で無視さ れているのか。あるいは特段の理由はなく、単 に意味を読み取るが難しいだけなのか。理由は 単一ではないだろうが、そういうニュースがあ ればできるだけ、ブログで拾うようにしてい る。このところのニュースでは、フランスでロ マの女学生が学校で拘束され強制送還された事 件が半ば日本では無視されていた。 日本でまったく報道されなかったわけではな い。だが、時系列を整理して、日本での着目度 や、何に着目した報道だったかを検討してみる と興味深い。 この種類のニュースで日本語で報道されるこ とが多いのは、AFPによるものだ。今回も17日 に報道があった。「15歳ロマの少女を学校行事 中に拘束・送還、仏閣内に亀裂」(参照)であ る。
【10月17日 AFP】フランスで、ロマ民族 の15歳の少女が校外での学校行事に参加 中にスクールバスから降ろされて警察に 身柄を拘束され、その日のうちにコソボ に強制送還されたことが分かり、不法移 民の取り扱いをめぐって仏政府内部で閣 僚が対立する事態となっている。 発端は今月9日、東部の町ルビエ (Levier)でロマ民族のレオナルダ・ディ ブラニ(Leonarda Dibrani)さん(15)が 学校行事でバス移動中に警察に身柄を拘 束されたことだ。この事件は今週になっ て初めて、就学年齢の子どもの強制退去 処分に反対するNGO団体「国境なき教育 網(Network for Education without Borders、RESF)」によって明らかにされ た。 当日の詳しい状況は不明だが、その場 に居合わせた教師の話と内務省の主張は いずれも、レオナルダさんが他の生徒た ちの目の前で拘束されたわけではないと の点は一致している。しかしこの教師が RESFを通じて公表したところによれば、 他の生徒たちは何が起きているのかを完 全に認識しており、ひどいショックを受 けているという。 レオナルダさん本人は次のように当時 の様子を説明している。「友達も先生も みんな泣いていました。中には、警察が 私を捜していると知って『誰か殺した の』とか『何か盗んだの』とか直接聞い てくる子もいました。バスまでやって来 た警察は私に降りるよう言い、それから コソボに帰らなければならないと告げま した」
事件があったのは、9日のことだが、こ れが大きなニュースとなったきっかけは 同報道にあるように「国境なき教育網 (Network for Education without Borders、RESF)」が「今週」明らかにし たことによる。今週は14日以降である。 ニュースになる理由は、誰でもわかる ように就学中の学生を強制送還するとい うようなことがフランスのような先進国 で行われたこと、また行われているとい うことである。 だが、このニュースにはもう少し複雑 な陰影がある。この点もAFPが触れてい る。フランス内政の問題である。あとで 触れるがEUの問題でもある。
■割れる仏政界、「学校は聖域」と与党 左派 バンサン・ペイヨン(Vincent Peillon) 国民教育相は「学校は聖域であるべき だ。われわれは権利と人間性に基づいた 指針を保持しなければならない」と主張 している。 これに対しマニュエル・バルス (Manuel Valls)内相は、レオナルダさん とその両親、1歳~17歳のきょうだい5人 の強制送還は正しい措置だったと反論す る一方、対応に問題がなかったかどうか 見直すよう関係各所に命じた。同内相の 説明によると、一家の強制送還は既存の 手続きに沿ったもので、亡命申請が却下 されたためだという。 与党内の左派勢力から噴出した強い批 判を受け、ジャンマルク・エロー(Jean-Marc Ayrault)首相もレオナルダさんの権 利が侵害されたことが確認されれば、一 家がフランスに戻れるように手配すると 約束した。 一方、野党議員はバルス内相の見解を 支持し、強制送還処分が取り消されれば フランスが不法移民を歓迎しているとの 誤ったメッセージを発信することになる と警告している。
