「シャ~ルルっ、なにやってんの?」
庭の植え込みをかきわけて、マリナがぴょこんと顔を出した。
デッキチェアに身を横たえているサングラス姿のミシェルの枕元に寄り、顔をのぞきこむ。
ミシェルはサングラスの下で目を閉じて腕を組み、何をするということもなく青い空に顔を仰向け、秋色の弱い光を浴びていた。
庭の植え込みをかきわけて、マリナがぴょこんと顔を出した。
デッキチェアに身を横たえているサングラス姿のミシェルの枕元に寄り、顔をのぞきこむ。
ミシェルはサングラスの下で目を閉じて腕を組み、何をするということもなく青い空に顔を仰向け、秋色の弱い光を浴びていた。
「そんなのしちゃって、日光浴? 珍しくヒマそうじゃない、仕事はどうしたの?」
身を屈めたマリナが脇から手を伸ばし、彼のサングラスを取ろうとする。
「こら、やめてくれ。眩しいんだ」
ミシェルは口元だけ笑って、長い指先でその手を優雅に制した。
「考え事をしてたんだ」
「考え事?」
「ああ」
ミシェルは頭を軽くマリナに向けると、もう一方の手で数センチほどサングラスを上げ、青灰の瞳をのぞかせた。
それから再び頭を戻し、天を仰いで、
「君の有能なイトコ殿が、オレの口座を空っぽにしてくれてるもんでね。おそらく今のオレは一文無しなんだ。それでこれからどうしようかと、途方にくれてた所さ」
「??? ジルのこと? どういう意味? 何でジルがあんたを無一文にするのよ」
「ま、色々あるんだ」
ミシェルは小さなため息をついて、また考えに沈んでいくように無言になった。
「・・・・・」
マリナはしばらく彼の横顔を眺めていたが、
「ね、ほんとに仕事はいいの? また忙しくなるんじゃない? ジルに怒られない?」
「いいんだ」
「本当に? 後が怖くない?」
うるさく質問し続けるマリナに諦めがついたのか、ミシェルはサングラスをはずして再び彼女を見た。
「彼女には怒られっぱなしだな。昨晩のことといい」
「昨晩? 何かしたの?」
「・・・・・覚えてないの?」
「何が? 昨日はご飯食べて・・・寝たのよね。それだけでしょ」
「・・・・・」
身を屈めたマリナが脇から手を伸ばし、彼のサングラスを取ろうとする。
「こら、やめてくれ。眩しいんだ」
ミシェルは口元だけ笑って、長い指先でその手を優雅に制した。
「考え事をしてたんだ」
「考え事?」
「ああ」
ミシェルは頭を軽くマリナに向けると、もう一方の手で数センチほどサングラスを上げ、青灰の瞳をのぞかせた。
それから再び頭を戻し、天を仰いで、
「君の有能なイトコ殿が、オレの口座を空っぽにしてくれてるもんでね。おそらく今のオレは一文無しなんだ。それでこれからどうしようかと、途方にくれてた所さ」
「??? ジルのこと? どういう意味? 何でジルがあんたを無一文にするのよ」
「ま、色々あるんだ」
ミシェルは小さなため息をついて、また考えに沈んでいくように無言になった。
「・・・・・」
マリナはしばらく彼の横顔を眺めていたが、
「ね、ほんとに仕事はいいの? また忙しくなるんじゃない? ジルに怒られない?」
「いいんだ」
「本当に? 後が怖くない?」
うるさく質問し続けるマリナに諦めがついたのか、ミシェルはサングラスをはずして再び彼女を見た。
「彼女には怒られっぱなしだな。昨晩のことといい」
「昨晩? 何かしたの?」
「・・・・・覚えてないの?」
「何が? 昨日はご飯食べて・・・寝たのよね。それだけでしょ」
「・・・・・」
ミシェルは身体を起こし、デッキチェアの横に膝をついていたマリナの頬に手を伸ばして触れ、顔をのぞきこんだ。
「マリナ、昨日のメニューは思い出せる? 何を食べたか」
「えーっと」
マリナは視線を上に向け、思い出しながら比較的正確にメニューを答えていった。
「病院では精密検査をしたんだろ? 異常はないと?」
「うん、むしろ健康になってるって。えーとあとホタテの香草グリル焼きと、カニのメレンゲ・バルサミコソース添えと・・・」
やがてデザートのおかわりまで言い終えたとき、ミシェルは胸に嫌な予感が湧いてきているのを感じた。
「マリナ、昨日のメニューは思い出せる? 何を食べたか」
「えーっと」
マリナは視線を上に向け、思い出しながら比較的正確にメニューを答えていった。
「病院では精密検査をしたんだろ? 異常はないと?」
「うん、むしろ健康になってるって。えーとあとホタテの香草グリル焼きと、カニのメレンゲ・バルサミコソース添えと・・・」
やがてデザートのおかわりまで言い終えたとき、ミシェルは胸に嫌な予感が湧いてきているのを感じた。
・・・・オレのことだけか?
