娘が血中カルニチン2分画の検査をしていただいたのは、202あ0年11月のことでした。

その時の結果がこちらになります。


 

 

この結果をどう判断するかにつきましては、『カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018』(以下:ガイドライン)に掲載されているフローチャートによりますと、娘がカルニチン欠乏症であることはやはり間違いなさそうです。


*FC:遊離カルニチン、AC:アシルカルニチン

 

(この画像は上記ガイドラインから引用させていただきました)




となりますと、湧いてまいりますのは

「なぜに娘はカルニチンが欠乏しているのか??ぶー

という疑問です。


なぜなら、カルニチン欠乏症が起こるには、普通ならばそれなりの原因があるはずだからです。

 



ではその原因とはいったい何なのかを、前回の記事の内容を踏まえて考えてみますと――

*前回の記事はこちらになります↓

 



ざっくり言うと、次の2つのどちらかになると思われます。

①ガイドラインの表に挙げられているカルニチン欠乏をきたす疾患のどれか
②発達障害(ADHD)そのものの一症状




――というわけで、今回はまずは①の可能性について考えてみたいと思います。
 

 




①の可能性について、ガイドラインの 〈病因論によるカルニチン欠乏症の分類〉の表に沿って考えてみます。

これです。


(この画像はガイドラインから引用させていただきました)
 

 


🅰の一次性カルニチン欠乏症、これは別名 全身性カルニチン欠乏症(SCD)ともいい、 4/24の記事の最後で少し詳しく記述させていただいています。

そこから今回重要と思われます部分を抜粋いたしますと・・・

 

・遺伝子の突然変異により、OCTN2の機能がほぼ完全に欠損または低下し、高度の低カルニチン血症とそれによるさまざまな全身性の障害を発症する疾患。

常染色体劣性遺伝の形式をとる。
・診断されているすべての全身性カルニチン欠乏症患者は、両親からそれぞれ受け継いだ2つのOCTN2遺伝子の両方に変異を抱えており(*これを"ホモ"と言います)、OCTN2機能の完全な欠損が発症の原因であることが示された。

・しかし実は、片方の親からだけ変異OCTN2遺伝子を受け継いでいる(つまりもう1本のOCTN2遺伝子は正常)"ヘテロ"個体においても、 その血中カルニチンレベルは正常人に比較して明らかに低いことが分かっている。

日本国内における解析の結果、一般正常人中において変異OCTN2遺伝子を持つ人の頻度は0.8%と予想以上に多く、ここから全身性カルニチン欠乏症の発症頻度を計算すると、新生児6万人に1人という驚くべき高さであった。 

・この差は、ヘテロで変異を持つ人は、ホモの遺伝子異常を持つ患者のような早期の激しい症状が出現しないため、見逃されている例が相当数あることを示していると考えられる。 

・OCTN2の遺伝子変異の頻度は、全身性カルニチン欠乏症のリスクという点からだけでなく、ヘテロで変異を持つこと、すなわち普段から軽度の低カルニチン状態が持続していることによる健康障害リスクという点からも重要な問題である。

 

 


以上より分かるのは、

SCD(=🅰)は常染色体劣性遺伝なので、本来"ホモ(=両親からそれぞれ突然変異したOCTN2遺伝子を受け継いでいる)"でなければ発症しないはずだが、実際は"ヘテロ(=片親からだけ突然変異したOCTN2遺伝子を受け継いでいる)"であっても血中カルニチンレベルの低下が認められ、ホモの患者ほどひどくはないものの、何らかの健康被害が認められる可能性がある

 

ということです。

 

 

 

このことを知って、私、

「もしかしたら、娘がヘテロのSCDである可能性が十分あるのでは?
「軽度の低カルニチン状態が持続してると、やっぱり健康被害がある得るんだ・・・チーン

と愕然としました。

 



