もうかれこれ半年前のことになるんですが。
お隣広島県に大きなフラワーパークがあって、行きたいなぁ〜、でも日帰りとしてはなかなかの距離だよねぇ〜、なんて思いながら地図裏面にある県内観光案内図をぼんやり眺めてたところ。
位置的には広島県東部の山間部になるんですが、そこに小さく赤い文字で「上下キリスト教会」と書かれているのが目について。
観光名所として地図に載るほどの教会って、そうそうあるものではありませんよね。
しかも、「上下」ってどう読むの?
気になって早速検索。
すると。
「じょうげキリスト教会」と出てきました。
更に検索していくと、その教会周辺の町並みの様子も少し紹介されてて。
でも、教会一つ見るために高速使って往復7時間なんて、いくら物好きな私でも・・。
と、その時はそれほど執着心も持たずそのままに・・。
でも、それから半年。
やっぱり気になる〜!笑
ということで、先日、と言っても、気づけば早2週間前のことになってしまってますが(笑)、行って参りました〜!
これがですねぇ〜、
想像以上になかなかの拾い物だったんですよ!
って、「拾い物」などと言ってはそこにお住まいになられてる方々には甚だ失礼な話なんですが、重伝建フェチの私にとっては本当に「行って嬉しい」場所だったんです。
それでは。
紅葉も終盤を迎えようとする中国自動車道をひたすら東へと向かい、三次東JCTで尾道自動車道に入り甲奴で下りてしばらく行くと、静かな集落にたどり着きます。
交流館に車を置かせてもらって通りに入ると、左右に真っすぐ道が伸びてて。

通り左手の奥に見える尖塔が、お目当ての教会かな?

あ〜、やっぱり!

近くで見ると、ちょっとユニークな構造になってるような気も・・。
説明看板を読むと。

なるほど。
元々は個人のお屋敷に付属されていた蔵が改造され、それが教会として使われるようになったんですね。

教会裏手には今でも主屋と日本庭園が残されてて、見学できるようになってるとのことでしたので入ってみました。

おぉ〜、確かに日本庭園が!
少し立ち位置をずらしてみると。
主屋の後ろに尖塔を見ることができます。

面白い眺めですね。
こんなふうに富豪の建物が教会として使われるようになったというのも、明治期特有の歴史や物語を感じさせ趣深いものがあります。
教会周辺の通りにも、風情ある建物が幾つか並び立っています。











尖塔のある建物がもう一つ見えてきました。

これは?

警察署?!
田山花袋も訪れてた?!

教会もそうでしたが、こちらも擬洋風建築を思わせて、警察署だったとは思えないほどのオシャレ感♪
そんな旧警察署を過ぎて左に曲がると、橋が見えてきました。

翁橋とあります。
その翁橋を渡って。

通りをしばらく進むと。
山を背にしてこんな立派な建物が建っています。

この建物は何かと言いますと。

ふむふむ・・。
鶴田浩二も来てたんだぁ〜!
実はちょっとファンだったんです。笑
「男たちの旅路」、よかったなぁ〜。
でも、ああいうドラマって、今の時代、かなりコンプライアンス的には引っかかりそうな気も。笑
そして、この「男たちの旅路」と言えば。
鶴田浩二の部下として若い警備員役を演じてた水谷豊のヤンチャぶりも印象的だったんですが、それが後年、よもやあの杉下右京へと変貌するとは・・。
と、こんな感慨を自分が抱くようになることも、あの頃は予想だにできなかった私です。笑
それはともかく、この翁座。

内部も興味深くはありますが。
なんと、土日のみの開館となってまして💧
で、この日は火曜日だったんですよ〜💦
よって、内部を見ることは叶わず・・💦
残念!
見たかったなぁ〜💧
それにしても。
この翁座もそうですが、これまで見てきた建物群の数々には本当に驚かされると共に、やはり浮かぶ疑問は、(こう言ってはまたまた失礼ですが)なぜこんな山奥に?
しかも、地名が上下?
不思議ですよねぇ〜。
さて、その謎解きをいたしますと。
まず、「上下(じょうげ)」という地名ですが、それは、この町の近くには分水嶺があって、水の流れを意味する言葉だということから、いつからかそう呼ばれるようになったのだとか。
分水嶺、つまり古くから「水分り(みくまり)」の地であったとも言える「上下」の町。
そう言えば、吉野にも「水分り(みくまり)神社」ってありましたよね。
吉野もそうですが、古(いにしえ)の伝説っぽくて、なんだかロマンを感じますねぇ〜♪
そして、そんな分水嶺が近くにあるということは、ここ上下の町は、かなり標高の高い位置にあるということにもなります。
で、次の疑問は。
では、なぜそんな標高の高い場所に、往時はかなり繁栄したと思われるような建物群がこれほどあるのかということですよね?
それは、この標識をご覧いただければおわかりではないかと・・。
じゃ〜ん!

そう、この上下の町は、石見銀山で産出された銀を瀬戸内方面へと運ぶための「銀の道」の宿場町だったんですね。
こんな看板もあって。

「銀の旅」は、この図で言うと、左上部から中央下部へと進む感じになっています。
つまり。
石見銀山で産出された膨大な量の銀は、日本海沿岸・温泉津温泉近くの港からその多くが運ばれると共に、一部はこの図のように陸路で中国山地を越え、尾道・笠岡の港へとたどり着き、やがて瀬戸内海・淀川を経て大阪へと運ばれていたようです。
いずれにしても、長い長い「銀の旅」です。
ここ上下には代官も置かれていたようで、以前記事UPした日田の豆田町と同様に、天領、つまり幕府直轄地だったという訳ですね。
時代劇ではありませんが(笑)、お代官様のいるところには必ず豪商がいるということで・・。
なるほど、それならこの立派な建物群も納得です。
さて、この翁座前から、再び先ほどの教会がある辺りまで戻ることとしましょうか。