ごく簡単に言うと、「与党内の左派勢 力から噴出した強い批判」ということか らわかるように、オランド政権によるロ マ排斥をバルス内相が汚れ役として引き 受けているということだ。 この問題に注視してきた人は知ってい るように、ロマ排斥を強行に進めてきた のは、右派とも見られることもあったサ ルコジ政権だったので、今回左派勢力と しても事態に困惑しているかに見える。 が、左派勢力にはあとで述べるが、別の 思惑もありそうだ。 今回のニュースがさらに大きな話題と なったのは、AFP報道の翌日の18日の、 ロマの少女の強制送還に抗議する高校生 のデモが着目されたからだった。 この話題は、日本の報道を見渡すと東 京新聞系が19日朝刊で拾っていた。「移 民送還 仏デモ拡大 政府批判、全土 に」(参照)。
【パリ=野村悦芳】フランスで今月、少 数民族ロマの女子中学生が、同級生の前 で警察に連行され、その後、国外退去を 強いられた。オランド大統領の左派政権 に対し人権軽視の批判が起き、パリなど では処分に抗議する高校生らが十八日、 デモを繰り広げた。一方で、反移民の極 右政党、国民戦線が支持を拡大してお り、フランスが抱える移民問題の難しさ が浮き彫りになっている。 パリ中心部では約二十校の生徒が、労 組メンバーらとともに、政府批判を連呼 した。高校生の大規模デモは十七日から フランス全土に広がっている。
この時点で三点、注目したい。一つ は、ロマ学生排斥といった政治問題に、 フランスの高校生が意識的に参加してい ること。二点めは、労働組合などがオラ ンド政権を明確に批判していること。三 点目は、右派政党がロマ排除を支持して いることだ。記事では「反移民の極右政 党、国民戦線」と表現されているが、こ の動向は「極右」とのみだと言いがた い。同記事では汚れ役のバルス内相の支 持として描かれている。
仏国内に二万人以上いるとされるロマ は、不法占拠の土地に集団で住むケース が多い。バルス内相は最近も厳しい態度 で臨む方針を示し、左派から批判を受け たが、政治家の好感度を問う世論調査で は一位となった。
ロマ排斥の動向はフランス国民の多数 に支持されている現状がある。 さて、日本での報道という観点で時系 列に意識してこの事件を見直して、興味 深いのは、どの時点で、どこがどのよう に報道を開始するかである。 全体傾向として、日本の場合、時事・ 共同などの外信(現地記事のサマリーの ようなレベル)を大手紙が追うことが多 く、政治的な意図がなければベタ記事的 に扱われる。これに並行してNHKが独自 に取り上げることがあり、むしろNHKの 動向が独自の視点があり興味深い。今回 はどうだったか。 NHKの最初の報道は「10月19日 9時8 分」付けの「仏 移民女子生徒拘束に批判 強まる」(参照)だったようだ。
フランスで、旧ユーゴスラビアのコソ ボ出身の15歳の少女が通っていた中学 校で、不法滞在だとして警察に身柄を拘 束され、強制送還されていたことが明ら かになり、教育現場での当局の対応に抗 議デモが行われるなど批判が強まってい ます。 フランス東部のルビエで今月9日、コ ソボ出身の15歳の中学校の女子生徒 が、通っていた学校の敷地内で不法滞在 だとして警察に身柄を拘束され、その日 のうちに強制送還されました。 今週、地元のNGOが警察の対応を非難 しこの問題を明らかにすると、フランス 国内で大きな反響を呼び、教育の現場に 警察が踏み込むのは許されないとの批判 が広がっています。 18日、パリでは高校生らがデモを行 い、参加した高校生たちは「フランスは 人権の国なのにもはや人権などない」と 抗議の声を上げていました。 この問題は政界でも大きな議論となっ ていて、政府は警察の対応が適切だった か詳しい調査を進め、不適切だったと判 断した場合には強制送還の措置をいった ん取り消すとしています。 この少女の家族は、地元の当局から滞 在許可の申請を却下されていて、右派な どからは、強制送還の措置を支持する意 見も出るなど、移民政策を巡る議論に発 展しかねない状況で、政府は対応に苦慮 しています。
