わたくしはっきり言って旦那とは結構仲がいい方ではあります。
そうのろけるレベルではありませんが、
一人でいるより一緒にいるほうが楽しいな、という気持ちは変わっていません。
食べることと旅行することが好きで、
でも最近は私のしつこいめまい病と、いつまでたっても治らない謎の風邪で寝たきりの日が多く、そんな私の代わりに家事をやり、洗濯物を干し、ご飯を作ってくれます。
そんなよくできた夫と大ゲンカなんて。
わたしが悪いに決まってますよね。
でもね。理解しがたい個性をもってやがるのです、奴は。
それは、「耳が遠い」こと、というより「こちらの言ったことが脳みそまで届かないらしい」ということ。
だから聴力は悪くないんです、人間ドックでも。
でも信じられないレベルで人の話を聞かない、あるいは無視する。返事をしない。
「聞いてたの?」ときくと、「聞いてた」なんだそりゃ。
「じゃあ返事してよ」「何言われたか忘れた」今の今だろうが!
で、結婚記念日の前日。わたしは夕飯の支度をしておりました。
うちには30年前家を改装したとき作った猫の出入り口があります。
ばたんと音がして「ミー」と言いながら灰色猫のミーシャが帰ってきました。
「おかえ……」
そいつの口からは明らかなネズミのしっぽがぶら下がっていました。
またやりやがったな。こいつは狩が趣味なんです。しかも生きてるのを連れてきて私の目の前でじゃらす。こちとら料理中だ。
そのとき夫は二階にいました。
わたしはわりかしねずみちゃんは好きなので素手でつかめます。
まず灰色猫に「口からはなせ!はなしなさい!」ととっ捕まえてネズミを放出させました。
ダイニングのドアからネコが出ていった好きにドアを閉め、ティッシュを一枚手に取ると、素早く逃げ回るねずみたんを「ごめんね」と素手でつかみ上げ、
これでは料理ができないので、階段の下に立ち、
「おとうさんおとうさん、降りてきて!今すぐ降りてきて!」
と、薄い壁を平手でバンバン叩き、声を限りに叫びました。
左手の中ではねずみたんがチューチュー。ごめんね、もうしばらく辛抱して。
「よちよち、お前を助けるためにやってるんだよ」と小さい頭をなでなでしました。
しかし二階からは音沙汰なし。
これは二階にいないのではないかと居間に取って返したら、(ドアあいてました)ボケーとソファに座ってるではないですか。ダイニングと居間は廊下を挟んで向かい合ってます。
「なななにやってんの?今の私の叫び声が聞こえなかったの?」
「聞こえなかった」
「んなわけあるか!これ以上ないぐらいの大声で叫んだんだよ!」
「だって聞こえなかったんだよ」
「じゃあ再生するね」
私は階段下に立ち、壁をバンバン叩き、その時と同じ大声で叫びました。おとーさーん!おとおおさああああん!!
すると
「やめてくれやめてくれ近所に通報される、そんな声出すな」
「聞こえてんじゃん」
「さっきは聞こえなかったんだよ」
「じゃあきっと聞こえても脳には届かなかったんだね。脳の入り口に鉄製のドアでもあるの」
こういう理解不能な反応はもう何回あったことか。どうも、大阿闍梨のように身をこの世においたままときどき無になるらしい。
「いいものあげよう。両手を丸めてそっと出して。プレゼント」
「は?」
「決して逃さず、公園に放つように」
するりとチューチューを夫の手に移すと、
「ねっ、ねずみかあああ!!」「おう、ねずみ様だとも。井の頭公園までGO!」
その後夫は大慌てで出てゆき、公園でちゃんと離したというので、もうどうでもいいやと喧嘩は終わりにしました。
結婚記念日は横浜のインターコンチネンタルで夜景を堪能しビュッフェをいただき、観覧車にまで乗りましたとさ。
お部屋はは22階なんだけど、いつものように海側でなく、シティビューを選びました。こちら側でも十分綺麗。
このホテルの内装は、派手派手さはないものの何だか美術館みたいで、趣味がよいのです。
ああでも、もっと遠くまで旅行に行きたいな。
今まで行った中で、欧州で一番きれいだと思ったのは、ドイツのミッテンヴァルトという村です。なんというかかんというか、まるっきりハイジの世界です。家という家には天使の絵が描かれ、カウベルをつけた牛が教会を背に牧草を食んでいるの。
死ぬまでにもう一度行きたいなあ。
と、いうわけでその地を舞台にした小説書きました。
他愛ないラブストーリーなのですが、わたしのミッテンヴァルトへのラブレターです。
よければ読んでね。村の様子を事細かく思い出して書きました。
一番下の、1秘密の花園 をポチしてね。三話で終わるんだけど、今日の夜までに三話分上げます。