レトロ感満載の家並みが続きます。


翁橋手前まで来たところで、ふと、このお店が気になって。笑

戸口左手に見える人形は、ひょっとして大谷翔平選手?笑
なんだか面白そう、と軽い気持ちでお邪魔したんですが、これが大当たり!
このお店、本当にすごかったんですよ〜!
現在は、骨董品や古民具、陶器等の販売をしておられるようなんですが。

まず、現在お店として使われているこの主屋自体が、建て増しや修復を重ねてきてるとは言え、元々は江戸時代中期に建てられた歴史ある建物らしく。
そして、こんなポスターも発見!笑

そうなんだぁ〜。
ちっとも知りませんでした。
と言うか、そもそもこの番組をあまり見てなくて💦
あ、先月かな、津山市城東と福岡県柳川を特集してた回は、自分も数年前行ったばかりで興味があったこともあり、珍しく見ましたが・・。
お店のご主人曰く、「ムロツヨシさんはTVで見るよりハンサムでカッコよくて、しかもとても知的でいらしたんですよ〜」と大絶賛でした。
(ちなみに、ご主人は、オシャレな高齢女性。)
ところで、このお店は元々酒造業をしておられたらしく、その頃の外観が描かれたイラストも店内に飾られてありました。

立派な店構えですねぇ〜。
ご主人はとても気さくなお人柄で、奥にある酒蔵もご案内していただけることになりました。
主屋から酒蔵へ行く途中には中庭もあって、こんな立派な松が。

樹齢200年とも👀!
更に驚かされたのはこちら。

今や、外国人垂涎の的とされる盆栽がズラ〜っと!笑
酒蔵の手前には、かつて米蔵として使われてたとされる部屋、いわゆる「室(むろ)」もあって。

中は、ちょっとした資料館になってます。
こちらは、かつてここ広島県東部が「備後国」と呼ばれてた頃の古地図。

歴史好きの人にとってはたまりませんよね。
こちらは、このお店が酒造業をしておられた頃の敷地全体を俯瞰して描かれたもの。

相当広い敷地を所有しておられたことがこの絵からもわかり、かつての隆盛が偲ばれます。
それにしても、展示されている物の一つ一つがとても興味深い物ばかりで、よくよく見れば時代や種類も様々で、まるでパラレルワールド♪


でも、驚くのはまだこれからで・・。笑
次に案内していただいた酒蔵は、と言いますと。
古式ゆかしいお人形の数々が、これでもかと言うくらい、ところ狭しと並んでいました。

土人形の一種のようです。

「上下人形」というんですね。
雛飾りとしても用いられていたようです。

「天領とお雛様」と言えば、これも以前記事UPした通り、大分県日田市豆田町の雛飾りが有名ですが。

ここ上下も負けてはいません!

土人形の他にも、かつて使用されたと思しき農機具や調度品等が展示されていました。

実質的にはこの倍以上の展示物が見られ、先ほどの「室」に展示されていた品々も含めて、とにかくその数の多さには圧巻の一言。
何の予備知識もなく入ったお店でしたが、まさに「歴史迷宮のお館」と言った趣。
貴重な品々を見せていただき、とても感謝しています。
ちなみに、見物した方々からは必ず「なんでも鑑定団」への出演を薦められるそうですが、私も同感です!笑
さて。
そんな「面白博物館末廣邸」(と勝手にネーミング?笑)を出て、翁橋へと。
翁橋手前から、先ほどの旧警察署・火の見櫓の後ろ姿をパシャリ。

いい景色です♪
石見の銀が運ばれた道を私も通って教会へと。





教会の尖塔が見えてきました。


こうして段々近づく感じが好きなんですよねぇ〜♪

さながら銀になった気分?
(なんのこっちゃ?笑)

教会を過ぎてしばらく行くと、今度はこんな建物が。

商工会館とありますが、かつては・・。

警察署庁舎?
しかも、アール・デコ?
これは是非とも内部見学をしてみたい!
玄関から入ってすぐ右手にある大広間には、こんな雛飾り。

ここ上下でも、春には町をあげての雛飾りが行われるようですね。
玄関左手のお部屋は、こんな感じに設えてあります。

確かに、「上げ下げ窓」や、写真上部からちょっと切れてしまってますがシャンデリアなど、いかにも昭和初期のレトロモダンとも言うべき、アール・デコのニュアンスを感じさせますね♪
ちなみに、「上げ下げ窓」って、様式はオシャレですけど、別名「ギロチン窓」とも言うのだとか💦
玄関にはこんなポスターも貼られてありました。

なかなか素敵ではありませんか!
そんなレトロモダンな商工会館を出て。
気づけば、早、夕刻近く💧
そろそろ駐車場に戻ることとしましょうか。

こちらは、郵便局の側面部。

黒い収集箱が雰囲気ありますね♪
最後に、あのポスターのアングルを真似てパシャリ!笑

広島県府中市上下。
石見銀山による往時の繁栄を偲ばせる歴史的建物群の数々は思った以上に見どころが多く、その一つ一つが様々な物語を感じさせ、とても趣深い町でした。
また、お雛様の時期に来てみたいなぁ〜。
でも。
冬場から初春にかけての中国自動車道は凍結しやすいこともあって、なかなかのリスクなんですよねぇ〜💧
例の「面白博物館末廣邸」のご主人も「来る前は、お電話での確認をお勧めします」とおっしゃってて。
そうかぁ〜💧
あ、そもそも冬用タイヤを持ってないし💦
やっぱり安心して行けるのは4月に入ってからかな?
お雛様〜、それまで待っててねぇ〜。
って、それは無理?笑