NHK報道はAFPに2日に遅れた形になっ ている。この時点でNHKが取り上げた背 景には、18日の高校生デモがきっかけ だったことが伺われる。また、フランス 政治の背景にも若干言及がある。簡単に まとめるなら、高校生デモといった反応 がなければNHKは取り上げなかったかも しれない。NHKの着目点は人権とはいい がたい。 NHK報道で興味深いのは、その前日の 18日にフランス極右政党を取り上げてい ることだ。「フランス 極右政党支持が拡 大」(参照)。
フランスでは、世論調査でオランド大 統領に対抗するリーダーとして極右政党 の党首がふさわしいと答えた人が全体の 半数近くに上り、オランド政権が経済建 て直しの効果的な道筋を示すことができ ないなか、極右政党への支持が拡大して います。 フランスのテレビ局などは16日、オ ランド大統領に対抗するリーダーとして 主要な野党の中で誰を選ぶか、およそ1 000人の有権者を対象に世論調査を行 いました。その結果、反移民や反ユーロ を掲げる極右政党「国民戦線」の女性党 首ルペン氏と答えた人が全体の半数近い 46%に上り、2番目に多かった最大野 党所属で前首相のフィヨン氏の18%を 大きく引き離しました。 ルペン氏は、おととし、「国民戦線」の 創設者である父から党首の座を引き継ぐ と、愛国主義的な主張を堅持しつつも4 5歳という若さとソフトなイメージで、 若者や労働者などを中心に支持を広げて います。 国民戦線は、今月に入って、フランス 南部の県議会議員の補欠選挙で、候補者 がおよそ54%の圧倒的な得票率で当選 したほか、来年のヨーロッパ議会に関す る世論調査でも、回答者のおよそ4分の 1の支持を集め、与党や最大野党を上回 りました。 ヨーロッパの信用不安がくすぶり続け るなか、オランド政権は、経済建て直し の効果的な道筋を示すことができておら ず、国民の与党や最大野党への不満を背 景に極右政党への支持が拡大していま す。
マリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)の動 向はそれ自体としては興味深いが、この NHK報道では18日の時点で、ロマ女学生 排斥の動向との関連は、取り上げられて いない。しかし当然ながら、今回のロマ 女学生排斥事件とジャンマリー・ルペン 率いる国民戦線の動向には関連があり、 フランスの政局とも関連してくる。今回 学生運動の背景と見られる左派勢力も、 ジャンマリー・ルペンの動向との文脈に あると見てよいだろう。 当の事件の現状だが、すでにバルス内 相に汚れ役を押しつけるだけではすまな くなり、すでにオランド大統領が動き出 している。この点については、NHKで今 日の報道があった。「学校で生徒拘束 フ ランスの移民政策に波紋」(参照)。
フランスで、旧ユーゴスラビアのコソ ボ出身の中学生が、不法滞在だとして学 校で身柄を拘束され強制送還された問題 で、オランド大統領は19日違法な点は なかったとしながらも復学を認める方針 を明らかにしました。 これは今月9日、フランス東部のルビ エで、不法滞在だとして国外退去処分を 受けたコソボ出身の一家のうち15歳の 女子中学生が学校の敷地内で警察に身柄 を拘束され、その日のうちに強制送還さ れたもので、この措置に反対するデモが フランス各地で起きたほか、警察が教育 現場に入って生徒を連行するのは行き過 ぎだという批判が出ています。 フランスのオランド大統領は19日、 テレビ演説を行い、「調査の結果、強制 送還の措置自体に問題はなかった」とす る一方、女子生徒が学業を続けたいと望 む場合には、本人に限ってフランスに戻 ることを認める方針を明らかにしまし た。 オランド大統領の異例の演説には不法 な移民を取り締まる政策は堅持すると同 時に人道面にも配慮する姿勢を示すこと で事態の幕引きを図りたいおもわくがあ るとみられます。 しかし国内では家族とともにコソボに 残るのか、一人でフランスに戻るのかと いう選択を中学生に迫るのは酷だという 声や、国外退去処分をくつがえせば移民 政策が揺らぎかねないという声もあり、 今回の事態はフランスの移民政策に波紋 を投げかけています。
