ブレネーブラウンの「ネガティブな感情(こころ)の魔法」という本の中の『チャンスをつかむ「直感」を鍛える』という章では、「直感を磨く」「信念を持つ」とはどういうことか、ブレネーの考えが書かれています。
この章を読みながら、たくさんの出会いの中で「この人だったら信用できる!」と閃いた瞬間について、考えていました。
そのうちのひとつのエピソードについて書いてみようと思います。
去年の話ですが、他部署の同僚Dくんを私の部署に加えることが可能か打診されました。
このDくんはそれまでO氏の部下として2年勤めていました。
O氏は職人気質で、勤続年数も長く、仕事は確実なのですが、自分よりできる部下は気に入らずイジメてしまうため、一緒に働く人がなかなか続かないという、訳ありすぎるおっちゃんなのです。
DくんはO氏の息子ぐらいの歳なので、さすがにいじわるはしないだろうと思っていたのですが、だんだんとDくんが仕事に慣れてくると、若いですから覚えも早いし、頭もいい、さらに感じもいいので、他の社員やお客さんたちも仕事を頼みやすいDくんを頼るようになりました。
すると、それが気に入らないO氏からDくんへの嫌がらせが始まり、冬の寒さの中でも温かい部屋は使わせず、寒いところで何時間も仕事をさせたり、はたまた、仕事を全く与えなかったり、ことあるごとに嫌みを言ったりしていたそうです。
ある日、「怪我をした親友を看病するため早退したい」と願い出たDくんに、忙しかったのもあると思うのですが、O氏は許可を与えず、それどころか、「帰るんだったら今すぐ代わりの人を雇う」と言い放ち、それをクビ宣告と受け取ったDくんは悩んだ末に、辞表を提出したのでした。
人不足の折に、仕事のできる人材に辞められるのは辛いので、どうにか思いとどまるよう説得しようとしましたが、その時のDくんの答えは「この会社よりもっと給料がいい会社で仕事が見つけられるから、ここにいる必要がない」といったようなそっけない言いようだったので、そう言われたら「あ、そうなの、あなたにとっていいことならそれはそれでよかったね。今まで一緒に働けでよかった。ありがとう」と返すのがやっとだったのでした。
ところが数日後、「実はDくん、O氏の性格に耐えられず辞めようと思ったけど、会社は好きで、本当は辞めたいわけじゃなかったんだって。なんとかあなたの部署でポジションを見つけられないかしら」とDくんが親しくしている同僚から相談を持ち掛けられたという訳です。
O氏からイジメを受けていたという話は、もちろんショッキングで、私にできることなら何とかしてあげたいと思いましたが、私の部署に入れてほしいといわれても、特に空きがあるわけではないし、それに「この会社よりもっと給料がいい会社で仕事が見つけられるから、ここにいる必要がない」と言い放った若者の本心がどこにあるか見えない、それに、部署が変わったとしても、たいして大きくない会社内でO氏との接触は避けられません。アットホームなのが売りな会社なのに、亀裂を抱えているのも問題ありだし、どうしたものか悩みました。
同僚に話すも、「いや、この部署に人入れるなら、経験ある人しか要らないでしょ」といったごもっともな意見が多数でした。管理職陣も、事なかれ主義丸出しで、職歴の長いO氏サイド付く人のほうが多く、経験少ない若者を受け入れる責任を取るのは、難しい感じがしました。
そんな折、社員みんなで「宝くじを買おう!」という話が持ち上がりました。当たれば$60ミリオンドルだったかで、「1等が当たったら大きな家買ってリタイヤメントホーム作ろう」だとか、「世界一周クルーズしよう」だとかで盛り上がっていたのですが、「もし当たったらどうしたいの?」と聞かれたDくん、
「自分の故郷の村に寄付したい」と答えたのです。
私の半分くらいの歳の青年が自分のことではなく、人のためにお金使いたいと言うのを聞いて、私は自分の自己中さが本当に恥ずかしくなりました。
そして、その時、私はそれまでよく知らなかったDくんを、100パーセント信用することに決めたのでした。
「誰だって初めは経験がないんだから、教えて、育ててあげるのもいいんじゃないか」と上司、チームメンバーを説得して、晴れてDくんがO氏から離れて、私たちのチームに加わることになりました。
それが去年の10月の話で、1年以上経った今、Dくんは私の部署だけでなく、会社全体に欠かせない人材として活躍してくれています。初めのうちは社内中駆け巡ってDくんの仕事を探すのが私の仕事みたいなところもありましたが、今では自分で率先して仕事を見つけ、的確に処理してくれるようになっていて頼もしい限りです。
本人が仕事にやりがいを見つけて楽しんでいる様子を見るにつけ、私もとても嬉しいし、これからもずっと長く一緒に働いてほしいなぁと親目線で願う今日この頃なのです。
宝くじの使い道の答えで、私がDくんにフルベットしようと決めたことは、本人に話していません。いつか話そうかな?
それにしても、60ミリオン当たったら、、、、やっぱり豪邸買うよね。。。(私まだ小さいなぁ。。。)