「週刊朝日」(朝日新聞出版)の小境郁也編集 長が、10月8日付で懲戒解雇された。9日発売 の「週刊文春」(文藝春秋/10月17日号) は、小境氏が行った社会人としてあるまじき行 為について触れているが、その問題の核心的な

を発行する朝日新聞出版

「週刊朝日」

 部分は、

 の採用試験の面接に来た女性が選考から漏れた が、面接官だった小境氏が後でその女性に接触 し、自分と交際すれば採用することを持ちか け、非正規雇用で採用したというものだ。

小境氏が行ったことは、今年発覚した、共同 通信の人事部長が採用試験に来た女子大生をホ テルに連れ込んで関係を迫ったトラブルと同類 のものであり、職権乱用の破廉恥な不祥事であ る。共同通信の人事部長も同じく懲戒解雇に なっている。

大手メディアで、立て続けにこうした

件」が起こるのは偶然ではない。

筆者は朝日新聞記者として約13年間勤め、 40歳の節目に退職してフリージャーナリストに 転じて約9年になる。「古巣」の知人と今でも たまに話す機会があるが、人事関連にまつわる 暗い話が多い。

はっきり言うが、組織としては完全に病んで いる。例えば「優秀だった◯◯さんがうつ病に なった」とか「◯◯さんが出世のために、ライ バルである同期の◯◯さんの悪口を陰で吹聴し ている」とか「一部の役員にやる気と能力のな い人がいて社内を混乱させている」

いの話である。

実際に自分の知人の記者にも心の病にかかっ た人はいるし、自殺した人もいる。パワハラで かつての部下から訴えられている人もいる。 「なぜあの明るかった人が」、あるいは

あの人格者がそんな事態に陥ったのか」

ような人たちばかりである。

労働災害関連で「ハインリッヒの法則」

ばれるものがある。死亡事故のような重大な労 働災害が1件起こる背景には29の軽微な事故が あり、さらにその背景には300のヒヤリとする ような事象があるといわれている。端的に言え ば、重大事故は組織や職場が抱える課題や病巣 の「氷山の一角」なのである。

「週刊朝日」の「小境編集長懲戒解雇事件」 は、組織の病巣の一部が現れたにすぎないので はないか。この件について朝日新聞社は

朝日を立て直す重責を担う立場でありながら、 こうした事態を招いたことは誠に遺憾です」

のコメントを発表している。

昨年、「週刊朝日」では、橋下徹大阪市長の 出自などを取り上げ人権問題になった記事の責 任を取って、朝日新聞出版社長が辞任、編集長 も更迭・懲戒処分を受けた。そのあとに、社会 部出身の小境氏が再建を託されて起用されたは ずだが、その人事は組織として本当に適切だっ たのかと疑いたくなる。

●もっとひどい不祥事を隠しているとの情報提 供も 今の朝日新聞では、メディアの置かれている 環境が激変している時代に、どのような取材を してどのような記事を打ち出していくかといっ たことを自分たちの頭で突き詰めて考えていく

「ニューヨークタイムズ

 本質的な議論よりも、

 はこうやっている」「ヤフーから学ぼう」

いった浅い議論が好まれる傾向にあるという。 他社を学ぶことを否定するわけではないが、朝 日新聞グループが今抱えている人材、固定の読 者層、これから開拓すべき読者層、

こりうる情報技術の変化などさまざまな因子を 分析して、総合的に朝日新聞として今何をなす べきかの戦略に著しく欠けていると、OBとし て感じる。

戦略に欠けるだけならまだしも、新聞社とし て生き残るために何をなすべきかの気概すらも 欠けているように見える。「この会社にいても 未来はないよなー」と嘆く知人は多いし、ある 役員は、署名記事などで外に少し名前が売れて

「君、まだうちにいた

 きた記者に対して、

 の?」と言ったというから驚く。

さらに、読者の知る権利に応えるという新聞 社としての本質にこだわって活動する記者や編 集者は、正論を吐く煙たい存在として中枢から は遠ざけられ、当たり障りのない迎合型、さら に悪く言えばゴマすり型人材が重用される傾向 にある。

こういう指摘をすると、朝日新聞側は原発問 題について読者目線で丹念に取材した

テウスの罠」という連載をしたではないかと反 論するかもしれないが、その連載にしたって、 当初は「社内評価」は低いが志は高い記者たち が集まって自由にやったから成果が出たので あって、一部の幹部は連載を潰そうとしていた のに、読者の反響が大きすぎて潰すことができ なかっただけである。

朝日新聞社に限らず、大手出版社でも似たよ うなことが起こっている。知人の編集者も会う たびに「うちの会社も上にゴマをするバカばっ かりが偉くなっている」と冗談混じりに語る。 確かにこの編集者は、話題となる調査報道やベ ストセラーを手掛ける凄腕編集者だが、出世は していない。別に出世はしなくても、楽しくて 有意義な仕事ができればいいとも感じるが、若 い人を育てるためにも編集の中枢を担うリー ダー的存在(管理職)には「凄腕」

くべきだろう。

「これが表に出れ



話はそれるが、少し前、

 ば、最低でも編集担当の責任者は辞任、状況に よっては社長が辞任しなければならないような 不祥事を一部の幹部が隠している」

新聞関係者から、筆者に情報が寄せられた。す でに一部メディアにも同じような情報が出回っ ているようだ。その情報に基づき、自分でも朝 日新聞の過去記事などを検索したところ、疑わ しい部分はあったが、それだけではその情報が 真実なのかどうかは筆者には判断できなかっ た。

真偽が確認できないので、詳細はここでは書 かないし、書くべきではないが、その内容を聞 いて唖然としてしまった。朝日新聞に勤めてい た経験から想像しても、それが事実ならば社内 でも相当な処分者が出るだろう。

OBとしてその情報が組織の病巣の

一角」でないことを祈るばかりである。 (文=井上久男/ジャーナリスト)



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