NHK報道の要点としては、オランド政 権による「フランスの移民政策」のあり かたであり、左派政権の人権意識の問題 は二次的な扱いになっている。さらに、 個別に欧州のロマ問題はあまりNHKとし ては注視されていない。 今回の問題をどのように見るかは、意 外に難しい。基本は人権問題であると 言ってもよいし、NHKのようにフランス という特定国家における移民政策問題と してもよいだろう。左派勢力による政局 の文脈もある。 が、こうした日本の報道で欠落してい るかのように見える前提、そもそもEU とは何かということだ。 言われれば誰も気がつくだろうが、E Uとはその内部での市民の移動が自由で ある共同体なのである。この理念と、フ ランスの国内法との整合が問われてい る。なかでもロマだけが排斥される実態 に大きな矛盾がある。 ロマは「移住の民」と言われている が、実際にはその95%は定住している (参照)。その意味では、ロマというく くりではなく、個別に強制送還する国家 とされる国家の市民の問題であるはずで あり、それが問題という地平に上がらな いようにするがそもそもEUの理念だっ た。 今回の事例では、女学生の強制送還先 はコソボであり、コソボはEU加盟を目 指して安定化連合協定締結に向かってい る(参照)。今回の事件から暗示される のは、個別の事例には個別の背景がある としても、大枠としては、コソボがEU ではないからロマが「強制送還」されて いる。 EUはどうあるべきか。理念は明確だ が、現実では、フランス国民の大半が今 回の事態でもロマ排斥を支持している実 態がある。 これをフランスがどのように解消して いくのかは注目されるが、現状のオラン ド政権の対応を見るかぎり、実態はサル コジ政権と同様なナショナリズムに向 かっている。つまり、EUの理念の内実 が徐々に崩壊していく過程のように見え る。
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【10月17日 AFP】フランスで、ロマ民族 の15歳の少女が校外での学校行事に参加 中にスクールバスから降ろされて警察に 身柄を拘束され、その日のうちにコソボ に強制送還されたことが分かり、不法移 民の取り扱いをめぐって仏政府内部で閣 僚が対立する事態となっている。 発端は今月9日、東部の町ルビエ (Levier)でロマ民族のレオナルダ・ディ ブラニ(Leonarda Dibrani)さん(15)が 学校行事でバス移動中に警察に身柄を拘 束されたことだ。この事件は今週になっ て初めて、就学年齢の子どもの強制退去 処分に反対するNGO団体「国境なき教育 網(Network for Education without Borders、RESF)」によって明らかにされ た。 当日の詳しい状況は不明だが、その場 に居合わせた教師の話と内務省の主張は いずれも、レオナルダさんが他の生徒た ちの目の前で拘束されたわけではないと の点は一致している。しかしこの教師が RESFを通じて公表したところによれば、 他の生徒たちは何が起きているのかを完 全に認識しており、ひどいショックを受 けているという。 レオナルダさん本人は次のように当時 の様子を説明している。「友達も先生も みんな泣いていました。中には、警察が 私を捜していると知って『誰か殺した の』とか『何か盗んだの』とか直接聞い てくる子もいました。バスまでやって来 た警察は私に降りるよう言い、それから コソボに帰らなければならないと告げま した」