ここで、
「もし娘が "ヘテロのSCD(=片親からだけ変異遺伝子を受け継いでいる全身性カルニチン欠乏症)" だとしたら」
と仮定して考えてみたいと思います。
 
 
その場合、SCDの変異遺伝子を、私か夫のどちらか、あるいは両方ともが持っているはずです。

ですが私にも夫にも、低血糖などカルニチン欠乏を疑わせる明らかなエピソードはありません。
 
"ホモのSCD"の場合は"ヘテロ"と違い、成長過程で必ず何らかの症状で顕在化するはずですので、私か夫が"ホモのSCD"である可能性はほぼ皆無と思われます。
 
一方で、私か夫のどちらか、あるいは両方ともが"ヘテロのSCD"である可能性は否定できません。
症状がごく軽微で、自分たちでも気が付いていないだけかもしれないからです。


もし私か夫が"ヘテロ"だとしますと、前述の理論によると、血中カルニチンが低下しているはずです。

だったら、私と夫の血中カルニチンを検査してみたら分かるのでは!? (*遺伝子の検査は簡単にはできないかわりに)



というわけで、それぞれ行きつけの病院で事情を説明し、調べていただきました。



その結果は――

夫↓
 
私↓
 
 
 
なんと、「どちらも驚くほど正常合格」 という結果でしたガーンハッ
 
 
 
――というわけで、娘の低カルニチンの原因がSCD、つまり表の🅰である可能性はない、と考えてよさそうですクラッカー
(*私的には可能性あると思っていたので・・・少々フクザツでした・・・だって原因がはっきりした方がスッキリしますのでおーっ!
 
 


次に🅱です。


まずは 🅱1。

これはものすごーくたくさん種類がある上、遺伝形式もさまざまです。
ほとんどは早い段階で診断がつきますが、中には症状が軽く、大人になっても見過ごされている例もないことはないみたいです。

また、以前の記事で触れさせていただきましたように、新生児マススクリーニングの検査方法が2012年に変わり、検出できる先天性代謝異常症が6種類から約25種類に増えましたが、娘が受けたのは2012年より前のことです。

よって娘に🅱のどれかが潜んでいる可能性もゼロではないとは思われますが・・・そんな専門的なことがここで分かるはずもなく――断念ゲロー


ただ、強いてどれかに絞るとしましたら、↓の下線部にありますように・・・
 

(この画像はこちらから引用させていただきました)



娘の症状は絶食時間が長引いた時に起こる低血糖、すなわちエネルギー不足と思われますので、🅱1 の中で可能性があるとしたら 『脂肪酸酸化異常症(脂肪酸代謝異常症)』 くらいかな・・・という気がします。
 
 

次いで 🅱2 ですが、

娘はこれまで、特に発達障害外来で投薬を受けるようになってからは薬の副作用チェックのために何度か血液検査や尿検査を受けていますが、肝臓や腎臓を含めて異常を指摘されたことはありません。(*カルニチン値をのぞいて)

食事もちゃんと摂っているようです。
(*何なら最近は「お姉ちゃん、朝から長い時間料理ばかりしてるけど、勉強しなくていいの?」と次女が心配しているくらいですえーん

自律神経のバランスが悪く、ストレスその他で下痢や腹痛を起こしやすいですが、いつもというわけではありません。

なので 🅱2 の可能性はほとんどないのでは、と思います。


同じく 🅱3 につきましても、透析も、該当する薬の服用もありません。
なのでこの可能性も否定できると思われます。



―― 以上より言えますのは、

娘のカルニチン欠乏の原因は①(=ガイドラインで挙げられているカルニチン欠乏をきたす疾患のどれか)ではなさそう(註:ただし脂肪酸代謝異常症の可能性は否定しきれず)

ということです。


となりますと、
娘のカルニチン欠乏の原因は②(=発達障害(ADHD)そのものの一症状)!?びっくり
 
 
 
 
というわけで、次回はADHDとカルニチン欠乏の関係について調べてみたいと思います。