泣きながら走り去る少年があたしの隣を過ぎ去った。なんでか気になって、少し横に首をよじれば、よそ見するなとばかりに首を前に戻される。再び舞い戻ってきた景色は真っ赤で、美しい。どんどんと足元から、びりびりと耳元から伝わる振動と、目の前の赤以外は今のあたしにとって背景にすぎない。逃げ惑う人々も流れる血液も。あたしがそうなのだから、あたしと左手右手一本で繋がる隣の男もそうなのだろう。

「退、退」
「ん、」
「みんな、どこにいくのかなあ」
「さあ・・・どこだろうね」
「どこに向かってるの?」
「んー わかんないや」

考えるそぶりすら見せない彼がいつも通りすぎてふいに笑いがこぼれた。くす、と笑えば「なに笑ってんだよ」と彼も頬をゆるませた。その背景には、叫び声が見えた。

「こわい、」

ぼそりと彼が囁いた。ぎぎ、ゆっくり、本当にゆっくりと退があたしを見る。揺れる目が揺れるあたしを捉えた。

「怖いよ」

どこかで響いた銃声と重なって、退の声がかき消えてしまったが、彼と繋がっていたあたしにだけは届いていた。震える声で「あたしも」と答える。一瞬彼はきょとん、としてから、あたしの大好きな笑顔を見せた。

「なら、大丈夫だね」

その言葉にまたくすりと笑うと、あ、俺その顔好きだなあと彼は照れたように笑った。あたしも同じだよその笑顔も大好きなのよ、言い終えると 満足したように彼は前を向いた。最後にみる景色に彼が映ってないことは惜しかったけど、あたしも慌てて前を向く。いつしか背景は無音に変わり、真っ赤な太陽は目の前。

「なあ、」

向こう側のビルが消えた。その次の家が溶けてく。地面が太陽に削られて、真っ赤な光でいっぱいになって、ああ、神様、これが世界の終わりなのですか。だとすれば、世界はどのようにして、始まったのです、か。ああ、かみ、さ、ま




「愛してる」

ここが世界の果てですか、





:/ミスチルのアイラブユーというアルバムに入ってる曲がモデルです。
一応山崎退夢ですが・・・わかりましたかね?(笑)