事件があったのは、9日のことだが、こ れが大きなニュースとなったきっかけは 同報道にあるように「国境なき教育網 (Network for Education without Borders、RESF)」が「今週」明らかにし たことによる。今週は14日以降である。 ニュースになる理由は、誰でもわかる ように就学中の学生を強制送還するとい うようなことがフランスのような先進国 で行われたこと、また行われているとい うことである。 だが、このニュースにはもう少し複雑 な陰影がある。この点もAFPが触れてい る。フランス内政の問題である。あとで 触れるがEUの問題でもある。
■割れる仏政界、「学校は聖域」と与党 左派 バンサン・ペイヨン(Vincent Peillon) 国民教育相は「学校は聖域であるべき だ。われわれは権利と人間性に基づいた 指針を保持しなければならない」と主張 している。 これに対しマニュエル・バルス (Manuel Valls)内相は、レオナルダさん とその両親、1歳~17歳のきょうだい5人 の強制送還は正しい措置だったと反論す る一方、対応に問題がなかったかどうか 見直すよう関係各所に命じた。同内相の 説明によると、一家の強制送還は既存の 手続きに沿ったもので、亡命申請が却下 されたためだという。 与党内の左派勢力から噴出した強い批 判を受け、ジャンマルク・エロー(Jean-Marc Ayrault)首相もレオナルダさんの権 利が侵害されたことが確認されれば、一 家がフランスに戻れるように手配すると 約束した。 一方、野党議員はバルス内相の見解を 支持し、強制送還処分が取り消されれば フランスが不法移民を歓迎しているとの 誤ったメッセージを発信することになる と警告している。
ごく簡単に言うと、「与党内の左派勢 力から噴出した強い批判」ということか らわかるように、オランド政権によるロ マ排斥をバルス内相が汚れ役として引き 受けているということだ。 この問題に注視してきた人は知ってい るように、ロマ排斥を強行に進めてきた のは、右派とも見られることもあったサ ルコジ政権だったので、今回左派勢力と しても事態に困惑しているかに見える。 が、左派勢力にはあとで述べるが、別の 思惑もありそうだ。 今回のニュースがさらに大きな話題と なったのは、AFP報道の翌日の18日の、 ロマの少女の強制送還に抗議する高校生 のデモが着目されたからだった。 この話題は、日本の報道を見渡すと東 京新聞系が19日朝刊で拾っていた。「移 民送還 仏デモ拡大 政府批判、全土 に」(参照)。
【パリ=野村悦芳】フランスで今月、少 数民族ロマの女子中学生が、同級生の前 で警察に連行され、その後、国外退去を 強いられた。オランド大統領の左派政権 に対し人権軽視の批判が起き、パリなど では処分に抗議する高校生らが十八日、 デモを繰り広げた。一方で、反移民の極 右政党、国民戦線が支持を拡大してお り、フランスが抱える移民問題の難しさ が浮き彫りになっている。 パリ中心部では約二十校の生徒が、労 組メンバーらとともに、政府批判を連呼 した。高校生の大規模デモは十七日から フランス全土に広がっている。
この時点で三点、注目したい。一つ は、ロマ学生排斥といった政治問題に、 フランスの高校生が意識的に参加してい ること。二点めは、労働組合などがオラ ンド政権を明確に批判していること。三 点目は、右派政党がロマ排除を支持して いることだ。記事では「反移民の極右政 党、国民戦線」と表現されているが、こ の動向は「極右」とのみだと言いがた い。同記事では汚れ役のバルス内相の支 持として描かれている。
仏国内に二万人以上いるとされるロマ は、不法占拠の土地に集団で住むケース が多い。バルス内相は最近も厳しい態度 で臨む方針を示し、左派から批判を受け たが、政治家の好感度を問う世論調査で は一位となった。