彼女がオレとしたことを忘れようとどうしようと、どうでもいいことだけど。
なにか、引っかかるな。
彼女がオレとしたことを忘れようとどうしようと、どうでもいいことだけど。
なにか、引っかかるな。
「マリナ」
「ん?」
マリナが上げた視線を下ろしてミシェルを見る。
ミシェルは目を細め、優しいささやき声で彼女に言った。
「まだ・・・してないね。戻ってきてから」
「へっ?」
マリナが目を丸くする。
しかしすぐ理解して、熟した果物のように頬を赤く染めた。
「ちょ、何言ってんのよいきなり」
ミシェルはその赤さに拍車をかけるように顔を近づけ、見つめたまま更に声をひそめて言った。
「今から、しようか。オレ達にしては間があいたし」
「えっ、えっ」
マリナの顔が予想通り完熟し、恥ずかしそうにうつむいて上目づかいににらんだ。
「そんな、もう、あんたって・・・・やだ」
ミシェルは照れ隠しに彼の胸を叩こうとしたマリナの手を捕まえてそっと握り、にっこり微笑んだ。
「外に出よう、マリナ。ここじゃ昨日みたいに、麗しのイトコ殿にジャマされる」
「外に?」
顔を上げたマリナに、ミシェルが頷く。
「ん、部屋をとって、そこで」
「部屋をとってって・・・あんた、無一文なんでしょ。なんでか知らないけど」
「大丈夫、アテはあるよ。どう?」
「どうって・・・・・」
答えあぐねるマリナを、ミシェルは微笑んで待った。
「ん・・・・いい、わよ・・・・」
マリナが恥ずかしそうに小さく頷いた。
「よし」
ミシェルは満足そうに笑って、
「じゃ、行こう」
軽やかにチェアから身を下ろすと、颯爽と立ち上がった。
とたん、勢いで傷がズキンと痛んで、思わず顔をしかめる。
「痛むの?」
歩き出した彼に横から追いつきながら、気遣うようにマリナが見上げてくる。
ミシェルは彼女の髪を動く方の腕でくしゃっとかき撫でて、
「大丈夫、出かける準備をしておいで。オレは痛み止めを調達してくる。後で内線で連絡するから」
「ん、わかったわ」
「イトコ殿には、気付かれないようにね」
「もう・・・ケンカでもしたのあんた達っ」
マリナは笑って頷くと、小走りになって彼を追い越し、屋敷の中へ消えていった。
「ん?」
マリナが上げた視線を下ろしてミシェルを見る。
ミシェルは目を細め、優しいささやき声で彼女に言った。
「まだ・・・してないね。戻ってきてから」
「へっ?」
マリナが目を丸くする。
しかしすぐ理解して、熟した果物のように頬を赤く染めた。
「ちょ、何言ってんのよいきなり」
ミシェルはその赤さに拍車をかけるように顔を近づけ、見つめたまま更に声をひそめて言った。
「今から、しようか。オレ達にしては間があいたし」
「えっ、えっ」
マリナの顔が予想通り完熟し、恥ずかしそうにうつむいて上目づかいににらんだ。
「そんな、もう、あんたって・・・・やだ」
ミシェルは照れ隠しに彼の胸を叩こうとしたマリナの手を捕まえてそっと握り、にっこり微笑んだ。
「外に出よう、マリナ。ここじゃ昨日みたいに、麗しのイトコ殿にジャマされる」
「外に?」
顔を上げたマリナに、ミシェルが頷く。
「ん、部屋をとって、そこで」
「部屋をとってって・・・あんた、無一文なんでしょ。なんでか知らないけど」
「大丈夫、アテはあるよ。どう?」
「どうって・・・・・」
答えあぐねるマリナを、ミシェルは微笑んで待った。
「ん・・・・いい、わよ・・・・」
マリナが恥ずかしそうに小さく頷いた。
「よし」
ミシェルは満足そうに笑って、
「じゃ、行こう」
軽やかにチェアから身を下ろすと、颯爽と立ち上がった。
とたん、勢いで傷がズキンと痛んで、思わず顔をしかめる。
「痛むの?」
歩き出した彼に横から追いつきながら、気遣うようにマリナが見上げてくる。
ミシェルは彼女の髪を動く方の腕でくしゃっとかき撫でて、
「大丈夫、出かける準備をしておいで。オレは痛み止めを調達してくる。後で内線で連絡するから」
「ん、わかったわ」
「イトコ殿には、気付かれないようにね」
「もう・・・ケンカでもしたのあんた達っ」
マリナは笑って頷くと、小走りになって彼を追い越し、屋敷の中へ消えていった。
「ふふ・・・」
庭を渡る秋風に、ミシェルの忍び笑いが混じった。
空には薄く雲が出て、灰色に変わってきている。
再び冷えてきた風に髪をまかせ、肩から流れ落ちるままにミシェルは思った。
次の行動を決めるまで、ここにいるのも面白そうだ。
まずは昨日確かめそこねたことを、確かめてみるのも・・・・ね。
痛みの余韻が残る身体を、息をついてゆるめながら、ゆっくり彼女が消えていった方向へと歩き、屋敷へ戻っていった。
庭を渡る秋風に、ミシェルの忍び笑いが混じった。
空には薄く雲が出て、灰色に変わってきている。
再び冷えてきた風に髪をまかせ、肩から流れ落ちるままにミシェルは思った。
次の行動を決めるまで、ここにいるのも面白そうだ。
まずは昨日確かめそこねたことを、確かめてみるのも・・・・ね。
痛みの余韻が残る身体を、息をついてゆるめながら、ゆっくり彼女が消えていった方向へと歩き、屋敷へ戻っていった。
<第6話につづく>