6歳の男児が何者かに両 目をくり抜かれ失明-。に わかには信じがたい凄惨 (せいさん)な事件が中国 山西省汾西県で起きた。当 初は一部メディアが「角膜 密売グループの犯行か」と 報道し、中国全土の注目を集めたこの事件は、そ の後、予期せぬ展開をみせることになる。(西見 由章)

「角膜密売」情報

北京紙・新京報や地元メディアなどによると、 事件が起きたのは8月24日午後7時ごろ。6歳 の男児が自宅近くで遊んでいたところ、不審な女 に自宅から約1キロ離れた山間部に連れて行か れ、何らかの凶器により両目をくり抜かれた。夕 飯時に子供がいないことに気付いた両親は、自宅 周辺を探し回り、午後11時過ぎ、草むらの中 に、顔面血まみれで震えながら倒れていたわが子 を発見した。

男児はすぐに病院に運ばれ、緊急手術を受けて 一命は取り留めたものの、失明は避けられない事 態だった。翌25日に現場近くで男児の眼球が発 見されたという。「眼球には角膜がなかった」と して臓器密売グループによる犯行を示唆する報道 もあったが、その後、警察はこの情報を否定し た。

地元テレビ局は、病室に収容された男児がベッ ドの上で激痛のあまり足をばたつかせる様子を放 映した。また夕刊紙・羊城晩報は親族の話とし て、男児が両親に対して「どうしてまだ空が明る くならないの?なんで暗いままなの?」とたずね ているが、両親はまだ、両目を失ったことを伝え られないというエピソードを紹介。読者の涙を 誘った。

この事件は全国的に高い関心を集め、地元警察 は特別捜査本部を設置。犯人解決につながる有力 情報に10万元(約160万円)の懸賞金を支払 うことも決めた。

伯母宅に多数の血痕

男児の両親は農民で、5、6年前に実家近くの 農村の小学校が統廃合されたことから、鉄道駅近 くにある借家の四合院に引っ越してきたという。 父親は運転手の仕事を始めたが事故で負傷し、こ こ1年あまり、自宅内に設置したマージャン卓の 使用料で生計を立てていたとの報道もある。

しかし男児の両親は地元メディアの取材に対 し、マージャン卓の利用客らとの間にトラブルは なく「だれかに恨みを買うようなことはまったく 思い当たらない」と話していた。

一方、男児の自宅近くの廃品回収所に設置され た防犯ビデオには、男児とみられる子供を連れた 女が映っており、その女は「茶髪だった」との報 道も。また男児が「女は地元の言葉ではない方言 を使っていた」と証言したとか、男児は当時薬を 飲まされ意識が混濁していたなどと、さまざまな 情報が飛び交った。

そんな中、事態は急展開する。男児の伯母(4 1)が事件から6日後の30日に突然、自宅の近 くの井戸に身を投げて自殺したのだ。

警察は9月3日、この伯母を容疑者と断定し た。重要な証拠として挙げられたのが、伯母の自 宅で見つかった、多数の血痕が付いた上着だ。こ の血痕と男児のDNAが一致したという。

伯母の夫によると、伯母は27日に当日のアリ バイなどについて警察から事情聴取を受け、翌日 未明に帰宅したころには、精神的に不安定になっ ていた。その後、「だれかに連れて行かれる」な どと意味不明なことをつぶやくようになったとい う。

最大の謎は動機

報道陣からは「なぜ男児は最初から犯人を伯母 だと言わなかったのか」との質問も出た。警察に よると、男児は当初、「(犯人は)伯母に似てい る。たぶん伯母だと思う」と言った後、急に「で もそんなことをしたのは伯母ではない」と言い直 したという。真相は不明だが、男児は思わず伯母 をかばったのだろうか。

また解明されてない最大の謎が動機だ。「男児 の高齢の祖父の介護をめぐって男児の一家と伯母 の間に確執があった」との報道も一部あったが、 男児の父親は「そうしたトラブルはなかった」と 言下に否定している。

報道によると、伯母の夫も事故によるけがのた め現在職がなく、伯母は養鶏場での食肉加工作業 で月2000元(3万2千円)弱を稼ぎ、一家を 支えていたとされる。ただ苦しい生活と今回の犯 行に関連があったのかは不明だ。

また凶器についても、「男児には鋭利な刃物に よる傷跡があった」(病院関係者)とされるが、 特定はされていない。

一方、事件発生後、男児が入院する病院には寄 付や贈り物を持った市民が相次いで駆けつけ、寄 付総額はすでに約100万元(1600万円)以 上に達したという。

男児は今後、こうした支援により本格的な義眼 の移植手術を受ける。しかし、「外の美しい光景 をみることは二度とできなくなってしまった」 (羊城晩報)。



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