ロマ排斥の動向はフランス国民の多数 に支持されている現状がある。 さて、日本での報道という観点で時系 列に意識してこの事件を見直して、興味 深いのは、どの時点で、どこがどのよう に報道を開始するかである。 全体傾向として、日本の場合、時事・ 共同などの外信(現地記事のサマリーの ようなレベル)を大手紙が追うことが多 く、政治的な意図がなければベタ記事的 に扱われる。これに並行してNHKが独自 に取り上げることがあり、むしろNHKの 動向が独自の視点があり興味深い。今回 はどうだったか。 NHKの最初の報道は「10月19日 9時8 分」付けの「仏 移民女子生徒拘束に批判 強まる」(参照)だったようだ。
フランスで、旧ユーゴスラビアのコソ ボ出身の15歳の少女が通っていた中学 校で、不法滞在だとして警察に身柄を拘 束され、強制送還されていたことが明ら かになり、教育現場での当局の対応に抗 議デモが行われるなど批判が強まってい ます。 フランス東部のルビエで今月9日、コ ソボ出身の15歳の中学校の女子生徒 が、通っていた学校の敷地内で不法滞在 だとして警察に身柄を拘束され、その日 のうちに強制送還されました。 今週、地元のNGOが警察の対応を非難 しこの問題を明らかにすると、フランス 国内で大きな反響を呼び、教育の現場に 警察が踏み込むのは許されないとの批判 が広がっています。 18日、パリでは高校生らがデモを行 い、参加した高校生たちは「フランスは 人権の国なのにもはや人権などない」と 抗議の声を上げていました。 この問題は政界でも大きな議論となっ ていて、政府は警察の対応が適切だった か詳しい調査を進め、不適切だったと判 断した場合には強制送還の措置をいった ん取り消すとしています。 この少女の家族は、地元の当局から滞 在許可の申請を却下されていて、右派な どからは、強制送還の措置を支持する意 見も出るなど、移民政策を巡る議論に発 展しかねない状況で、政府は対応に苦慮 しています。
NHK報道はAFPに2日に遅れた形になっ ている。この時点でNHKが取り上げた背 景には、18日の高校生デモがきっかけ だったことが伺われる。また、フランス 政治の背景にも若干言及がある。簡単に まとめるなら、高校生デモといった反応 がなければNHKは取り上げなかったかも しれない。NHKの着目点は人権とはいい がたい。 NHK報道で興味深いのは、その前日の 18日にフランス極右政党を取り上げてい ることだ。「フランス 極右政党支持が拡 大」(参照)。
フランスでは、世論調査でオランド大 統領に対抗するリーダーとして極右政党 の党首がふさわしいと答えた人が全体の 半数近くに上り、オランド政権が経済建 て直しの効果的な道筋を示すことができ ないなか、極右政党への支持が拡大して います。 フランスのテレビ局などは16日、オ ランド大統領に対抗するリーダーとして 主要な野党の中で誰を選ぶか、およそ1 000人の有権者を対象に世論調査を行 いました。その結果、反移民や反ユーロ を掲げる極右政党「国民戦線」の女性党 首ルペン氏と答えた人が全体の半数近い 46%に上り、2番目に多かった最大野 党所属で前首相のフィヨン氏の18%を 大きく引き離しました。 ルペン氏は、おととし、「国民戦線」の 創設者である父から党首の座を引き継ぐ と、愛国主義的な主張を堅持しつつも4 5歳という若さとソフトなイメージで、 若者や労働者などを中心に支持を広げて います。 国民戦線は、今月に入って、フランス 南部の県議会議員の補欠選挙で、候補者 がおよそ54%の圧倒的な得票率で当選 したほか、来年のヨーロッパ議会に関す る世論調査でも、回答者のおよそ4分の 1の支持を集め、与党や最大野党を上回 りました。 ヨーロッパの信用不安がくすぶり続け るなか、オランド政権は、経済建て直し の効果的な道筋を示すことができておら ず、国民の与党や最大野党への不満を背 景に極右政党への支持が拡大していま す。
マリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)の動 向はそれ自体としては興味深いが、この NHK報道では18日の時点で、ロマ女学生 排斥の動向との関連は、取り上げられて いない。しかし当然ながら、今回のロマ 女学生排斥事件とジャンマリー・ルペン 率いる国民戦線の動向には関連があり、 フランスの政局とも関連してくる。今回 学生運動の背景と見られる左派勢力も、 ジャンマリー・ルペンの動向との文脈に あると見てよいだろう。 当の事件の現状だが、すでにバルス内 相に汚れ役を押しつけるだけではすまな くなり、すでにオランド大統領が動き出 している。この点については、NHKで今 日の報道があった。「学校で生徒拘束 フ ランスの移民政策に波紋」(参照)。
フランスで、旧ユーゴスラビアのコソ ボ出身の中学生が、不法滞在だとして学 校で身柄を拘束され強制送還された問題 で、オランド大統領は19日違法な点は なかったとしながらも復学を認める方針 を明らかにしました。 これは今月9日、フランス東部のルビ エで、不法滞在だとして国外退去処分を 受けたコソボ出身の一家のうち15歳の 女子中学生が学校の敷地内で警察に身柄 を拘束され、その日のうちに強制送還さ れたもので、この措置に反対するデモが フランス各地で起きたほか、警察が教育 現場に入って生徒を連行するのは行き過 ぎだという批判が出ています。 フランスのオランド大統領は19日、 テレビ演説を行い、「調査の結果、強制 送還の措置自体に問題はなかった」とす る一方、女子生徒が学業を続けたいと望 む場合には、本人に限ってフランスに戻 ることを認める方針を明らかにしまし た。 オランド大統領の異例の演説には不法 な移民を取り締まる政策は堅持すると同 時に人道面にも配慮する姿勢を示すこと で事態の幕引きを図りたいおもわくがあ るとみられます。 しかし国内では家族とともにコソボに 残るのか、一人でフランスに戻るのかと いう選択を中学生に迫るのは酷だという 声や、国外退去処分をくつがえせば移民 政策が揺らぎかねないという声もあり、 今回の事態はフランスの移民政策に波紋 を投げかけています。
NHK報道の要点としては、オランド政 権による「フランスの移民政策」のあり かたであり、左派政権の人権意識の問題 は二次的な扱いになっている。さらに、 個別に欧州のロマ問題はあまりNHKとし ては注視されていない。 今回の問題をどのように見るかは、意 外に難しい。基本は人権問題であると 言ってもよいし、NHKのようにフランス という特定国家における移民政策問題と してもよいだろう。左派勢力による政局 の文脈もある。 が、こうした日本の報道で欠落してい るかのように見える前提、そもそもEU とは何かということだ。 言われれば誰も気がつくだろうが、E Uとはその内部での市民の移動が自由で ある共同体なのである。この理念と、フ ランスの国内法との整合が問われてい る。なかでもロマだけが排斥される実態 に大きな矛盾がある。 ロマは「移住の民」と言われている が、実際にはその95%は定住している (参照)。その意味では、ロマというく くりではなく、個別に強制送還する国家 とされる国家の市民の問題であるはずで あり、それが問題という地平に上がらな いようにするがそもそもEUの理念だっ た。 今回の事例では、女学生の強制送還先 はコソボであり、コソボはEU加盟を目 指して安定化連合協定締結に向かってい る(参照)。今回の事件から暗示される のは、個別の事例には個別の背景がある としても、大枠としては、コソボがEU ではないからロマが「強制送還」されて いる。 EUはどうあるべきか。理念は明確だ が、現実では、フランス国民の大半が今 回の事態でもロマ排斥を支持している実 態がある。 これをフランスがどのように解消して いくのかは注目されるが、現状のオラン ド政権の対応を見るかぎり、実態はサル コジ政権と同様なナショナリズムに向 かっている。つまり、EUの理念の内実 が徐々に崩壊していく過程のように見え る。
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